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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
ヘンタイと旅立つ人たち

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328話

「話し合いは終わったのかしら?」

「ああ、終わったぞ」

「ふふふ、その顔は何かいいことがあった顔ね?」

「まあな、神様の思い通りになってないってことがわかったってだけどな」

「そうなのね」


合流したと同時にそう聞いてきたバーバルは俺の話しを聞いて、少し納得してくれた。

ただ、核心についてはまだ何もわかっていないということも理解はしてくれていた。

といっても、わかったことがあるのは事実だった。

それを整理するためにも、俺たちは一度ヤミたちのいる宿に戻るべきだということをすぐに提案する。

口はきいてくれないが、素直にゲートは繋いでくれる。

宿屋に戻ってきたところで、アイラたち三人はようやくというべきか落ち着いてきているように見えた。

俺は早速話しをする。


「時間をとってもらって悪いな」

「いえ、ただしさんから話しがしたいと言われたら、さすがに断ることはしませんよ」

「でも、いいのか時間とか?」

「大丈夫です。俺たちもこれからのことについて完璧にこれをしないといけないということはありませんから…」


一緒についてきた雷の勇者はそう答える。

雷の勇者と一緒についてきた二人と、俺たちの五人はヤミたちがいる宿へと戻ってきていた。

さすがにヤミが休んでいる部屋にこの人数で押しかけるということはしない。

人数も多いし、どう考えても部屋に入ると狭いということがわかっているからだ。

エメに声をかけて、エルとエメでヤミをゆっくりと連れてきてもらっている間に、俺は簡単にここにいる人たちに説明をした。

俺が感じた神様の計画について…

それを聞いて一番に怒ったのは、アイラだった。


「何よ、そんなのってただの遊びってこと?」

「アイラ様、言いたいことはわかりますが…」

「だってシバル、さすがにありえないことでしょ、神様が本当にそれをしたかったのだとしたら、やっていることはこの世界を滅茶苦茶にしたいとしか思わないじゃない」

「それはそうですが…」

「人同士が争うって…そんなこと…」


おかしい。

そう言葉にしようとするが、バーバルはその言葉に被せるようにして笑う。


「ふふふ、おかしい。アイラはそう思うのかしら?」

「何?バーバルはそう思わないの?」

「そうねえ。確かいおかしいわよ。でも、争いが起こるのは当たり前のことだとわたくしは思ってるわよ。ただしも思ってるんじゃないの?」

「まあな、思ってる。それは勇者も同じだろ?」

「はい。ただしさんや俺たちがいた世界では、人同士が争うなんてことは当たり前のことでしたから…」

「どうしてなのよ?」


アイラはあり得ないとばかりに聞いてくるが、俺はその答えがわかっている。


「決まってるだろ、共通の敵がいないからだ」

「どういうこと?」

「この世界でも、人は別々に国を作っているだろ?」

「それはだって、できることが違うから…」

「確かにそうだな」


そう、この世界では魔法によってできることが違うことが多い。

気づけばできることによって国がわかれている感じはする。

混合して混ざっているのは、オンスフルとリベルタスがあるが、リベルタスは自由が多くあるのに対してオンスフルは実質お金を持った人たちが国を掌握していることを考えると違う国と思うのがいい。

そんな五つの国があるというのに、争いが起こらない。

それには、魔王という架空の脅威と、モンスターという実際の脅威がある。

魔王というのは、いつか現れるはずの強い人類共通の敵だ。

モンスターというのは、今も実際に倒さないことには人に危害を加える存在で、倒さないといけないという共通の敵だった。

まあ、何が言いたいのかというと、そうやって戦う相手がいるからこそ、争いは起こらないということになる。

そのことをわかっていた俺は言う。


「結局、敵がいるからいいんだよ」

「じゃあ、ただしは敵がいなかったら、争いが起こると思うの?」

「ああ…」

「そんなこと、するはずないって私が言っても?」

「するだろうな。ただ、それは今すぐってわけじゃないだろうけどな」

「どういうこと?」

「いや、なんとなく…仮説で思ったことがあるだけだ。これは、ちょうどヤミも来たことだし、全員が座ってから話すか…」


その言葉で、ヒートアップしていたアイラも椅子に座る。

ただならぬ雰囲気に、合流したヤミたちも驚いている。


「何を話しておったのじゃ?」


それでも、さすがは年長者ということで、そう聞いてくれたおかげで俺は三人に先ほどの話しをした。

そして、次に話す争いができないであろう理由の説明をする前に、ヤミが何かに気づく。


「おぬしが言いたいことが、わらわにはなんとなくわかるのじゃ」

「そうなのか?」

「そうなのじゃ。わらわも今思うとおかしいと思ったことじゃったことじゃ」

「それはなんだ?」

「言葉じゃ」

「正解だ」

「言葉?」


答えを言い当てたヤミと違って、アイラはいまいちわかっていない。

ただ、雷の勇者は俺と同じく元の世界出身なので、理解する。


「そういうことですか、言葉が同じだから、争いが起こるとしても行き違いが少ないということですね」

「まあ、それもあるな。でも、一番の違いは会話ができるってことだ」

「どういうことですか?」

「戦いながら、話しができるってことはお互いを知れるってことだ。ということは、争わなくてもいい理由をお互いに見つけることもできる可能性があるってことだ」

「そういうことですか、確かに…俺たちの世界の戦争では、完璧に言葉が通じるのは同じ国のもの同士のみですからね」

「ああ…」


そう、俺たちの世界では言葉が通じないというのが当たり前ことだった。

だから、戦う相手のことではなく、仲間と信じる同じ言葉が通じる人たちのことを信じて戦うしかなかった。

それが例え間違ったことだとしてもだ。

それに対して、この世界はどうだ。

モンスターという脅威を敵と認識していることから、脅威と戦うためにみんなが協力しやすくするために言語というものが世界として共通だった。

国が分かれているのに、そこだけは変わらない。

そこが、この世界と俺たちの世界とが違うところだ。

戦う相手と会話ができるということは、争いをそこで一度終わらせることが可能だということだ。

だから無理やりな理由では争わせることはできない。

それがわかっているから、急に争いが起こるということはない。

まあ、言葉が通じるからこそ、陰謀めいたことをしてもうまくいきにくいのだ。

よくある言葉の壁というものがないから…

そこまで考えて、俺はその内容を簡単に話す。

すぐにみんなは理解してくれた。


「なるほどね、それは私も疑問に思わなかった」

「はい」

「そうなると、ヤミちゃんはどうして疑問に思えたのかしら?」


バーバルにそう聞かれる。

これは、俺も思っていたことだった。

一緒の世界からきた雷の勇者であればわかることだったとは思ったが、途中からきたヤミが簡単に答えてしまうとは思わなかった。

そんなヤミは、みんなから注目されたからだろう、自信満々にない胸を張って言う。


「それは、決まっておるのじゃ。わらわは魔王じゃ。普通なら、言葉が通じておるのがおかしいじゃろ?」

「確かにな…」


あははと笑いそうになってから、俺は気づく。

おかしいことに…

ただ、その疑問の答えは予想外な形でわかることになるのをまだ知らなかった。



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