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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
パーティーにヘンタイが増えた

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33話

「すみません、遅くなってしまって」


そんな言葉とともに、入ってきたのは四十くらいだろうか?

少しダンディーな男はお辞儀をして、遅れたことを謝罪した。

俺たちも、座っていたが立ち上がり、アイラが代表して、「待っていませんよ」と声をかける。

それによくしたのか、男は椅子に手をやる。


「どうぞ座ってください」


その言葉で俺たちは置かれていた高そうなソファに座りなおした。

ただ、男が座るときにどことなく嫌な視線をこちらに向けた気がしたが、さすがに気のせいだろうと考える。

男は何事もなかったかのように、満面の笑みを浮かべると、話を始める。


「この度は、ご足労いただきありがとうございます。わたしの名前はマルクと申します」

「マルクさんですね。こちらこそ、ギルドに何か必要なものがあればと言葉をもらっていたので…」

「そうですか…あのときはモンスターに襲われるかもしれないという不安から、あの場で何か謝礼となるものを、お渡しできなかったものですから、気になっていまして…」

「そうなんですか?」

「はい。ですから、お困りごとがあれば、わが商会で何か恩返しができたらと思っていましたが、それが叶いそうですね。何が必要でしょうか?」

「えっとですね。依頼が少し遠い場所で行うものになるので、できれば野宿として使えるものがあればと思って」

「の、野宿ですか?」

「は、はい。何かいけませんでしたか?」


野宿という言葉で、マルクと名乗った男は取り乱した。

俺たちはみな、どうしたのだろうかと思っていると、男は言う。


「そんなことは我ら商会が助けをだすのですから、させるわけがありません」

「はあ…」

「テントや簡易部屋を作れるものなどを用意します」


有無を言わせないような言葉だったが、その言葉に微妙な顔をしたのはアイラだ。

あれだけ野宿をしてみたいと言っていたのだから、仕方ないだろうけれど…

鼻息荒く、用意するもののリストを勝手に頭の中で考えているマルクに、アイラは再度言う。


「すみません、一日野宿するだけなので、そんな用意をしてもらうのも違うと思いますし」

「で、ですが、そこにいる男に襲われることだってあるんですよ」


そう言って、マルクが指さしたのは、俺のことだ。

なんだろう。

先ほどまでの感じでなんとなくはわかってはいたが、どうやらマルクは俺に対していい印象がないようだ。

その言いぐさに、さすがに俺も何かを言おうとしたが、それよりも早くに、アイラに怒り口調で口を開く。


「そんなことはありません!」

「それは、わかりませんよ。今や、この町であなた方二人はかなりの人気を誇っているのですから、その横にいる男についても、わたしが支援を行うのですから、それなりの男でなければいけません。」

「へえ…それじゃあ、それをあなたが決めるの?」

「そんなおこがましいことを言うわけじゃありませんが、それでも少しはまともな方を紹介できると言いたいだけです」

「ふーん…」


アイラはそう口にすると、ソファから立ち上がる。

それにマルクはびっくりした表情を向ける。


「じゃあ、私たちには支援なんてものはいらないわね」

「な!そんなことは」

「だって、私たちのことを勝手に決める人がいるのでしょ?そんな人たちがいる商会で施しなんて受けたくないもの」

「施しなどとは、わたしはただ恩返しがしたいと言っているだけ…」

「だから、それが余計なことだということをなんで理解できないの?」

「ですが、こんな冴えない男など!」

「確かに見た目は冴えなく見えるかもしれないけれど、ただしはできるわよ。最低でもあなたよりね。」

「そんなこと…」

「もういいでしょ…せっかく何かもらえるのかもって期待をしてきたけど、意味なかったわね」

「くっ…」


格好よく、アイラはそう言って部屋を出ようとするが、マルクは部屋から出るときに俺に対して、すごい視線を向けてきた。

あー…

これはよくある、変に嫉妬させてしまったパターンだろう。

後で仕返しが怖いが、こういうとは関わりたくなくても、相手からくるパターンだろう。

だからこそ、俺はくぎを刺す意味でも、声をかける。


「あなたの理想のために、相手に理想を押し付けるのはよくないですよ」


その言葉で、驚いたようにこちらを見たが、すぐに睨んでくる。

まあ、何も知らないくせに何を言っているんだと思われただろう。

でもこう見えて、社畜で頑張っていたときに、自分が考えた、理想の仕事像…

なんてことを行って失敗したことだってあるのだ。

だからこそ、百パーセントわからないということはないのだ。

ただ、今の見た目では完全に定職もついたこともない、冒険者であり、さらには若いということもあるので、気持ちがわかるなんてことは口先だけのことと思われても仕方ない。

そんなことを思いながらも、俺たちは受付の人にあいさつをして、商会から出た。


「結局買えなかったね」

「それでも、あれは仕方ないですよ、アイラ様」

「そうよね。私たちだって、確かにただしと出会ってからまだ数日しかたってないけど…他人からとやかく言われてパーティーを変更しますなんてことをしたくないものね」

「そうです。自分たちが決めたのだから、それでいいと思います」

「さすがはシバルね。よくわかっているじゃない。」


商会から出ると、そうして二人で盛り上がり始めたのだけれど。

ここに、その褒めている本人がいることを考えてほしい。

さすがに恥ずかしくなってくる。

だからこそ、話題を変えるためにも咳払いをしてから口を開く。


「それで、結局依頼はどうするんだ?」

「それはもちろんやるわよ」

「でも、夜泊まることに変わりはないんだろ?」

「それは、距離があるものね。一応馬車で行けば往復で一日で行けるけど…」

「じゃあ、その手でいいんじゃないのか?」

「それが難しいのよ。だって、馬車から降りてすぐにモンスターを見つけて、討伐をして帰ってくる。それを決まった時間以内に行わないと暗くなる前に帰ることができないのよね」

「ちなみに、暗い中馬車を走らすのは…」

「それは難しいんだ。馬は夜目がきくものがいないから、明るくない場所を走らすことはできないんだ」

「なるほど、確かに…」


俺は馬車が使えないということに納得した。

ということは必然的に野宿をしないといけないということになってしまうのだろうか?

そもそもテントがないということだけでもキツイというのに…

本当にできるのだろうか?

いや、考えても仕方ないことだろう。

アイラは絶対にやりたがるのだから…

となるとまず大事なことを確認しておくかな。


「そうなると、野宿のときに食べる飯が重要になりそうだな」

「ご飯!わ、私が作るのかしら…」

「ボクは自慢じゃないが、作れないぞ」

「な、何よ!」

「いや…」


潔いシバルの作れない宣言と、アイラの反応…

二人ともあれだな。

ご飯作れないタイプだな。

いや、そこは考えても仕方ない。

とりあえずは、違う商会か市場のようなところに向かうことにしよう。

そのことを聞こうと思ったときだった。


「あら…どこかで見た顔だと思ったら…」


そんな言葉とともに一人の女性が足を止めたのだった。

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