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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
ヘンタイと旅立つ人たち

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327話

案の定というべきか、あれから俺はほとんど眠ることはできなかった。

起きたところで、バーバルに魔力の動きを見てもらったところ、雷の勇者たちは、俺たちと同じように宿で一晩過ごしたようで、まだ部屋から出ていないようだった。

こんな宿に、それもこんな人数で泊まっているということを知られたくないというアイラたちの意見から、雷の勇者たちよりも先に宿から出ておいた俺たちは、近くのベンチに座っていた。

まだそれなりに朝早い時間とあってか、人はまばらだった。

まあ、そういうホテルの近くだからというのもあるだろう。

俺は、バーバルと話しをする。


「なあ、昨日は何かあったのか?」

「ふふふ、気になるのかしら?」

「いや、朝があんなのだと誰でも気にならないか?」


そう、今もだが、起きてからバーバル以外の三人は、どこか気まずそうだった。

どうして俺の周りで寝ていたのかもわからないままだったので聞こうとしたのだが、話しはそらされるだけで、何も聞けなかった。

だからこそ宿から出て、落ち着いた今、唯一普通にしているバーバルに聞いたのだけど、バーバルは、その言葉を聞いても、少し考えてから俺に言う。


「それはそうね。でも、教えてあげられないのよね」

「そうなのか?」

「ええ、女の子同士の秘密かしらね」


バーバルは口に指を当ててそう言ってくる。

女の子同士の秘密。

そう言われてしまえば、何も言えなくなってしまう。

仕方ないのだ、俺が全くわからない世界なのだから…

ただ、変なことを言われないということは、俺は寝ている間に何かおかしなことはしていないということだ。

嫌われなかったということを考えればいいことなのかもしれない。

安堵した表情をしていた俺を見て、バーバルは楽しそうに笑う。


「ふふふ、大丈夫よ。ただしが悪くて気まずくなっているわけじゃないのだもの」

「確かに、俺が悪かったら殴られたりくらいはするよな」

「そうね。でも、アイラたちがああやって遠慮している間にわたくしがただしと仲を深められるって考えるといい気がするわよね」

「そういうものなのか?」

「そういうものなのよ」


楽しそうから妖艶に笑うようになったバーバルを見て、ドキッとしていたときだった。

ようやくというべきか、ターゲットである雷の勇者が宿から出てくるのが見えた。

前見たときのような女性の腰に手を回して調子に乗った勇者というわけではない。

両隣にいる女性と三人で楽しそうに話しながら歩いているのを見ると、これまでとは違うというのが行動としてわかる。

勇者だから偉いという行動がなくなり、一緒にこの世界で生活しているということがそれだけでわかる。

今の雷の勇者であれば、話しをすれば何か変わるのではないのかと思う。

雷の勇者は歩いて行く。

俺はその視界に少し入る位置に移動した。

雷の勇者はすぐに俺に気づいたようで、頭を下げる。

そして、小走りに近寄ってくる。


「ただしさんじゃないですか、どうかしたんですか?」


あの戦いが終わってそんなに時間が立っていないタイミングで俺たちが来たということで何かあったのかと思ったのだろう。

俺は雷の勇者に近づくと、椅子を指さす。


「あっちで少し話しいいか?」

「はい。俺でいいのであれば!」

「すまん、少し話しをしてくる」

「ふふふ、行ってらっしゃい」


バーバルにそう言って、勇者と一緒にいた女性二人を任せて俺は雷の勇者と話しをすることになった。


「何か気になることでもあったんですか?」


座ると同時にそう聞かれて、俺は少し困惑する。

あのときに雷の勇者を乗っ取った神様ごと殴り飛ばしてから、懐かれているのはわかっていたが、ここまでグイグイと男に来られるというのもさすがに反応に少し困る。

まあ、ぶっきらぼうにされて何も答えてくれないというのが一番面倒くさいので、いいことなのかもしれない。

そう思ったからこそ、聞きたかったことを俺は聞くことにする。


「気になることっていうのは、お前のことだ」

「俺のことですか?」

「ああ、前に少しは聞いたけどな、それだけだと何か足りない気がしてな」

「そういうことですか…」

「ああ、何かあるか?」

「いえ、この世界に来たいきさつは前に話した通りです。勇者として召喚してこの世界に来られることになっただけですね」

「なんとなくそれは、わかるんだが、そのときに神様とやらに何か言われなかったか?」

「神様にですか?」

「ああ」

「少し待ってくださいね」


雷の勇者はそう言って考える仕草をする。

何かを言われた言葉を思い出しているのだろう。

数秒考えたところで、口を開く。


「神様に言われたことは、魔王を倒すこと、勇者とは違ってこの世界に召喚された人を倒すことのどちらかをすれば、願いを叶えてやると言われたくらいですね」

「なるほどな。まあ神様が言うとしたら、それくらいだよな」

「はい」



言われた言葉は普通。

そう考えると、話しを聞いても一緒だったか?

俺は頭の中を整理しようとしたときだった、雷の勇者は何かを思い出したのか、首をかしげながらあることを口にする。


「そういえばですが、言われたような気がする言葉がありました」

「言われたような言葉?」

「はい、曖昧にしか覚えていない言葉です…」

「それはなんだ?」

「えっと確か、欲望に満足するな…だったような」

「欲望に満足するな?」

「はい、そう聞こえた気がするんですよね。だから、勇者としてこの世界に来た時に勝手にしていいと思って、実際にしていましたからね」

「確かに、そうだな…」


そこで雷の勇者がしてきたことが頭に浮かぶが、それも一瞬のことで、すぐに先ほどの言葉を考えていた。

欲望に満足するな。

その言葉はまるで勇者にとっては麻薬だと思ってしまう。

この世界に召喚された勇者は当たり前のことではあるが、元の世界で何かがあったやつばかりだ。

そうじゃないことには願いを叶えると言われたところで、叶えたい願いが特になければ魔王か俺をわざわざ倒しに行きたいと思うことがないからだ。

そして、その魔王か俺を倒しに行くために勇者たちをマンネリ化させない言葉というのが、欲望に満足するな、なのだろう。

だって、満足してしまえば、魔王か俺を倒そうと思わなくてよくなってしまうからだ。

結局、それをさせるための言葉だ。

ただ、俺に殴り飛ばされたことで、雷の勇者は落ち着いている。

今の状況を見ると、神様の思い通りじゃないと考えるのが妥当だった。

だから俺は雷の勇者に言う。


「欲望は満たされたのか?」

「はい。欲望というべきか、進みたい道ですね」

「そうか」

「はい。話しというのは、これだけでしょうか?」

「簡単にはな。後は少しみんなを交えてだな」

「わかりました」


そして、俺たちは椅子から立ち上がると、みんなと合流するのだった。



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