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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
ヘンタイと旅立つ人たち

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324話

「それで、どの勇者から会いに行くのじゃ?」


部屋に入って早々に体を起こして喋っていたヤミにそう聞かれる。


「いや、それがあんまり考えてなくてな…」

「そうなのじゃな」

「まあ、みんなの意見を聞いてから決めた方がいいかと思ってな」


そう、これは会いに行くと決めたときから考えていたことだった。

さすがに俺の一存で誰かに会いにいくということもできるかもしれないが、下手なことをすればどうなるのかわからない。

それをわかっているからこそ、意見をもらうのが正解なのだ。

ただ、こうなったときに、次に視線がいくのはアイラだった。

アイラが何を言うかによって、次の目的地が決まるのという感じだった。

だからこそ注目を受けていたのはアイラだったが、口を開いたのは違う人物だった。


「あー、もう面倒くせえな…」

「エル?一応重要なことを話してるだぞ?」

「だって、そんなもの話し合ったところで、あたいが言った勇者がいるところにゲートを開かないと意味ないだろ?」

「確かに…」


エルに言われてみて、思わず納得する。

確かにそうだった。

前までやってきていたドラゴンの翼をはやしたヤミに馬車を引っ張ってもらったりすることも今はできないし、俺が引っ張るというのもまあやりたくはない。

ということを考えても、今から勇者に会いに行くとなれば、エルがゲートを使って行くのが当たり前だ。

俺たちがどれだけここに行きたいと言ったところで、エルが違う場所にゲートを開いてしまえば意味のないことになる。

そんな俺の考えを知ってか知らずか、エルは俺の顔を見て笑う。


「ほらほら?どうするんだ?」

「く、仲間になったんじゃなかったのか?」

「仲間にはなったよ。でも、連れていくのに条件がなしっていうのはダメだろ?」

「確かに、言うことはわかる」


エルが言いたいことはわかる。

対価がほしいということだろう。

まあ、そりゃ対価も何もなしにどこかにゲートで送ってもらうということになれば、完全に運送係のような存在になってしまうだろう。

それは、俺たちとしてもなるのは嫌だと思ってしまう。

でも、そうなると何を対価としてほしくなるのか…

俺はエルのことを緊張した面持ちで見る。

ただ、緊張して顔をこわばらせている俺とは違ってエルは珍しく顔を赤くしてから言う。


「ゲートに入るときに、そ、そのあ、あたいと一緒に入ってくれ…」

「ああ…そんなことか…」


顔を赤くしてエルはそんなことを言ったが、俺は特に何かを思うことはない。

むしろ変な提案をされると思っていたからか、安心をした。

だからこそ、他のみんなの顔を見たのだが、呆れているものや怒っているもの、笑っているものたちがいる。

さすがにその表情には俺もどう反応していいのかわからない。


「な、何か間違っていたのか?」

「別に間違ってないわよ。ただ、ただしが悪いのがよくわかっただけ…」

「アイラ様の言う通りですが、ただしですので、仕方ありませんね」

「ふふふ、こうやっていろんな女の子と仲良くなるのね」

「なんじゃろう、イラっとするのじゃ、イラっと」

「頑張ったエルを悲しませたら、ただしさんでも許しませんよ?」


すでに帰って行ったミライ以外にそんなことを言われる。

さっきの回答が正解だったのかすらもわからなかった俺は、ただただ、茫然とするのだった。


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