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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
ヘンタイと旅立つ人たち

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323話

「おい、お前ら帰ってくるのがおせえんだよ」

「仕方ないだろ、話すことがあったんだからな」

「だからってな、あたいが作ったゲートをずっと放置するのはさすがにやっていいことじゃないだろがよ」

「だから、すまないって…」


ヤミを正気に戻した俺たちは、エルのゲートによってあのときにいた宿屋にいた。

すぐにヤミを宿屋に寝かした後に俺はというとエルに怒られていた。

どうして怒られているのかと言われたら、エルが出してくれたゲートを完全に無視して話をしていたからだった。

戦いが終わった後に、俺たちは話をしていた。

それについては、普通のことだとは思うが、それが長すぎたことが問題だった。

ラグナロクのメンバーは、気づいたときには戻っていたようで、俺たちはかなり戻るのが遅くなってしまっていた。

その間もずっとエルはゲートを出し続けてくれたのだ。

だから、帰ってきたときにはエルに怒られたという感じになったのだ。

怒られるのは仕方ないとしても、もう少し言い方というものがあるのではと思ってしまう。

こう見えても、ほんの少し前までは死にかけていたのだから余計にな。

ただ、アイラみたいに手が出てこないことを考えると、優しいと考えるのが正解なのだろうか?

そんなことを考えていると、先に戻っていたメイさんが近づいてきた。


「ただしさんの方は、これからのことは決まりましたか?」


すぐにそんなことを言われる。

たぶん、これは俺たちが戻ってきたときに、雰囲気が暗くなかったのがよかったのだろう。

だからこそ、メイさんは思ったのかもしれない。

俺たちがこれから何をするのかが決まったのではないのかということに…

実際にそれは合っているようで、わからないというのが正解だった。

だから、メイさんには決まっていることだけを言う。


「これからやることは、勇者に会うってことくらいですかね」

「勇者に会う?どうしてでしょうか?勇者に会えば何かできるのですか?」

「それはわからないですね」

「では、どうして勇者なんかに会おうと思うのですか?」


メイさんにそう聞かれる。

メイさんは勇者のことをなんかと言う。

理由はわかっている。

神なんかに召喚された存在だからだ。

だから、この世界を好き勝手にしている存在である神に選ばれた勇者のことは、それだけで嫌な人たちと思っているのだろう。

確かにそういうやつも多かったし、最初に会ったやつらは全員と言っていいほどには、ヤバい奴らだった。

ただ、それでも勇者も俺たちと同じ人間だった。

ちゃんと向き合うことで変わる人が多くいたのだ。

まあ、向き合い方が拳だったりしたのは、今頃になって青春でもしているのかと思ってしまうが、元の世界とは違うのだから、仕方ないだろう。

そして、そんな変わった勇者だからこそ会う価値があった。

だって、これからについてを考えるためにも神たちのことを知らないといけないからだ。

それをメイさんに伝える。


「メイさんの言いたいことはわかりますよ」

「でしたら…」

「でも、神にこの世界でちゃんと会ったことがある人間は勇者しかいないんですよ」

「それは、そうですが…」

「だったら、神を知るためにも勇者と会って話しをしないといけなといけないなって思っただけです。勇者たちをなんとかするためにも…」

「どういうことですか?」

「わからないですけど、あいつらも別に好きでこの世界に来たわけじゃないですからね」

「そうなのでしょうか?」

「はい、たぶんですけど」


俺はメイさんにそう言うが、間違ってはいないと思っている。

この世界に本当に望んでやってきた人など、クロ以外いないのではないかと少し思ってしまう。

俺の表情を見て、それが嘘ではないというのが、メイさんにはわかったのだろう。

少し残念な顔をされる。


「そうですか…ただしさんは、これから勇者に会いに行くということですね」

「今のところはそうですね」

「でしたら、今のところわたしたちとは違う道になりそうですね」

「そうですね。まあ、何かあったら交わるということもあると思うので、そのときまでお別れという感じですね」

「わかりました。ちなみになのですが、エルはそちらについて行くみたいなのですが、よろしいですか?」

「まじですか?」

「はい。ですが、勇者と会うのであれば、必要な人材だとは思いますよ」

「ですよね…」


俺は思わず乾いた笑みを浮かべる。

この宿に帰ってきたときに怒られたとこから、どうしてそうなったのかが理解できなかったからだ。

普通に嫌われているのではと思っていた相手と一緒になるとは思っていなかった。

俺は思わずという感じで、エルの方を見る。

エルもこちらを気にしていたようで、目が合った瞬間に逸らされるという古典的なことをされる。

これはどういう状況なのだろうか?

そんなことを思わずにはいられないが、確かに便利なスキルを使えるエルが、一緒に行ってくれるのはかなり心強かった。

エルがいるのではあれば、勇者に会うということもやりやすくなることは明白だった。

心の中でガッツポーズをとっていると、メイさんがその胸を強調するかのように両手を上に上げて伸びをする。

思わず目がいってしまうのをなんとか自制していると、メイさんはよしっと気合を入れる。


「それじゃあ、ただしさん。また会えることを期待しています」

「もちろんです」


俺はそう言って、差し出された拳に拳を当てる。

それをやったメイさんは満足げに離れていく。

それと交代に俺に近づいてきたのは、エルだった。

面倒くさそうに頭を少しかきながら言う。


「まあ、そういうことだからな、よろしく」

「よろしく、さっそくゲートを開いてもらっていいか?」

「ああ、わかった…って言うと思ったのかてめえ」

「いや、どうしたんだよ。仲間になったんだから、別にいいんじゃないのか?」

「うんうん、確かにあたいは一緒に行くってことを言ったよな」

「ああ…」

「ただな、それですぐにゲートでどこかに送ってくれだ?普通に考えたらおかしいことがわかるだろ?」

「でも、移動しないことには仕方ないだろ?」

「ちっ…仕方ねえな」


エルは怒りながらも、なんとか納得してくれたようだ。

まあ、エルがいてくれたら勇者に会うってことも簡単にこなせるよな。

俺はそう思いながらもエルとみんなに合流するのだった。



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