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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
ヘンタイと特別なスキル

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321話

「何をもって、おぬしはそう言えるのじゃ」


俺がすぐに言ったが、アイラたちが全員ヤミから視線を少し逸らしていたからだろう。

ヤミは怒りながら、そう言ってくるが、俺にはあった。

だからこそ、ヤミを落ち着かせるように言う。


「まずだ。ヤミじゃなかったら、この世界は終わっていた」

「どういうことなのじゃ?」

「いや、まず最初からになるが、ヤミが魔王となっているのなら、どうして最初から最後までドラゴンの姿になっていなかったんだ?」

「それは、おぬし…わらわの力が封印されておったからなのじゃ」

「だよな。でも、そこからまずはおかしくないか?」


そう、おかしいのだ。

ヤミが魔王と自分のことを思っていたというところもそうなのだけれど、一番おかしいのは…


「もしかして、ヤミさんが力を失っていたというのが、ただしはそもそもおかしいことだと思っていますか?」

「シバル、その通りだ」

「どういうことなの?」

「だってな、普通だったら、魔王って最初から強大な力をもっていないとおかしくないか?」

「そうよね。じゃないと、すぐに倒されてしまいそうだものね」

「ああ、その通りだ」

「じゃあ、ヤミは魔王じゃないってことなの?」

「いや、そういうことじゃない」

「じゃあ、どういうことなのよ…」


アイラが困惑するのもわかるが、ヤミが魔王というのは間違いないだろう。

それくらいには、ドラゴンとなったヤミに全員が苦戦していたように思うからだ。

でも、そこまで強くなるのに幾つもの魔力の塊というものを取り込まないといけないというのはおかしいのだ。

だって、そんなことをしてしまえば、勇者に簡単に倒されてしまうのだから…


「いや、そういうことなのか?」

「どういうことなのよ、一人で納得しないでよね、ただし」

「これは俺の憶測だからな。合っているとは思わないことでもいいか?」

「いいわよ。今のまま何も解決策がないっていうのもね」


アイラがそう言って俺はみんなの顔を見る。

全員がうなずいたのを見た俺は話す。


「これは憶測だが、ヤミという魔王を最初から倒しやすく設定していたんじゃないのかって思ってな」

「どういうことなのじゃ?」

「ヤミ」

「なんなのじゃ」

「ヤミが力を取り戻すために必要な工程を考えてみろ」

「そんなのは、わらわの力の塊を体に取り込むということだけじゃ」

「そうだな。ただ、それはヤミ一人では絶対にできないことだよな」

「確かにそうじゃ。わらわの力が封印されたとされるものは、魔力がないものしか触れることができぬからの」

「そこなんだよな」

「どういうことなのじゃ?」

「それって、普通に考えたら、勇者も普通の人も全員ができないと思わないか?」


俺のその言葉に全員はハッとする。


「でも、それなら、ヤミを倒すのは簡単なだけじゃないの?それで何をしたかったのよ」

「たぶん、勇者同士の争いだ」

「ただし、本当にそう思っていますか?」

「ああ、かなりの憶測だが、最初の段階のヤミくらいだったら、あいつでも倒せただろうしな」

「ああ、あいつね…」


アイラにそれを言ったところで、理解してくれたようだ。

あいつというのは、雷の勇者のことだ。

最初は傲慢でかなり弱かった。

ただ、そんなあれですらも勝てたと思うくらいにはヤミは弱い存在だった。


「まあ、言いたいのはだな。この世界で神たちがやりたかったのはヤミという魔王を誰が一番最初に倒せるかというのを競わせたかったんだろうってことだな」

「でも、それなら今は本来のこの世界の姿じゃないってこと?」

「なんとなくな」

「ですが、わからないことがありますよ、ただし」

「何か気になるのか?」

「はい、最初の話しです。ヤミさんが少女の姿なのには意味があると言っていましたよね」

「ああ、そうだな」

「それはどうしてですか?」

「これについては、自意識過剰とは思われたくはないが、俺なんだろう…」


その言葉で、なんとなくみんなは納得する。

そう、この世界でのイレギュラーがあるとすれば、一番は俺という存在だ。

俺はそもそも勇者として召喚されていない、完全な部外者だ。

一応神様によってこの世界に連れて来られたが、やっていることはヘンタイになっているだけ…

だけではなく、魔力がないおかげでヤミの力になっている。

でも、そこで俺はあることを思い出す。


「俺を倒すことができれば、あいつらの願いは叶うか…」

「それはどういう意味なの?」

「いや、これはな…」


そこで、今更ながらに思い出したことを話す。

それは、勇者たちの倒すべき対象が、魔王だけじゃなくて俺も入っていること。

その理由が、神様の世界にいた女性を、どこかの世界にいた勇者が願いを叶えて連れて行ってしまったこと。

俺を転生させた神様が唯一の女性だから、それに選ばれるために俺を倒そうとしているということ。

そんな内容だった。

話しを聞き終わったアイラは呆れていた。


「何、その話し…」

「いや、俺も最初はその反応だったからな」

「そうよね。さすがにおかしいでしょ、この世界は神様たちの遊び場じゃないのよ」

「アイラ様、落ち着いてください。気持ちはわかりますが、それを言っても神様には届きませんよ」

「そうだけど」

「ふふふ、でも、それならただしが勇者とよく出会うというのも納得ね」

「ああ、それに俺が知っている連中っていうのも、そのせいだ」

「そうね。見たときに驚いていたものね」

「さすがに、死んだ後の世界ですら、知り合いか俺に関わった人と出会うとは思わないからな」

「確かにそうよね。でも、それならヤミちゃんはいなくても一緒という結論にならないかしら?」

「なんじゃ、それなら、わらわは余計にいらない存在じゃったのじゃないのか?」

「ヤミ、待ってくれ。確かに、バーバルの言っていることはわかる。だからこそ、ヤミという存在が重要なんだ」

「どういうことなんじゃ?」

「だからあれだ、イレギュラーな存在ってことが重要なんだ」


そう、俺は確かに最初のイレギュラーではあっただろう。

気づけば違う世界に転生をさせられて、魔王を倒せば何かができると言われながらも、結局は出会った魔王は魔王っぽくなくて…

そんなヤミが次のイレギュラーと考えるのなら、答えは一つだ。


「俺とヤミというイレギュラーがいれば、魔王を倒すことで世界としての完結というものを変えられるかもしれないってことだ」

「なんじゃ、それは…」

「だから、さっき言っただろ?魔王を一番最初に倒せば、神様が倒した人の願いを叶えてくれるってやつだ」

「確かに言ったのじゃ」

「そこで関係してくるのが、さっきの暴走だ」

「どういうことじゃ?」

「だから、あれだ。魔王を発見する方法だ」

「もしかして、ただしは魔王をあぶりだす方法が、魔力の塊を使ってできると思っていますか?」

「できるだろ。それが、アーティファクトにあっただろ?」

「なるほど、無効化ですか?」

「ああ。それを使って俺と同じように魔力の塊さえ持っていれば、イルがやったように体にその魔力の塊を押し付けることえ魔王をあぶり出して、倒すというのがこの世界でそれまでの勇者たちが行っていたことだと勝手だが思う。ただ、今回はヤミが特別だったと考えるべきだな」

「待ってただし、それって…」

「ああ、俺たちと同じように特別なスキルがあるおかげで、暴走をしなくて済んだ。つまり他の勇者に見つかりくくなったってことだよな。だから俺たちと同じように特別なスキルがヤミにも備わってるって考えるのが当たり前のことだよな」

「なんじゃと…」


そのことを聞いて、ヤミは驚いている。

確かに、気持ちはわかる。

特別なスキルがあるおかげで、ヤミは力を取り戻すことができたのだからだ。

となると、力を取り戻した今も、その特別なスキルを使うことで、暴走をさせないということもできるだろう。

そのためにも、特別なスキルがなんなのかを把握しないといけない。

これまでのヤミの行動を考えて、スキルを考える。

ヤミは何をしていた?

思い出すのは先ほどの言葉。

正装として、裸で取り込んでいたというもの。

裸と考えて思い出すのは、俺と初めて絡んだというべきか、話したときのヤミだった。

あのときは、何も思わなかったけれど、それがヤミのスキルと関係しているのだとすれば…

俺は、ヤミ以外のここにいるメンバーのスキルを思い出す。

ヘンタイ、ケッペキ、ドエム、ドエス…

特別なスキルだというのにろくなものはない。

そう考えるのなら…


「露出…」


俺はボソッと言葉にする。

その瞬間腹にパンチをもらうのだった。


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