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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
ヘンタイと特別なスキル

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318話

「無事だったみたいですね」

「まあ、そうですね…」

「どうして、少し残念そうなのですか?」

「いろいろあってな」


戻ってきたところで、すぐにメイさんに声をかけられたのだが、俺の雰囲気を見て、不思議そうだった。

でも、仕方ないことだと思う。

俺だって、お姫様抱っこくらいしたかったのにできなかったのだから…

そんなことを考えていたときだった。

勇者の二人が近づいてくる。


「ちぅ、そのヘンタイな恰好。結局お前に助けられるのかよ」

「おお、戦闘狂か…雰囲気変わったか?」

「は、どうだかな」


いつかの戦いを好んでいた勇者の男は、あのときの態度は変わらないけれど、すぐに気に入った、戦うぞとは言わなくなっている。

それに、この態度といい、気づけば吹いている金色の風といい、どこかで見たような気もする相手だ。

雷の勇者である男は、俺に頭を下げる。


「すみません。俺がもっと強ければ、こんなことにならなかったのですが…」

「まあ、前よりも強くなってたらしいし、このまま強くなれればいいんじゃないのか?」

「はい。ただしさんにそう言ってもらえるのなら、これからも頑張ります」

「お、おう…そうしてくれ…」


そう言われて、少し引いてしまうのは仕方なかった。

最初のときの対応というか、態度から全くの別物になっているからだ。

さすがに、ここまでくると気持ち悪く思ってしまうが、さすがにそれを本人に言うのは気が引ける。

面倒ごとを起こさないという点では、今のほうがいいからに違いないからだ。

気になるところもたくさんあるが、仕方ないと思うしかないだろう。

そんなことを考えているところ、再度風を纏った勇者。

まあ、風の勇者に話しかけられる。


「それで、さっきのドラゴンは何だったんだ?」

「あれが魔王ってやつだ」

「ちっ、あれが魔王かよ。前までのオレなら倒してやろうって思えたんだがな」

「今は違うのか?」

「いろいろあったんだよ。そのきっかけを作ったやつのくせに、何を言ってやがる」

「そんなこともあったな」

「あったなじゃねえんだよ。まあ、いいけどな。でも、あれが魔王っていうのなら、お前が責任をもって処分するんだろうな?」

「どういうことだよ」

「決まってるだろ?こんな変な世界に連れてこられた理由に決まってるだろ?魔王を倒せば終わるはずだからな」


風の勇者にそう言われてて、ハッとする。

そういえばそうだった。

この世界のこと。

魔王を倒すことで、一つ願いが叶うというものだ。

その魔王を倒すために競い合わせるようにして七人の勇者が召喚されたのだ。

結局のところ、ヤミを倒すことでしか、この勇者たちは救えないのだから…


「そうだな」

「んじゃあ、オレはちょっと行くところがあるからな」

「あ?どういうことだ?」

「ちょっとな」

「もしかして…」


なんとかしないといけないと考えた俺の言葉を聞いた途端に、風の勇者は何か予定でもあるのか、すぐにどこかに行きたがる。

そして、その言い方といい。

これはもしかしなくても、女性なのか?

女性が関係しているというのだろうか?

本当にそうだというのなら、俺だけ仲間外れだとは思わないのか?

ただ、言うことを言って満足したのか、さっさと風の勇者は、その風に乗って、どこかに行ってしまう。

雷の勇者に至っては、先ほどの会話が終わったところで、自分たちのパーティーメンバーとどこかに行ってしまったのだ。

一人になった俺に対して、メイさんが言う。


「ええっと、ドンマイと声をかけたらよろしいですか?」

「いえ、そっとしておいてください」


なんだろうか、メイドだというのに、こういうときに気を使えないのは、さすがにどうかと思う。

俺はそんなことを考えながらも、どうしようもなくて、アイラ達と合流するのだった。

これからヤミをどうするのかを含めて考えるしかないからだった。

自分自身のことも含めて、やることはたくさんあった。

向き合わないといけないことが…

そう考えていたときだった。


【はあはあ、どう聞こえる?】

「スターか?急にどうしたんだ?」

【一応、あたしたちが助けたのに、ありがとうくらいは言ってほしいんだけど】

「それは、そうだったな。ありがとう」

【ふん。ま、素直なところだけは褒めてあげる】

「そこは、普通にどういたしましてでいいんじゃないのか?」


どこかずれているスターの言葉に、俺はツッコミを入れながらも、聞けていなかったこと聞く。


「それで、どうしてスターはそんなに息が切れてるんだ?」

【そんなこと、決まってるでしょ、追われてるからよ】

「いや、姿が見えないんだからな、そんなことを察するのは無理なんだよ」

【確かにそうね。女心も全くわからないただしなら、その程度よね】

「さすがに酷くないか?」


本当のことだとはいえ、さすがに言っていいことというものがあると思うだが、神であるスターにはそういう遠慮というものがないらしい。


【はいはい、そうね】

「それで、追われてる存在っていうのは、ほかの神ってことでいいのか?」

【そういうことになるわね。それくらいはわかるんだ】

「さすがにな。あのときに会った男がそういう存在ってことくらいは、なんとなくわかる」

【だったら、よかった】

「でも、追われているのに、こっちに連絡してきてよかったのか?」

【そんなこと、ダメに決まってるじゃない】

「そうだよな」

【ええ…でも、助けに来てくれた人もいるから、今のところは大丈夫ってところなのかな?】

「お姉ちゃんだよな。どうやって行ったんだ?」

【そんなこと、あたしにだってわかるってわけじゃないんだけど】

「そうだよな…」

【でも、ちょうどよかったんじゃないのかしら、ただしも向き合わないといけないことを教えてもらったわけでしょ?】

「確かにそれは、そうだな」

【だったら頑張りなさい】

「頑張るよ。それを伝えに来たのか?」

【そんなわけないでしょ】

「じゃあ、なんなんだ?」

【決まってるでしょ、魔王のことよ】

「魔王。ヤミは倒さなくてもなんとかできるのか?」

【それをできるのは、結局ただし次第じゃないの?】

「いや、そうなのかもしれないけどな」

【…】

「いや、ヒントはそれだけなのか?余計にわけがわからなくなったんだが…」


俺は誰もいない場所にそう言葉をかける。

ただ、それを見ていたメイさんに「大丈夫ですか?」と、頭の方を心配されるくらいにはおかしな顔をしていたのだろう俺は、その何かをさぐるべく、今度こそヤミの元へと向かうのだった。


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