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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
ヘンタイと特別なスキル

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315話

ただしが起きる前に、ヤミの前ではアイラが決死の攻防を繰り返し、その時間をかけることで、シバルとバーバル二人の新しい可能性が完成するのを待っていた。

簡単にうまくいくものではないそれは、残念ながら失敗に終わっていた。


「すみません、アイラ様」

「大丈夫。私に任せて!」


ただ、ドラゴンの攻撃は完璧にアイラが防いでいた。

その光の棒によって、輝きが増すたびに、力が増すのがわかる。

アイラ自身の中で、成長しているというのがわかった。

それでも、アイラはほんの少しだけ不安も抱えていた。

それは、終わりの見えない魔力だった。

ヤミのことはこの姿になる前から、かなりの魔力があるということをアイラ自身も知っていたからこそ、すぐになくなるとは思わなかったが、その魔力に終わりがないと感じることはなかった。

アイラ自身も魔力は多く、さらにはケッペキスキルで強化されていることがわかっているから、今でも余裕ではあったが、それよりもドラゴンのヤミは魔力の黒さというべきかヤバさというのが増している。

ドラゴンブレスを当たり前のように光の棒によってはじき返したところで、視界にある男の存在が入る。

私は、光の棒でその男をぶっ叩いた。


「は?」


光に包まれる男。


「ア、アイラさん。何をしてるんですか?」

「そんなこと決まってるでしょ、何にもしてないんだから、手伝ってもらおうと思って」

「わたしがですか?」

「当たり前でしょ?あんたが掲げる正義が本物なら、ちゃんと全員に見せなさいよね」


そう、ぶっ叩いたのは、ジークだった。

たじろぎながらも、ジークはゆっくりと前に来る。

ジーク自身、訳がわかっていない状況だった。

急すぎることに驚くことしかできないのは、本人もわかっている。

それでも、アイラは言う。


「いい加減に、私ばっかりが活躍している状況でいいわけ?」


その言葉によって、ジークは前に出る。

ただ、それはジークだけじゃなかった。


「だったら、オレもだ」

「俺もな」

「わたしも、ラグナロクの長として」

「ワシが少しでも斬れたらな」

「わたくしめたちは少ししか手伝えませんが…」

「ふーん、全員それなりにやる気はあったんだ」


戦える全員が前に出てきた。

だからといって、ドラゴンの攻撃をなんとかできるのは今のところは私くらい…

いや、この風を吹かせている男の人くらいだろう。

だったらここで私はどうするのか?

それは決まっている。


「私も力をためるから、一旦攻撃を止めてもらうわね。ほら、やるわよ」

「え?わたしもですか?」

「当たり前でしょ。そうじゃなかったら声なんかかけないに決まってるでしょ?」

「そうかもしれませんが…」


そして私とジークは少し後ろに下がる。

必然的に私とジーク以外が前に出ることになる。


「この状況は、本当のことですか…」

「やるしかねえってことじゃないかよ。オレはこういうのは好きだぞ」

「はい。俺だって…できるところを見せられるようになっておきたいですからね」

「仕方ないってやつか」

「わたくしめにできるのでしょうかねえ」

「そんなのわからないわよ」


不安そうな前のメンバーなのは、アイラもわかっている。

だから防げるドラゴンの攻撃も一撃だけだと思っている。

ぶっつけ本番と言われても、ジークにはやってもらう必要がある。


「ほら、剣を構える」

「は、はい」

「後は、あんたのスキルを思い出しなさい」

「セイギスキルですか…」

「そうよ。本当に何が正義なのか」

「それは、ドラゴンを倒して、世界を守ることが正義です」

「違うわよ。そんなことは、誰でも言えることでしょ?」

「それはそうかもしれませんが、違うのでしょうか?」

「違うわよ。私たちの特別なスキルって言われてるものが、どうして特別なものなのか、私も理解するまではよくわからなかったけどね。必要なのは、あなたがこのスキルを誰にどんな思いで使うかってことね」

「誰にどんな思いで、ですか?」

「そういうこと」


言いたいことがわかったのか、わからなかったのか、ジークは剣を構えて目を閉じる。

そのタイミングで、前にはドラゴンブレスが飛んでくる。

金色の風が吹き荒れ、雷が鳴り響き、なんとか防ぐことができている。

私も意識を再度集中させる。

手に持つ光の棒がさらに光り輝くの感じて、気合を入れる。


「いい加減に一回、目を覚ましなさいよ!」


そして、その光の棒をドラゴンに向けて投げつける。

ケッペキスキルで強化されたそれによって、あり得ないような速度でそれは飛んでいったけれど、ドラゴンはそれをなんとか躱してしまう。

以外とすばしっこい…

私はそう思いながらも、二人の魔力を感じていた。


「ふふふ、まずはわたくしからいかせてもらいますわね」


その言葉とともに、バーバルは魔法を発動する。


「火よ、燃えあがってその姿を龍となって我に付き従う炎となれ、ファイアードラゴン」


魔法を唱えると、バーバルの前には炎が集まっていく。

そして、それはドラゴンへと姿を変える。

さすがに、ヤミがなっている黒龍とは大きさには負けるが、それでも、炎を纏った龍は迫力がある。


「いきなさい!」


そして、バーバルが手を前にやるとその口から炎を放つ。

まるでドラゴンブレス。

ゴオっと音がなるほどのそれは、ヤミドラゴンの放ったブレスを焼き払って突き進む。

ただ、さすがにまっすぐにだけ進んだ、そのブレスは避けられてしまう。


「すご…」


感心している私は、シバルの方にも目をやる。

そこではゆっくりと盾を構えたシバルが立っていた。

特に変わったという感じはない。

だけど、シバルは盾を振る。


「ギャアアアアア」

「え?」


すると、すぐにヤミドラゴンの体が吹き飛んだ。

どういう理屈なのかが全くわからないそれに驚きながらも、二人の覚醒を喜ぶ。


「ようやくね」

「ふふふ、お待たせ」

「アイラ様、すみません。待たせてしまって」

「いいわよ。二人とも強力なものってことはわかったしね」

「ふふふ、それじゃ」

「はい、やりましょうか」

「ええ、我の手に、ただ誰かを守りきるための聖なる力を作れ、セイクリッドジャベリン。行くわよ、ヤミの目を覚ましに!」


私も手に光の棒を作りだすと、三人でヤミドラゴンへと向き合った。


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