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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
ヘンタイと特別なスキル

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314話


「お姉ちゃん…」

「ようやく見つけた」

「どうしてここに…」

「それはもちろん、正君を助けに来たからに決まってるでしょ?」

「それは確かにそうなのかもしれませんけど」

「うーん、お姉ちゃんにそんな敬語を使わなくてもいいのに」

「え?ああ、うん…」


急に現れたお姉ちゃんの存在に俺はただ驚く。

だって、お姉ちゃんはあれから意識を失っていたはずだったからだ。

今もマゴスにいるはずだと思っていたのに、ここにいる理由がわからなかった。

ただ、お姉ちゃんはゆっくりと俺の手を握る。


「大丈夫だよ。正君が誰かを犠牲にするなんてことはさせないよ」

「でも、それじゃあ全員を救えない可能性も…」

「そんなことは絶対にない!」

「え」


お姉ちゃんの眼は力強かった。

ただしっかりと俺のことを見てくる。


「だって、お姉ちゃんのことを救ってくれたのは正君だからね」

「いや、助けたかはわからないけどな」

「ふふ、そんなことないんだよ。お姉ちゃんは助けられたって感じてるんだよ。だから、正君は大丈夫」

「どういう理屈なのかはわからないけど、大丈夫だと思っておくか」

「そうだよ。だからこんなところで無駄な選択をしなくてもいいんだよ」

「無駄な選択?お前はそう思うのか?」


聞こえてくる俺の声。

そこで考えてしまう。

ここにいるお姉ちゃんの存在が本物なのかどうかと…

本物じゃないのだとすれば、俺のことをさらに何かしようとしているのであれば?

そう考えてしまう。

ただ、そんなときに俺の手はお姉ちゃんの手に包まれる。

暖かい手を感じるだけで、本物だということを感じられる。

決めた。


「おい、選択を…」

「ああ、する」


俺は聞こえる声にこたえるようにしてうなずく。

お姉ちゃんもそれによって、何かを察してくれたのか、離れてくれる。

俺が選択するのは…


「犠牲になるのなら、俺自身だ。ここまで煮え切らないようなやつだからな。選択するのなら、誰かじゃなくて自分に決まってるだろ?」

「そうか」

「ああ…誰かのせいになんかしてたまるかよ」


俺がそう言葉にするとともに、頭の声は聞こえなくなる。

そして、体が急にだるくなる。

立ってられなくなる俺の体はゆっくりと倒れる。


「ちっ、何か夢を見てたような気がするな」


俺は見覚えのない場所で目を覚ました。

ベッドの上で寝かされていたようだった。

それなのに体は思ったよりもだるい。

頭にズキッと痛みがして、すぐにこれまでのことを思い出す。

傷口はふさがっている。

これはアイラのおかげということだろう。

すぐに理解する。


「行かないとな」


そう言葉にしながらも立ち上がったときに、俺の体から何かが落ちる。

それは三人分の下着だった。


「俺のことを待っているみんなのためにか…」


なんとなく主人公になった気分だな。

いや、物語の主人公っていうのはみんなこういうもんなのかもな。

俺は下着をこれまでのしたこともないように身に着ける。

これで俺のヘンタイとしての最強になっただろう。

これまでは、まるで違う体の感覚にとらわれながらも、俺は部屋を出たのだった。



「はあはあ、やっと追いついたって、どうしてあんたがここにいるの?」

「お姉ちゃんがいて悪い?」

「そういうことじゃないわよ。神しか来れないはずの場所にどうして来れているのかが気になっただけよ」

「そんなこと?簡単なことよ。お姉ちゃんの体を神様が乗っ取ろうとしたから、逆のことをしただけかな」

「そんな簡単なことじゃないと思うんだけど」


スターはそう言いながらも、お姉ちゃんと自分で呼ぶ女性に向き直る。

ただしとは因縁があった相手だということはこの世界に来る前から知っている。

だから警戒していたのだけれど、お姉ちゃんは早々にスターに頭を下げる。


「だから、謝りに来たんだけど、おかしかったのかしら?」

「そんなことはないけど。そんな無茶苦茶なことをしてきたのは、あんただけよ」

「それはありがとう。でもね、このまま正君があなたと会えないのも嫌だと思うのよね」

「はあ、ここにあたしがいる意味をあんたはわかってるってことなのね」

「なんとなくね」


そう言って笑うが、神様すらも乗っ取る女性のことだ、当たり前のことのようにわかっていたのかもしれない。

ただ、そこでスターが思ったのは違ったことでもあった。


「あいつ、本当に厄介な相手に好かれたのね」

「ふふ、自分でも自覚してるから大丈夫よ」


お姉ちゃんはそう言って笑う。

なんとも言えない表情になってしまうスターとお姉ちゃんはその場を後にしたのだった。


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