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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
ヘンタイと特別なスキル

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313話

「いたた…」

「本当に?」

「いや、だって車に轢かれたんだぞ」


そう言ってから体中を触るが、痛くない。

ただ、納得はしていなかった。


「これで痛くなかったら、体がおかしいやつだろ?」

「でも、体は大丈夫そうよ」

「まじか?」


俺はしっかりと体を見る。

まあ、見たところで体に傷などは全くできていない。

これはおかしい。

だって、俺は車に轢かれたのだ。

だというのに、体は無傷。

こんなことが起こるということは夢とかそのあたりのことなのだろうか?

疑問に思いながらも、周りを見渡す。

そこでわかる。

ここは俺が知っている場所だ。

家にまた戻されたのだ。

それも、知っているような知らない女性と二人で…

それに驚いて口にする。


「いや、さっきまで俺がいたのは外だったよな…」

「そうね。でも、今はここにいるのが一番いいの。自分自身と向き合うためにはね」

「どういうことだよ!」

「わからないの?」


女性に言われて、俺は考える。

思い当たらないというわけではない。

でも、思い当たりたくないというのが正直なところだった。

この部屋にいたときに聞こえた声。

俺の中に響く俺の声。

それは、俺が目を逸らしていた内容のことだった。

自分が童貞なのは、事件があったせい。

女性に触れられないのはそれのトラウマのせいだと自分に言い聞かせていた。

そう、簡単に言ってしまえば人のせいにしている。

それが正しいことだと俺は思っているからだった。

いや、違う。

楽なことだと言ってしまった方がいいのかもしれない。

結局のところ、俺は逃げてしまったのだ。

そう考えたところで再度声が聞こえる。


「ようやくわかったのか?」

「ああ、逃げてたってことがな」

「そうだろ?それがわかったなら、次の質問だ」

「なんだ?」

「ま、慌てるなよ」


俺の声はそう口にする。


「く、思ったより速い!」


何がだよっという前に、女性が伸ばした手が遠くに遠くに見える。

まるで、飛ばされている。

そう考えたときには、視界が真っ黒に染まり、逆に遠くから何かが近づいてくる。

吸い込まれるようにして、その空間に入る。

そこには、シバル、アイラ、バーバル、ヤミの四人がいる。

その瞬間に先ほどのことを理解した。

人が誰だったのかも…

今いる場所はセイクリッドのどこかだろう。

そんなことを考える中、四人はゆっくりと近づいてくる。

そして、声が聞こえてくる。


「さあ、どれを犠牲にする?」

「犠牲にって、どういうことだよ」

「決まっているだろ?全員は救えないんだからな」

「どうしてだ?」

「わかっているだろ?お前は一人だ。だったら、選べるのは一人だろ?だから、誰から犠牲にしていくんだ?」

「んなこと…」


考えたことはなかった。

この中から誰かを犠牲にしないといけないというのだろうか?

俺は四人の顔を見る。

ヤミ以外の三人には気持ちを伝えられた。

キスをされたこともある。

だったら犠牲にするのならヤミなのか?


「選んだのか?」


頭の中に再度声が響いてくる。

その言葉で、俺はさらに四人の顔を見る。

だからといって、誰を選ぶのがいいのかわからない。


「俺は、俺は…」

「また、何も決断しないつもりか?」

「決断だと…」

「そうだ。お前はわかっていることだろ?」

「どういうことだよ」

「決断してないから、お前は毎回何もしていないんじゃないのか?」

「それは…」

「どうした?選ばれないのが怖いのか?」

「なんだと…」

「だから、言ってるだろ?お前は俺だ。考えていることはわかる」

「そうかよ」


だからこそ、言われていることはわかる。

俺が女性といい感じになってもそういうことができないのは、くそ童貞だからというのに変わりはない。

でも、その理由が、俺がトラウマを抱えているということもあるが、トラウマは一つだけじゃなかった。

確かに女性事態が苦手になったというのは確かにあった。

でも、違うところもあった。

それは、女性に最後まで相手にされるのかということだった。

だから俺は手を出せなかった。

いや、出すのを躊躇してしまう。

少しのトラウマを持ちながらも応えようとして失敗してしまえば?

そう思ってしまうだけで、俺は何もできていなかった。

このままどうすることが正解なのかがわからなくなる。

俺は…


「さあ、どうする?」


聞こえる声に、俺は手を無意識に伸ばそうとして、その手を掴まれる。

手を掴んでいたのは…


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