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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
ヘンタイと特別なスキル

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311話

ドラゴンになったヤミは先ほどの攻撃を完全に防がれたからか、どこか警戒しているように見える。


「へえ、そんな姿になっても、しっかりと理性は残っているんだね」

「はい、ですが、こちらの声が届いているというわけではありませんね」

「どうすれば、ヤミちゃんは元に戻ると思うかしら?」

「うーん、いっぱつ殴るしかないでしょ?」

「そのためには、感じる膨大な魔力をなんとかしないといけませんね」

「確かにそうよね。見なくても感じるくらいの魔力だものね」


そう、ドラゴンは警戒するようにして魔力をためている。

次はどんな攻撃をしてくるのかはわからないけれど、私たちがやることは決まっている。

ヤミを正気に戻すこと。

そして、そのために必要だと思うのは、ヤミからあふれ出る黒い魔力をなんとかしないといけない。

あの魔力のせいでヤミが暴走しているというのは、誰が見てもわかるくらいには禍々しいものを感じる。


「まずは大量の魔力を使わせるってことね」

「はい。それしかありませんね」

「ふふふ、どう考えてもわたくしたちの方が魔力が少ないのでしょうけど…それをなんとかするっていうのもいいわよね」

「ええ」

「はい」

「まずは、わたくしから、やります」


そう言うと、バーバルから大量の魔力を感じる。


「火よ、相手を焼き尽くす業火となせ、バーニングファイアー」


その言葉とともに、炎が勢いよくドラゴンへと向かっていく。

普通であれば、その炎によって簡単に焼かれるくらいには強力なものだった。

ただ、そんな炎ですらもドラゴンは倒すことはできない。

ドラゴンは体に膨大な魔力を纏うと炎を受け、炎が収まったときもドラゴンの姿は変わらない。

膨大な魔力で完全に防いでしまったのだろう。

それでも、ほんの少しはその魔力がそがれている。


「ふふふ、この程度ではダメってことはわかっていたわよ。だから、もっともっと…もっとね!」


バーバルはさらに楽しそうに笑う。


「火よ、相手を焼き尽くす業火となせ、バーニングファイアー、バーニングファイアー、バーニングファイアー」


今度は三つの炎。

それぞれが違うタイミングでドラゴンに向かって飛んでいく。

それも同じ場所に向かっていく。

ただ、それも同じように膨大な魔力によって防がれる。


「ふふふ、効かないわね」

「さすがに強いってことね」

「そうね。でも、効かないってことはヤミちゃんを傷つけてないってことだから、それはよかったことなのかしらね」

「そういうことを呑気に言われても、結局効いてないんじゃヤミが起きないでしょ?それじゃ、意味ないでしょ?」

「そうよね。少しはやり方を変えるしかないかしらね」

「どうするのよ?」

「少しだけ時間をもらっても大丈夫かしら?」

「何かをやるつもりね」

「ええ」

「だったら、私たちもやるわよ」

「はい」


バーバルのことを信頼していないというわけではなかったが、バーバルが魔法を使うときは、かなりの威力になることがわかっていたので、近くにいるというのも正直なところではキツイ。

というよりも熱い。

炎魔法をよく使うので余計に…

だからこそ、何かをやるタイミングで私たちは前に出る。

魔法が飛んでこなくなったことを確認したドラゴンは体の防御に回していた魔力を攻撃へと変更する。


「ギャギャアアアアアアアアアアアアアアアア」

「はあはあ、大きなお声ですね!」


そう言って、ドラゴンの咆哮はシバルがその盾で簡単に防ぐ。

私は、その後ろから魔法を唱える。


「我の手に、守るための聖なる力を与えよ、ホーリージャベリン」


光の槍を手にして、それをすぐに投げる。

ただ、その槍は魔力を纏った爪で簡単にはじかれる。

予想はしていたけど、やっぱり意味が全くない感じの攻撃になってるってことね。

そう、光の槍を投げたのはいいし、それで魔力を使わせたのだって、いいことだった。

でも、バーバルが魔法を放ったときのように魔力を少しでも削ったというものではなかった。

なるほど、当たり前のように、私も今のままじゃダメってことか…


「やれるかわからないけど、やるしかないか…」

「大丈夫です、アイラ様。ボクが攻撃は受け止めます」

「ふふ、そうね。じゃあ、安心して次の魔法ができそうね」


バーバルがやっているよりも、私であれば、次のステージにいけると確信していた。

ううん、すでに少しはできていたはず…

ただしを助けたときに無意識に発動した魔法。

それをジャベリンでもするってだけなんだから!

私は魔力をためるというよりも、心に集める。

いつかの言葉で聞いたことがあるもの、それは修道女魔法の神髄というものらしい。

私は信じていなかった。

だって、魔力があれば、ある程度の修道女魔法が使えていたからだった。

でも、今ならほんの少しわかる。

修道女魔法が多いのは、相手を守る、助けるための魔法。

だからこそ、修道女魔法は誰かを想うことで威力を増したりするということ…


「あのときはバカにしてたけど、これなら少しはいけるわね!」


魔力が集まっている心。

心臓の上に手をもっていく。

その魔力を手につかむようにして、魔法を発動する。


「我の手に、ただ誰かを守りきるための聖なる力を作れ、セイクリッドジャベリン」


そして魔法が発動する。

光の槍。

ただ、これまでのものとは形状が違っている。


「なるほどね。でも、私はこっちのほうが好きかな」


手に握られていた光の槍は、これまでのジャベリンというよりもただの棒に近い。

先端が尖っているというものではないからだった。

これでは光の棒じゃないのかと、ただしになら言われる可能性が高いものだけれど、その輝きは今までのものとは全く違っていた。


「守るための力はこういうものよね」

「さすがです。アイラ様」


それを見たシバルは目を輝かせている。

そして、どこかうずうずしているようにも見える。

だからこそ、私はシバルに言う。


「ありがとう。じゃあ、ここからは私が前をやるから」

「アイラ様?」

「シバル?あなたも、やりたいことがあるんじゃないの?」

「はい!」


シバルの前に私は立つ。


「じゃあ、やるしかないわよね。ヤミ!」

「ギャギャアアアアアアアアアアアアアアアア」

「これまでとは違うから!」


宣言をしたと同時に、ドラゴンは咆哮を放つ。

ただ、私は目の前で光の棒を一回転させる。

すると、光の膜のようなものが出来上がり、魔力はその膜を壊すことができない。


「だから言ったでしょ?」

「ギャアアアアア」

「そうやって、すぐに次の攻撃をしてくるのはさすがだけどね」


といっても防いだものは咆哮だけで、すぐに爪が向かってくる。

ドラゴンネイル。

ラグナロクのメンバーたちが戦っていたときよりも、さらに魔力を帯びている爪は、威力も上がっている。

私はそれを見て、光の棒を地面について体の前に立てる。

自分の身長よりも高い光の棒は、爪をいとも簡単に受け止める。


「そんなのも、無駄だからね!」


そして、爪を上に弾く。

少しドラゴンの態勢が崩れる。

その隙に、私は光の棒をドラゴンの頭に体に叩きつけようとするが、それは空振りに終わる。


「この辺りじゃないってことね…」


確かに当たっていたはずの光の棒は、空振りをした。

それは、そこにヤミが暴走した原因がないということを表していた。

これまでよりも強く、そしてただ周りの人を助けきるという武器をもとうとしたのだから、効果としてはこれで問題はなかった。


「さあ、ここからもっと激しくいくわよ!」


私ができるのはここまでだった。

ヤミを暴走させている原因を探るのも、バーバルとシバル。

二人の協力がないと無理だということをわかっていたからだった。

一度唇を触った私は再度武器を構えた。


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