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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
ヘンタイと特別なスキル

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308話

ただしを部屋に連れてきて、私たちは何もすることなくいた。

宿の一階ではエメとミライが、これから起こるであろう未来について二人で考えている。

どうなってしまうのかということについては、まだわからない。

わかることは、ただしが目覚めていないということだけだった。

それなのに、私たちは三人で部屋の前にいた。

ただしが起きるまでは何もできない。

アイラはそう思っていた。

だけど、違った。


「ボクは行きます」

「ふふふ、わたくしも」


シバルとバーバルはそう言葉にすると扉に背を向ける。


「行くってどこへ?」


シバルとバーバルの仕草でそれはわかっているはずなのに、アイラはそう聞く。

すると、シバルとバーバルはお互いの顔を見ると言うのだった。


「「もちろん、ヤミさんの元へ(ヤミちゃんのところよね)」」


アイラはその言葉を聞いて、同じように行くとは言えなかった。

違う言葉が口から出ていく。


「どうして?ただしが起きてから一緒に行くのじゃダメなの?」

「それは、確かにそれがいいのかもしれませんが…」

「ここにいたって、わたくしたちは何もできないものねえ」

「はい。だったら、ここはドラゴンとなったヤミさんをなんとかするために行くべきです」

「ふふふ、そうね。ただしなら、そう言うし、行動するものね」

「はい」


シバルとバーバルはそう言って決心してこの場から離れようとする。

ただ、少しだけ動いてから足を止めると、ただしが寝ている扉に二人同時に手をかけた。


「バーバル?行くんじゃなかったのですか?」

「それはわたくしのセリフですよ。別にただしの顔を見てから向かっても、少しの時間しかロスしませんよ。シバルはどうしてわたくしと同じようにこの部屋に手をかけたのですか?」

「す、すこしでもただしの顔を見てから次に行こうと思ったんです。ダメだったのでしょうか?」

「いえ、ダメではありませんよ。でしたら、こうしませんか?」


そこで二人が話したのは、ただしの部屋に入る順番はじゃんけんで決めて、一人ずつ入るというもの。

勝った方が後に入って、ただしと二人っきりで過ごせるというものだった。

そして、二人はその言葉の通りに、互いにじゃんけんをして、順番を決めて入っていった。

私は何もできていない。

二人のように決心をして進むこともしていない。

扉の前から動けない私の横を通り過ぎていく二人に、私は何もできない。

そんなときだった。


【うじうじしないでよね】

「え?」

【こっちは助けに行きたいのを我慢してるんだから…】

「声?どこから?」


どこからか声がする。

ただ、自分の中というべきか近いところからということで、声の方向に手を伸ばすと、そこには石が入っている。


【はあ…こっちも忙しいのに…】

「神様なんですか?」

【だったら、何なの?】

「ただしのことを…」

【助けてくださいって?】

「は、はい…」


そう、このタイミングで神様に望むことはそれだけだった。

私たちが次の戦いもうまくいくために必要なこと。

それは、ただしを目覚めさせてくださいということだった。

でも、神様の言葉は強い。

助けてくださいと神様に望むことはそんなに悪いことなのだろうか?

私はそう思っていた。

そして、石から声が再度聞こえる。


【助けるのが自分って思わなくていいの?】

「それは、でも…できないんです。私の魔法でも目を覚まさなかったんです!」

【だったら、待つしかないわよ。あたしだって、そこからのことはどうしようもないしね】

「そんな無責任なこと…」

【じゃあ、あたしが助けたら、あんたはただしのそばを離れなさいよ】

「それは…」

【できないって?】

「…」

【神様に頼むのなら、それくらいの覚悟じゃないの?】

「でも、でも…」

【あたしが言うことじゃないけどね。神様なんて、無責任で叶えてくれるかわからないものに願うくらいなら、自分が救うって思いなさいよ】

「…」

【無責任だと思う?でも、結局はあんたがどう思うか、じゃないのかしら?】

「そうですね」

【決心が決まったなら、速くすることね。こっちだって、あんたの尻を叩いている時間もあんまりないんだから】

「それはどういうことで…」

【ま、頑張りなさい】


私の言葉に重ねるようにして言葉を言った後に、石からは何も聞こえない。

私は、言葉を思い出しながらただしの部屋の扉を開ける。

ベッドに横たわるただしは目を閉じている。

近寄って顔を触る。

起きることはない。

私は覆いかぶさるようにして、ただしに抱き着く。

感じる体のぬくもりは、ただしがちゃんと生きていることを示してくれていた。


「はあ、こうやってただしにちゃんと触れたのは初めてのことか」


ただしの体の暖かさを、匂いを感じるようにしてグッと抱きしめる。

そのタイミングで体に何かが当たる感触がある。

これは何?

私はそれに触れた。

ただ、それは触れた瞬間に何かというのはわかった。


「なるほどね…ただしを起こしたいっていうのは、二人も当たり前に同じってことね」


当たったのは、二人の下着。

二人とも、ただしが起きたら必要になるだろうと、下着をただしに置いたのだろう。

それも体の触れる位置に…


「二人とも、ただしが起きることを信じてるってことよね。それを私が信じてないっていうのもバカな話しよね」


これまで一緒にいて、ただしを助けるために、あんなこともしたというのに、それなのにただしを信じていなかったのは私だけということになる。

二人は、なんだかんだで信じて必要なはずの下着を置いてここから離れた。

だったら、私も…

アイラは決心をすると、上下両方の下着を右手と左手の両方に持たせる。

そして、再度ただしのことをぎゅっと抱きしめる。


「じゃあ、待ってるわね」


そう言葉にして部屋を出た。

一階に降りると、私のことを二人は見ていた。

それにこたえるようにして私もうなずく。

ただしがいなくても私たちがやる。

そして、ただしが起きたときにヤミを含めた四人でただしを再度起こすのだ。

そう心に決めて、私たちはゲートを開いてもらうようにお願いする。

ただ、それをミライとエメが止める。

話しをするために、そしてスキルの使い方を教えるために…


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