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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
ヘンタイと特別なスキル

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305話

「雷よ、すべてをその稲妻で薙ぎ払え、サンダーブラッシュ」


ゴオっと音を立てて雷が放たれる。

ドラゴンブレスを弱めるために放った広範囲の雷は、簡単にブレスに飲み込まれる。


「ああ、終わりか…」


雷の勇者は、そう言葉にしたときだった。

目の前に二人の女性が割り込む。


「勇者様!」

「勇者!」

「お、お前ら、どうしてここに!」

「相手を見て、驚いていましたけれど、できることがあると思いまして…」

「そうです。勇者は一人では、今でもどこか頼りないのですから、あたしらも頼ってください!」


雷の勇者が負けた後でも、残ってくれた二人の仲間と言える存在。

その存在がこのタイミングで来るということは、余計に負けられない。

先ほどの攻撃によって、少しだけは勢いが弱くなっているのを雷の勇者は確認すると二人に言う。


「少しでも勢いを抑えてくれ!」

「わかりました!我の前に壁を、バリア」

「火よ、相手を焼き尽くす炎となせ、ファイアー」


二人が魔法を唱えるが、それは簡単に破られてしまう。

ただ、ほんの少しでも時間が稼げることで、魔法を唱える時間はできていた。


「雷よ、雷よ、雷よ、その稲妻は神速となって、相手をただ貫く一筋の神雷となれ、ライトニングサンダー」


カッと手元が光ったと思ったときには雷が放たれる。

これまで一度も使えないと思っていた雷の魔法は、勢いよくドラゴンブレスに向かっていく。

ドンという音とともに、ドラゴンブレスと雷は当たると消滅する。


「やった…」

「やりましたね、勇者様!」

「やるじゃん、勇者」


今ので、かなりの魔力を消耗した雷の勇者は相殺できたことに喜びながらも、肩を貸してもらいながら、三人で立っていた。

相殺できた。

それによって、油断していた。

気づいていたときには、次のドラゴンブレスは近くに迫っていた。

三人ともが死を覚悟したタイミングで、それは何かによって防がれる。


「おいおい、こんなところに、こんなものがいるんだよ」


そう言葉にしたのは、風を纏った男の姿だった。

誰だ?

雷の勇者はそう思うが、助かったことに違いはなかった。

ただ、男の姿はどこかで見たことがある見た目だった。

左目は、戦いで傷がついたのか、一筋の後があって開いていない。

それでも、落ち着いた雰囲気があるので、弱いと感じない。

実際に、先ほどのブレスを簡単に防いでしまったところを見ても、そう思ってしまう。

風を纏った男は言う。


「まあ、少し休んどきな。オレが少しはできるようになったところをあいつに見てもらいたかったが、こんなやつに出会ったからには、戦わないとオレの気もおさまらないしな」


風の男はそう言うと、ドラゴンと向き合う。


「ガアアア、ギャギャアアアアアアアアアア」


ドラゴンは咆哮する。

雷の勇者よりも強い相手を前にして、余計に体内の魔力がうずいて仕方ない。

ヤミはそれを必死に抑えようとするが、体はすでに言うことを聞かなかった。

ゴオという音とともに、再度風の男にドラゴンブレスを放つ。

風の男は、それを見て、風を起こす。

風に色なんてものが普通はついているはずがない。

でも、雷の勇者はその風に色がついているのを見てしまう。

金色の風。

それが男の周りに吹き荒れていた。

そして、風の男はそれ見て、一言口にしてから魔法を唱える。


「意味ねえよ…金色の風よ、我の前に風の壁を作りてその攻撃を妨げよ、ゴールドウィンドウォール」


その言葉によって、金色の風が吹き荒れて壁ができる。

向かってくるドラゴンブレスと衝突する。

そして、ドラゴンブレスと当たり、完全に防ぎきる。


「一撃で相殺しただと…」

「は、オレができる防御を駆使すれば、そんな攻撃は簡単に防げちまうんだよ」


風の男は、自信満々にそう言う。

ただ、防いだ後に攻撃の魔法を唱えることはない。

雷の勇者は、その動きを見て驚く。

先ほどの防御を見ていれば、それを攻撃に使用できるのであれば、ドラゴンの硬い鱗を、魔力を打ち破ることができる可能性があったからだった。

雷の勇者は、肩を貸してもらいながらも声をかける。


「おい、あんた、攻撃はしないのか?」

「は、オレは攻撃ができないんだ!」

「どういうことだよ?」

「簡単なことだ。オレがオレとして覚醒したときに、黒く濁っていた風は金色に輝き、その風は攻撃を防ぐことでしか吹くことはないからな」

「なんだと…いや、待てよ…」


雷の勇者は、その言葉であることを思い出していた。

それは、昔のテレビで見た内容だ。

その番組で見た主人公の男が言っていた言葉に酷似していたのだ。

それに、風が金色ということも同じに思えてしかたない。


「おい、あんた」


それを確認するために、雷の勇者は風の男に声をかけるが、男は手を横に広げる。


「何かを言いたいのは理解した。ただな。今それは難しい」

「どうしてだ?いや、わかった」


雷の勇者は、風の男が何故そのようなことを言ったのかをすぐに理解した。

ドラゴンから放たれるプレッシャーというべきか、魔力の量がさらに増えたからだった。

ドラゴンは今のままの攻撃では、風の男が使う防御の魔法を破壊することができないということがわかったのだろう、だからこそドラゴンは体の中にある魔力を解放したのだ。

ドラゴンは翼を広げる。

そして翼を動かすことによって風を作りだした。

ドラゴンウィングと呼ばれるその技によって、竜巻のようなものが出来上がる。


「は、今度は竜巻って感じか、だったらオレも同じように竜巻を起こすしかねえな!」


風の男は、そう言ってさらに魔力を高めると、男の周りにはさらに風が吹き荒れる。

それを見たときに、雷の勇者は体に力を入れた。

もし、風の男と同じことができるのであれば、俺もできるのではないのかと感じたのだ。

ただ、それをするよりも先に竜巻が向かってくる。


「金色の風よ、吹き荒れろ、吹き荒れろ、そしてすべてを断絶する風の盾を作りだせ、ゴールドウィンドシールド」


風の男から魔法が放たれる。

金色の風でできた、大きな盾のように見えるそれは、雷の勇者は見た瞬間に城壁かと理解する。

そういえば、こんな技があったなと…

ドラゴンから放たれた竜巻は、その城壁に当たると消える。

あれほどの竜巻だというのに、金色の風でできた城壁はまだ消えることなくそこにある。

それを見て、雷の勇者は時間ができたことを理解した。

だからこそ、魔力を解放することに集中するのだった。

そのタイミングで、この場にゲートが開くのだった。


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