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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
ヘンタイと特別なスキル

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303話

「ただし!ただし!」


アイラが必死に慌てて名前を呼びながらも、ただしに近づいたが、そのときにはすでに、ただしから言葉は発せられることはなかった。

どういう状況なのか、わからないアイラは取り乱す。

だって、さっきまでただしは私たちと一緒に笑っていた。

神に憑依した存在に、再度勝って…

この後は、そのヘンタイな見た目をまたみんなでツッコんで、それで笑いあってというのが、私たちが迎えるはずの未来だと思っていたのに、今広がっている未来は違う。

いつもはヘンタイで、でも頼もしいはずのただしの体を必死に支えるけど、力強さを全く感じない。

とりあえず回復をさせないといけない。

私は必死で魔法を唱える。


「我の周りを聖なる光にて癒しを与え給え、ホーリーヒール」


必死に魔力を込めて魔法を唱えたが、それでも体から流れる血が止まらない。

回復させるために近づいたはずなのに、手につく血が、止まらない血が、自分の気が動転する。

回復しない、そう感じたときには口から言葉が発せられていた。


「あ、あ、あああ、ただし、ただし、ただ…」


ただしの名前を何度も呼ぼうとしたときに、頬に痛みが走る。

グワングワンと頭に音がなるくらいには力強く頬を叩かれたのがわかる。

私は、思わず叩いた方向を見た。

そこには、目にたくさんの涙をためたシバルが私のことを見ている。


「アイラ!ここで、ただしのことを救えるのはアイラしかいないんです」

「!」

「アイラ!だから、ただしのことを治してください」


その言葉は必死で、私は昔のあることが脳内に浮かびながらも、必死に考える。

ただしのことを救うためにどうすればいいのか?

さっきのことでわかる。

これまで使っていた修道女魔法では、ただしのことを救えないということ。

どうすれば?

考えても、答えがうまくでてこない。

そのタイミングで、肩に手を置かれる。


「大丈夫です。アイラならできますから」


シバルからの強い願いと、バーバルからの信頼。

いつもとは違う、二人のことを考えながらも、私は自分のスキルを考える。

そして、セイクリッドで使った魔法のことを…

ケッペキスキル。

私は、あなたにだけの潔癖になる。

それじゃあ、ダメなのかな?

でも、このまま救えないのも、このまま何をしないのも、違う。

だから、私は…

ただしの唇にキスをした。

不思議と体に力が湧いてくる。

それを感じながら、私は魔法を唱えた。


「我の手に、ただ目の前のものを治すための聖なる力を作れ、セイクリッドヒール」


多くの魔力に包まれる。

握りしめた体がほんの少し冷たくなり始めていた体が暖かさをもっていく。

穴が開いていたはずの脇腹ですら、みるみるうちに回復をしていく。

ただ、血が止まり、体に暖かさが戻ったというのに、ただしは目を覚まさない。

少しだけ顔をつまんだりしてみたけれど、起きる気配はない。

ただ、よかったところは、呼吸も顔色も落ち着いているように見える。


「アイラ様、どうですか?」

「傷は治すことができたけど、目を覚まさないみたい…」

「そうですか…」


少し残念そうなシバルとは違って、バーバルはそんな私とただしを見ると笑う。


「ふふふ、やっぱりアイラならなんとかできたわね」


確かにできた。

新しい魔法を使うことで、ただしが死ぬという状況だけはなんとかできることができた。

でも、問題はある。

メイとエルが私たちの元に近寄ってくる。


「大丈夫かよ」

「なんとかね」

「こんなことになるとは、わたしも予想外でした」

「だけど、このままってわけにはいかないよな」

「はい。わたしたちは先ほどのドラゴンを追いかけることにします。倒せるかはわかりませんが…」

「ま、何かあればあたいらが行くからな」

「ここから私たちがどこに行くのかもわからないのに、何を言ってるのよ」

「それもそうだな」

「それでは、わたしたちは向かいます」


その言葉とともに、ラグナロクのメンバーたちは去っていく。

残されたのは、私とシバルとバーバル。

未来とエメの五人だ。

横たわるただしの周りにみんなで集まる。

気づけば、女の子ばかりが周りにいるよね。

そんなことを考えながらも、私はシバルに視線を送る。

シバルとただしを肩に担ぐ。

そのタイミングで、バーバルはどこからか収納していた魔法道具を取り出す。

リベルタスの近くでは荷物を置いていってしまったせいで、残ったのは、少し浮かすことができる絨毯のようなものだけだった。

その上にただしを乗せる。

私たちはゆっくりとその場を後にした。


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