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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
ヘンタイとラグナロク

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300話

「厄介な攻撃だ!」

「だったら、防ぐなよ」

「それは無理な話しですよ」

「ただし!」

「連携もきますか!」

「じゃないと倒せないもの!」

「そっちも使えばいいだろ?」

「それができないのをわかっているのでは?」

「ああ、確かにそうだ」


俺たちは畳みかけている。

イル神は、ラグナロクのメンバーの攻撃を防ぐ際には、ブンシンスキルを使って分身で多数の攻撃を防いでみせた。

ただ、俺たちの攻撃については、一つの攻撃で防ぐようにしている。

そこからわかることは、俺たちの攻撃は分身させて、力を分散させてしまうと防ぐことが難しいということだろう。

俺とアイラの攻撃によって、イル神は少し距離を取る。

そこにバーバルが魔法を放つ。


「魔法、行くわよ。火よ、相手を焼き尽くす炎となせ、ファイアー、ファイアー、ファイアー」


三つの炎がイル神に向かっていく。

ただ、その炎たちはイル神に近づいていき途中で消えてしまう。

それでもバーバルは、どの場所で魔法が消えたのかをしっかりと見ていた。


「ふふふ、次は楽しいことができそうね。火よ、相手を焼き尽くす炎となせ、ファイアー、ファイアー」

「何度やっても無駄だけどな」

「そうなのかしら?」


バーバルはそう言うと、魔法を操る。

それによって、ムコウカスキルに入る前に炎を落とす。

地面に炎があたり、砂が巻き上がる。


「魔法のコントロール。そんな高等技術を使えるとはね」

「ふふふ、確かに魔法はあなたには届かなくても、わたくしたちには仲間がいますからね」

「ああ、その通りだ!」

「へえ、なるほどこの砂を使って姿を隠しての攻撃か」

「わかっていても、なかなか見えないだろ?」

「確かに、魔力の流れがないから余計に何も見えない」


そうイル神がいいながらも、俺の拳を躱す。

視えていないと思って攻撃をしているが、どういうことだ?

さらに数発の拳を放つが、それも避けられる。

そこで、どうやって避けているのかわかる。


「なるほど、空気を感じているのか…」

「そういうことだ。本当にいろんなスキルを学習しておくといいってことがよくわかる」


イル神がそう言うということは、空気を感じるというのも、スキルによるものなのだろう。


「風向きがわかるスキル。使いどころがないと思っていましたが、これだけで攻撃を避けられるというのは、もっていてよかったものだな」

「ちっ、これでは倒せないか」

「当たり前ですよ。神が憑依しているんですから!」


イル神はどこか余裕そうに言っている。

でも、確かにイル神が言っていることは正しい。

ガクシュウスキルによって、他人のいろいろなスキルを使えるというだけでも強い存在だが、そこに神が憑依することこによって、魔力が増えた。

それによって、できることがこれまでの比ではなくなってしまっているように思う。

でも、やっていないことで気になることもある。

それは、ブンシンスキルからイルが一人になることで能力を上げるというものだ。

あれを使うには、イルであれば少し時間がかかっていた。

でも、神が憑依している今であれば、すぐに行えるはずだと思っていたが、そうはならないということは何かがあるというのか?

もしくは、できない理由があるとかか?


「どっちにしても、このままじゃ埒が明かないな」


俺はシバルに視線を送る。

俺の視線でシバルは何かを感じてくれたのだろう、そのシバルと入れ替わる形で俺はメイさんの元に向かう。

メイさんは茫然とした様子で、俺たちの戦いを見ていた。

近づいてきた俺に対しても、どこか無気力なように言葉を口にする。


「ただしさん…」

「かなり浮かない顔をしてるな」

「それは、わたしの…わたしたちの攻撃が意味のないものになってしまいましたから…」

「そうなのか?」

「はい。ただしさんも見てましたでしょ?わたしが秘密兵器として用意したこれですら、神には無力だということが…」

「確かに、意味がなかったな」

「だから、わたしには、わたしたちにはもう無理なんです。わたしたちは神を倒すことだけを目標にしていたのですから…神を倒すことができないとなった今はもう、それが…」

「それがどうした?」

「え?」

「一回うまくいかなかっただけだろ?」

「それはそうですが、わたしたちはラグナロクとして、最善を尽くしたんです。でも、うまくいかなったのですよ!」

「知ってる。でも、今は俺たちがいるだろ?」

「!」


メイさんは驚いたように俺のことを見る。


「それはでも、手を貸していただけるということですか?」

「ああ、俺だってあいつにはちゃんとこの拳を届けたいからな」

「そうですか…」

「そうだ。だから、こんなところでボーっとしている暇はないからな」

「そうですね」


俺が手を差し出すと、メイさんはその手をしっかりと握って立ち上がる。


「ふふ、なんだか変な感じですね」

「どういうことだ?」

「だって、わたしたちとは敵対していたはずなのですから…」

「そんなことはないからな。俺は綺麗な女性にはかなり優しいからな」

「確かにそうですね」


メイさんはそう言うと、イル神を見据える。

俺たちのやり取りを少し遠くから見ていたピエロやザンたちも近寄ってくる。


「どうなっても、わたくしめたちがやることは変わりませんからねえ」

「そういうことだな」

「わたしの正義を叶えることに必要なことだとはわかっています」

「ま、あたいだって、こういうときは役に立ってみせるからな」


四人の言葉を聞いて、メイさんは頷く。


「じゃあ、行きましょう!」


その言葉とともに、俺がイル神に向かっていったところでゲートに吸い込まれる。

イル神が作ったものではない。

このゲートについては、エルが作ったもの。

それがわかっていたからこそよけなかったのだが、それは入ったところですぐ後ろに出てくるというループをするようにできているものだった。

俺は足を止める。


「何をするんだよ。今はかなりいいところだっただろ?」

「すみませんねえ。わたくしめが必要だと思って止めさせてもらいましたのですねえ」

「ピエロか…」

「はい。聞いてから行動しないといけませんからねえ…」

「何をだ?」

「あの神をどうやって倒すのかをねえ」


ピエロはそう言う。

確かにそうだ。

俺から協力するからどうだと言ったのだ。

それは、倒せるという確証があったからだと思われるだろう。

ただ、俺にそういうものはない。

というか、ほとんど考えていなかった。

それでも、ピエロは俺のことを見ている。

だから、俺は言った。


「そうだな…ここからは…」


成り行きに任せて、俺はうまくいくかもわからないことを言葉にしたのだった。


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