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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
パーティーにヘンタイが増えた

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30話

「おはよ、ただし」

「ただしかおはよう。昨日はすごかったな」

「昨日?」

「おほん。まあさっさと朝食を食べて、依頼を受けに行こうぜ」

「そう?」


シバルが変なことを言うせいで、危ない雰囲気になりかけたが、なんとか軌道修正できたようだ。

こういうときに思うのが、アイラがケッペキスキルでよかったということだ。

昨日はすごかったなんてことを、女性が男性に言ってしまったら普通であればそういうことを考えるが、ケッペキだということで、そういうことがわからないのだろう。

ある意味でよかったとしかいいようがない。

まずは腹ごしらえをしてから、考えるかな。

そして、俺たちは簡単に朝食を済ませて、ギルドに向かった。


「あ、アイラ様!」

「ジル。そんなに勢いよく話をされても困るんだけど」

「ですが、あの騒ぎを収めた英雄様ですから」

「そ、そう?」

「はい」


嬉しそうにニコニコと笑う受付嬢のジルはアイラと楽しそうにしている。

いや、朝からいいものを見れているなあと思いながらも、俺とシバルは依頼書を見ていた。


「何かいいものがあるかシバル?」

「そうですね。こちらなどどうでしょうか?」


そこに書かれている内容のものを…

いや、読めん。


「シバル。これはなんて書かれているんだ?」

「そうですね。これはガマガエルを討伐するという依頼ですね」

「ほうほう…でもこれランク高くないか?俺たちのランクで受けられるものなのか?」

「それは、ボクたちが昨日の戦いで活躍したので、現在騎士団長であったジークが受けられる一つ下のランクまでであれば依頼を受けられることになったんですよ」

「そうなのか?」


いいのか悪いのかわからないが、昨日の活躍によってそんなことになっていたらしい。

驚きながらそう口にしたのは、俺が何もしていないことになっているからだ。

気絶をしていたいということになっている。

実はあのときパンツを被ったヘンタイなんです。

なんてことは口が裂けても言うことはできない。

みたいなことになってしまえば、ヘンタイな俺はケッペキスキルをもったアイラに殺されてしまうかもしれないからだ。

壁を作り出す魔法で、体を押しつぶされないようにだけは注意が必要だ。

一人でうんうんと考えながらも、シバルから渡された依頼の内容を確認する。

ガマガエルの討伐という依頼だ。

出てくるとされている場所は…


「石山か…」

「はい、ここからですと、少し遠いので泊まりがけになりそうですね」

「なるほど」


場所がどこかわからないので、どれくらいの距離にその岩山があるのかわからないが、思ってしまった。

口には出さなかったけれど、そうなれば美女二人とお泊まり旅かと…

異世界にこないことにはまず起こらないようなイベントだ。

童貞の俺には刺激の強いイベントと言えるだろう。

必要なものを揃えないといけないな…

そんなことを考えながらも、気になることがあった。


「泊まりがけというのはわかるんだが、宿泊道具はどうするんだ?」

「それについては一つボクに考えがあって」


その言葉とともにシバルが指さした方向にあったものは、何だろうか?

一つの箱だった。

それもどう見ても、荷馬車でないと乗らないようなものだ。


「えっと、いい考えとは?もしかしなくても、これを荷馬車で引くってことか?」

「そうだよ!」

「そ、そうか…」


自信満々に言ってきたから、どんなことなのかと思ったけど、そんなことだとは思わなかった俺は、さすがに口ごもる。

なんだろうか?

ここはドMということを考えて怒ったほうがいいのか?

それとも真剣にやっているのか悩むところだった。

そうこうしているうちに、アイラが話から戻ってくると、大きな荷物を見て驚いていた。


「これ?何?」

「アイラ様。これは、今回の依頼で使う宿泊道具です」

「いや、大きすぎるでしょ」

「で、ですが、男性と同じ空間にいるということは聖女として…」

「もう聖女じゃないんだし…というかかなり前に聖女じゃなくなったでしょ?」

「ですが…」

「まあいいわ、それならどんな依頼を受けたか見せなさい」

「わかりました」


そうしてシバルはアイラに依頼書を渡すが、その顔を少し高揚しているのか赤くなっていることを俺は見逃さなかった。

これは、怒られて少しは喜んでいるんだな。

そう考えながらも、アイラが依頼書を読み終えるのを待つ。

すぐに読んだところで、頭を抱えた。


「はあああーー…」

「アイラ様?」

「私がため息をつく理由がわからない?」

「そうですね…」

「そっか、そっか、それで、この宿泊に使う荷物はどういうものなの?」


アイラに説明を求められて、シバルは嬉しそうに目を輝かせて説明を始める。

ただ、アイラは俺と同じで褒めるわけではなかった。


「はい。これは小型のウッドハウスというものでして、組み立てることによって小型の家になります。」

「うん、それで組み立てた後はどうやってもって帰るの?」

「そ、それは…」

「後、もっていく人は何人必要なの?」

「えっと、えっと…これを届けてもらったのは、五人くらいです」

「そうなんだ…でも、こんなものいつの間に用意したのよ」

「その依頼を受ける際に、宿泊道具が必要だと聞かれたので、はいと答えまして、テントでよろしいですかと聞かれたので、アイラ様がいるので家のほうがいいですと伝えたら、こうなってしまったということですね」

「なるほど…本当に意味がわからないわね」

「ただし…ボクは間違っているのかな?」

「いや、それはその…」


急にこちらに話を振られても困る。

それに怒られてしょんぼりしていないといけないはずの顔が少し緩んでいるのを見逃さない。

完全にMの本性が出ていやがるな。

昨日のことがあってから、俺にわかるようにこちらにわかるように視線を向けてきているのは、スキルとしてなのか、シバル自身がドMだからそうなのかわからないけれど、アイラに気づかれていないからいいものの、気づかれてしまうと面倒くさくなるであろうということをわかっていない。

ただ、アイラはアイラでこちらを睨むようにして見てくる。

俺だって見たときにおかしいと思ったんだよ!

それでもすぐに言えなかったんだよ。

だからといって、ここで説明を先延ばしにはできないだろう。

アイラの視線でわかってはいる。

これはあれだ。

しっかりと言えってことなのだろう。

シバルが喜んでしまうことは必然といえども、アイラをこれ以上怒らせたくはないので、俺もしっかりと言うことにする。


「間違っているというか、何かあって運送している人が裏切ったり、逃げたりしたら運べなくなるよね」

「な…そ、その考えはありませんでした」

「それに、組み立てる時間も考えれば、時間をはやめて宿泊場所を確保しないといけない」

「むむ…」

「あと、目立つから、そこを依頼にかかれたモンスターに狙われる可能性もある」

「くう…」


怒られたことが嬉しそうではあるが、それでもさすがに悔しそうだ。

俺が叱ったことにより、アイラも満足気に笑うとシバルに言う。


「シバル、わかった?これで必要ないってことが」

「はい…」

「それに、私も泊まりで冒険をするってことになったら、しっかりと野営して、木の枕で寝る。なんてことをしたいんだから」

「そ、そうか」


次に目をキラキラと輝かせてそう言うアイラに、俺は苦笑いしか返せない。

だって仕方ないのだ。

木なんかを枕にしてしまえば、朝起きたときに首がいってしまうことを覚悟しないといけないからだ。

それとは対照的に、シバルはしょんぼりと肩を落とすと、返せるように声をかけてきますと言って、受付のほうに向かう。

そして、今から行く依頼が野営をするなら近くに女性が寝るという状況を少し頭で考えていたときだった。


【これはあれね、寝てるときにどさくさに紛れて襲っても大丈夫ってことね】

「(そ、そんなことないだろ)」

【いいえ、同じ女だからわかるのよ】

「(なら聞くが、スターは経験豊富なのか?)」

【何を言ってるのよ、あたしは神なんだから、あるわけないでしょ】

「(だったら、わからないだろ普通に考えて…)」

【だから当たって砕ければわかるわよ】

「(どうして、最初から玉砕覚悟でやらないといけないんだよ)」

【それが、ヘンタイというものの定めよ】

「(そんな定めいらないからな)」

【なによー、神様のいうことが聞けないの?】

「(自称な)」

【こなくそー】


いい加減鬱陶しくなってここから無視をする。

その後も何かを言っていたようだけれど、そういうときは本当に無視に限ると思う。

あとは、依頼を受けるためにもいろいろなものをそろえることをしないといけないということだろうか。


「それで、アイラは野宿をしたいってことでいいのか?」

「そう。それこそ冒険って感じでいいと思わない?」

「いいとは思うが、野宿ってかなり硬い木を枕で寝たりできるのか?」

「それは、何事も挑戦って言葉があるからね」

「そ、そうか…」

「ボクは心配ありませんよ、こう見えても…」

「いや、シバルのことは聞いてないから大丈夫だ」

「な…でも、その雑に扱う感じ…」


こんなことでシバルが喜ぶのを見てさすがに戸惑う。


「お、おう」

「シバル、ただしを困らせないでよ」

「す、すみません、アイラ様」

「まあ、別に困ってはないんだが…」


野宿をするという大変さを理解しているのだろうか?

元社畜として、インドアのことしかしたことがなかったので、そういうことの情報も実際はこれまで本や、ネットで検索した内容だ。

だから実際にはかなりそういうものに疎い俺なので、その辛さがどれだけあるのかもわからない。

それに野宿するということは料理もできないといけないし…

あー、カップラーメンとか便利なものがこの世界にもないのだろうか?

そんなことを考えてしまう。

もしくは高速で移動できる手段とか…

簡単に言うと車…

ただ時間に追われる車の運転というものもしたくないのは事実…

あー、社畜としての嬉しくない思い出が頭をよぎる。

考えないようにしよう。

特に今は、可愛い女性たちと冒険ができているのだからな。

そう考えながらも、依頼はこれに決定したようで、アイラとシバルは受付に依頼書をもっていき、俺は近くで待機する。

そうして俺たちがゆっくりと時間を過ごしていたとき…

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