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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
ヘンタイとラグナロク

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297話

「じゃあ、行くぞ!」

「ああ、こい!」


俺は、エメからもらったパンツを被ってイルの中に入った神と戦う。

お互いに拳を握りしめて殴りあう。

これまでの敵と違い、武器を持っていない敵と戦うということがほとんどなかったからだ。

だから、この戦いではいつもと違う感じをもってしまう。

殴り合いの戦い。

それだけで、これまでとは全く違ったものになるからだった。

数発拳を交えたところで、男は言う。


「なるほど、その力はそういうことか」

「何を納得してるんだよ」

「まあ、いいだろう?我たちもいろいろあるんだからな。その力の源をようやく理解したってことだからな」

「力の源ねえ。ただのヘンタイパワーだぞ!」

「確かにそうだ。そうなんだよ。それが一番の脅威になることを君たちは知らないだろ?」

「知らないな」

「そうだろうね。まあ、そこが面白いところだ!」


男はそう言ってさらに拳をぶつける。

今更ながらに、攻撃を受けた手から、血が少し流れる。


「ああ、怪我をしているのか」

「だったらどうなんだ?」

「いや、そろそろスキルでも使おうかなっておもってね」


男はそう言ってから、手を前にやった。

そして、スキルを使う。

どんなスキルを覚えているのかがわからない以上、俺は少しだけ距離を取るが、それも意味がないものだとすぐに理解した。

右手の傷口が急に開いたからだ。


「ぐう…」

「は、どうだ?」

「ちっ、傷口が開くスキルなのか?」

「そうだ。こいつの中にあるスキルの一つってところだな」

「厄介なスキルだな」

「だろう、まあ、我でないとつかいこなせないようなスキルだけどな」

「そういうもんかよ」


この男が言うってことは、イルが使ってこなかったのは魔力か何かが足りなくて使えなかったと考えるのが妥当な答えということだろう。

ということは、ここからはさらにいろいろなスキルを使ってくると考えるしかない。

傷口が開いたおかげで時間的な余裕があまりなくなってしまったな。

右手から流れる血を見ながらも、俺は拳を固める。


「そっか、この程度では無駄なことだったかな?」

「そんなことはないけどな。血が出てるから、わかるだろ?普通にいてえよ」

「そうか?それは使ってよかったということかな」

「使われる方は嫌なスキルだけどな」


そう、嫌なスキルだ。

ただ、致命的な場所に攻撃を受けなければ意味がないスキルだともいえる。

よかったのかはわからないが、腕はそこまで痛くない。

血は確かに出てはいたが、出る前から痛みはあまり変わっていない。

ただこのままでは、よくある血液が足りない状況になる可能性が高くて、このままというわけにもいかないというのも確かだった。


「さっさと決着をつけるしかないってことか」

「我に対して、そんなすぐにことを行えると思っているのか?」

「それについてはわからないな。ただ、やるしかないからな」


俺がそうして拳を固めて男に向かっていく。

その隣にメイさんが並ぶ。


「ただしさん。わたしも戦います」

「はい、よろしくお願いします」

「はい、任せてください。隙をつくってみせます。水よ、我の手に相手を切り裂く剣を作りたまえ、ウォーターブレイド」


メイさんはそう言うと、再度水の苦無を作りだす。

そして、苦無を男に向かって投げたのだが、空中で苦無は消えてしまう。


「どうして!」


驚いているメイさんに対して、俺のヘンタイ眼はそれを視ていた。

男から出される何かによって、メイさんが出した苦無が消え去ったと考えるのが普通だった。

これはムコウカスキルだろう。

ただ、このスキルをこんな風に使えていたというのだろうか?

いや、もしかしなくても、これは神が乗り移ったことによるスキルの強化だろう。

先ほどの傷口が開いたのと同じように魔力量が多くなったから使えるようになったのだろう。

じゃないと、これについては、先ほどの戦闘で使っていたはずだからだ。

でも、魔力を無効化されるとなると、メイさんの攻撃は意味がなくなる可能性があるのではないのか?

俺はそう思ってメイさんに視線を送ると、メイさんはニコッと笑う。

ああ、何かがありそうな笑みだ。

俺は少し距離をおこうとする男に詰め寄る。

そこにメイさんが再度後ろから魔法を唱える。


「水よ、我の手に相手を切り裂く剣を作りたまえ、ウォーターブレイド」


先ほど破られたはずの水の苦無を作り出す魔法。

それを見た男は言う。


「何度やっても同じことだぞ!」

「それはどうかしらね!」


メイさんは再度苦無を投げる。

ただ、それは同じようにムコウカスキルによってなくなるはずだった。


「く!普通の苦無も混ざっているとは!」

「ふふふ、メイドとして、やるべきことはしっかりとしないといけませんから!ただしさん!」

「ああ、任せろ!」


そう、水の苦無の中に、普通の苦無を混ぜることによって、相手のムコウカスキルをやり過ごしたのだった。

さすがというべきか、なんといっていいのかはわからないが、男の態勢は崩れた。

俺は握りしめていた拳をしっかりと引き絞る。


「カイセイ流、一の拳、トルネードスター」


態勢を崩した男に、拳を突き立てる。

ただ、それは何かに当たる。


「これは!」

「いいスキルだろ?ただの壁を作りだすものだよ」

「おら!」

「簡単に壊せるだろ?でも、その少しの時間で我がやりたいことが十分できるんだよ」


男が出したのは、確かにただの壁。

スキルによって作り出したと言っていたそれに、拳は一瞬勢いが緩む。

その隙を待っていたかのように、攻撃はくる。


「この手はすべてを切り裂く!」

「く!」

「「ただしさん!」」

「さあ、攻撃を受けたな!」

「ぐは!」


受けた攻撃はザンスキル。

手に纏ったそのスキルによって、胸の辺りを斬られる。

少し躱したけれど、少しの傷で、再度傷口が開く。

ダラダラと血が流れる。

視界が少しだけかすむような気もするが、俺はすぐに立ち上がった。

二人が慌てて駆け寄ってくるのを背中に感じながらも、俺は再度拳を握りしめる。


「さあさあ、どうするのかな?」


男が余裕そうに言う。

ただ、俺もそれに笑って答える。


「もちろん、俺たちが勝つ!」


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