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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
ヘンタイとラグナロク

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296話

本気を出すというイルと戦うことになっていた私たちは、その姿が急に消えたことに驚いていた。


「何が起こったのよ」

「わかりません。姿が急に消えました」

「魔力もほとんど感じなくなってるわね」


バーバルがそう言って周りを見る。

それでわかる通り、確かに魔力を感じなくなっている。

これが表すことは、イルという男はもうこの場にはいないということなのだろう。

そのことを三人とも理解したのだが、そうなると思うことはあった。

まずはどこに向かったのかということ。

これについては、アイラの中では予想はついている。

ただしのところにいるんでしょ、結局…

なんとなくわかってしまう。

だってといってしまっていいのかはわからないけれど、こういうときに何かを起こしているのはいつだってただしだ。

それを、私たちはこれまで一緒にいたのだから、わかっている。

だからこそ、ここから私たちがする行動もみんなわかっている。

三人で顔を見合わせる。

城に向かおう、そう思っていたときだった。

目の前にゲートが現れる。

私たちは警戒をするが、女性の呑気な声が聞こえる。


「お、やっぱりここにいたのか、あんたたち」


そこから出てきたのは、エルと呼ばれているエルフの女性。

私たちがそれなりに警戒しているというのに、彼女は面倒くさそうに言うだけだった。


「今から城に向かうのか?」

「そうだと言ったらどうするの?」

「やめときな。どうせ行っても誰もいないからな」

「それはどういうこと?」

「ま、あたいがちょっと違う場所にとばしちゃったからな」

「だったら、そこにあんたがそこに連れて行けばいい話しじゃない」

「確かに、あたいがそうしてもいいんだけど。一つやってほしいことがあってね」

「ふーん、私たちにそういうことが言えるんだ。別に今から力尽くでやってもいいんだけど」

「話しを聞いてからでもいいだろ?」

「それはそうだけど、変な話しなら、すぐにどこかに行くからそれは覚悟しておいてよね」

「あー、それはあたいだってわかってるよ」


そして、まあ座れよとエルに言われた私たちは、地面に腰を落ち着ける。

シバルとバーバルも私の隣に同じように座る。


「ま、話しって言うのは、ここから起こるであろうことについてだ」

「これから起こること?」

「ああ、あたいも詳しいことがわかるってわけじゃないけどな。エメから聞いたことだからな、信憑性はそれなりにあると思う」

「それなら早く教えなさいよ」

「ああ、わかってる。これから起こることは、一つの可能性だ」

「可能性?必然的な未来じゃなくて?」

「いや、違う。それはあんたの幼馴染のミライのことだろ?」

「そうよ。ミライが視た未来は、変わらない。はずのものよ。実際に、私と一緒にいたときには、その未来は変わることがなかったしね」

「それは優秀な予言者だな」

「ま、スキルがそれだったらからね、ミライは」

「確かにそうだな。って、結局本題から外れたけどな。あたいが言いたいのは、そうじゃない。未来についてだな」

「そうよ。未来の中の一つって話しだったけど、それが何なのよ」

「それは、あいつのことについてだ」

「あいつ?ただしのこと?」

「そうだ。あいつがこのままだと危険ってことだな」

「危険?確かに危険なのは、いつものことじゃないの?」

「そうだな。あいつのことをよく知ってる、アイラたちなら、あいつのことなんか心配はいらないかもしれないことなのかもな」

「何?何が言いたいの?」

「いや、その予感が、あいつがやられるかもってことだからな。一応伝えておこうと思ってな」

「どういうこと、それじゃあただしがどうにかなっちゃうみたいじゃない!」

「だから、そうなる可能性があるって言ってるだろ?」

「なんですって!」


私がヒートアップしそうになったときに、シバルが横からすっと立ち上がるとエルに話しをしてくれる。


「エルさん。その話しはどういう状況でなったかわかりますか?」

「そうだな。全員がいる場でなっていたな」

「それは、ボクたちが全員そろっているから起こるのではないかということですか?」

「たぶんな、そういうことじゃないのか?」

「そうですね。もしかすれば、そんなこともあり得るのかもしれませんね」

「だろう?だからな、行く前に話しをしておきたかったんだ。それでも行くかってことをな」


エルはそう言ってから立ち上がる。

ただ、その手をバーバルは颯爽と掴む。


「ふふふ、わたくしはただしの元に向かいますわ」

「バーバル?」

「ふふふ、だって、ただしですからね。わたくしたちが行こうとも、行かなくても、あの人はなんとかしてくれると思っています」

「それは、そうだけど…万が一のこともあるでしょ?」

「確かにそうですけど、そうなったときに近くにいられないのは、もっと嫌なことじゃないのかしら?」

「うぐ、確かにそうね…」


迷うことなく、バーバルにそう言われて、私は正論だと思ってしまった。

確かにそうだった。

私たちもただしと一緒にいる時間が長いからこそ、それをわかっている。

それにだ。

何かあっても、ただしがもっているスキルはヘンタイスキルというもの。

だったら、私たちが近くにいる方がヘンタイと思ってもらえるただしは強くなれるというもの。

そう、悩む必要なんか、私たちにはない。


「私も行くわよ。それに、そんなところが想像できないしね」

「ちっ、少しは悩めよ」

「うるさいわね。悩んでる時間も結局は意味ないものなのよ」

「それはそうかもしれないけどな。じゃあ、行くか!」


結局変に話しを聞いても、悩んでも…

何もかもが必要ない。

ただしのことを好きになったのだから、何かがあれば近くにいたいと思うのは、今更なことだと再度自分に言い聞かせる。

ただしなら、絶対に大丈夫だから…

そして、私たちはゲートをくぐる。

ただ、そこで見たのは、吹っ飛んでいくただしの姿だった。


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