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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
ヘンタイとラグナロク

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288話

「俺に、俺にガーターストッキングをください」

「えっと、ただしさん。開口一番にそういうことを言われましても、わたしが素直にあげると思っていますか?」

「ダメですかね?」


俺は真剣にメイさんに言っていた。

どうしてこうなったのか?

まあ、ここまでのことは簡単なことだった。

城へ向かって走った俺は、そのままの勢いで、中に入った。

ラグナロクの下っ端なのかはわからないが、城内にはそれなりの人がいたが、そこはヘンタイスキルによって身体能力が上がった俺だ。

夜ということもあって、すべての人に見つかることもなく王の間へとやってきた。

メイさんが王の間にいるということを、俺はわかっていた。

それは、ヘンタイ眼だから視えているというのもあったがそれだけじゃなく、メイさんがやったことだろう。

王の間へと続く道にかなりの数の兵士がいたからだった。

まるで、ここまで来るなら倒してこいといわんばかりではあったが、俺はそんなやつらに気づかれることもなく王の間までたどり着いていた。

開けるときに、俺がやることは決まっていた。

音を立てないようにしてゆっくりと扉を開ける。

予想通りというべきか、部屋にいるのはメイさんだけだった。

俺を見てほほ笑むメイさんに近づいていくと俺は騎士のように膝をついて、先ほどの言葉を言っていたのだ。


「ダメと言いますか、わたしのガーターストッキングがそんなに欲しいのですか?」

「そうです。あのときのように…」

「ふふ、確かにあのときは、面白そうな人がいると思ってあげましたが、今回は敵同士なんですよ」

「わかってます、それでも、その黒い布が俺には気になって仕方ないのです」


俺はただ、メイさんの目を見て、真剣に言う。

さすがのメイさんも俺の真剣な目を見て、何かを思ったのだろう。


「そうですね、いいでしょう」


そう言ってくれる。

俺は、心の中でガッツポーズをとりながらも、平静を装って、再度お辞儀をする。


「ありがとうございます」

「その真剣さを見込みましていいと言っただけですよ」

「さすがは女神」

「女神ではありませんよ。メイドです。メイドとして人の頼みを聞くのは当たり前のことですから」

「そういうものですか?」

「はい。わたしのスキルのためにもなりますから」

「では…」


そして俺は近づいていく。

メイさんから見えるおみ足に近づいていく。

これで、俺はさらなるヘンタイスキルの高みへと近づける。

そう思っていたところで、部屋に声が響く。


「ちょっと、待ってください」


俺とメイさんがせっかくいい雰囲気になっていたというのにそんな声が響くのだ。

そこにいたのは、エメとエル。

一瞬ズキッと頭が痛んだ気がしたが、突然の乱入者に俺は声をかける。


「二人が、どうしてこんなところにいるんだ?」

「そんなの、あんたが一人でここに来るってわかったからに決まってるだろ?」

「そうなのか?エメは?」

「わたしは、そうですね。ラグナロクの長である彼女にお話しをしたくて」


どうやら、エメはメイさんに用事があるらしい。

だけど、ここについては俺が先約なのだから、譲るわけにはいかなかった。


「俺の用事が終わってからなら、いいと思うが…」

「はい、メイドとして、優先事項がありますから、こちらの用事が終わってからでも大丈夫ですか?」


メイさんがそう言ってくれるが、エメは首を振った。


「ダメです。そんなことをしてしまえば、ただしさんがすべてを終わらせてしまいますから」

「なるほど。未来を視る魔法で、この後のことなど予想できているということですね」

「そうです。わたしの視た未来にさせるわけにはいきませんから…」


エメがそう言う。

俺は何を言ってるんだと疑問になった。

ヘンタイスキルを使うために、俺が必要となるものを欲するために言っただけだというのに…

ただ、頭は痛い。

この部屋に入ったときからなのか、それとも…

思考が思い通りに動いていないことに疑問を覚えながらも、俺はここからどうしていいのかわからなくなる。

何をしていいのかわからない。

そんな俺と違って、二人はさらに話をする。


「それをするということは、すべてをさらけ出すということなんですね」

「はい。メイドとして、この世界を変えてくれるであろう存在に尽くすのは当たり前のことですからね」

「最初からそういうつもりだったんですか?」

「ふふ、そういうつもりではありませんでした。でも、ただしさんとその仲間の存在を知って、わたしはそれが最善のことだとわかりましたから…」

「特別なスキルのことですか」

「はい。メイドとして、ラグナロクの長として、ただしさんにすべてを託すのは間違っていますでしょうか?」

「間違ってる。わたしは、そう思う」

「それでは、どちらがただしさんに相応しいのか、決めるしかありませんね」

「はい…と言いたいですが、わたしだけがただしさんの隣にいるべきではないですから」

「そうですか…メイドとして、ご主人様になってもらう方の邪魔は排除させていただきます」

「ご主人様の意見も聞こうとしないあなたに、わたしは負けない」


そうして、どういうわけか二人の戦いが始まる。

エメが手を目にやることで、いつの間にか目は精霊の眼へと変化する。


「エル!」

「なんだよ」

「ただしさんを、ここから連れ出してください」

「エル!」

「なんだよ」

「そんなことをしてはいけませんよ」


エメとメイさん二人の言葉に、エルは困惑する。

エルは訳が分からなかった。

ここにエメを連れてきたのは、話しをしにきただけだと思っていたのに、どうしてこんなことになるのか、状況がわからなかった。

ただ、エルだってわかっている。

最初に部屋に入るときから、いや…

昨日からエンドの様子がおかしいということに…


「ああー、もう…こういう頭を使うやつは嫌いなんだよ」


その言葉とともに、エメとメイさんを巻き込む形でゲートが地面に広がる。


「く…」

「さすがはエルですね」


なんとか逃げ出そうとするメイさんに対してエメは、それを喜んで受けいれる。

そして、二人の姿はゲートにのみこまれた。

俺はそれを見ているしかできなかった。

ゲートが閉じて、エルと二人きりになる。

頭の痛みは少し収まったと思ったが、それだけだった。

俺の体は勝手に動いていた。

そう、エルの体を抱きしめたのだ。


「は、お前、くわ、ふえい…」


言葉にならないことを言うエルに対して、俺は胸に顔をうずめるようにしてしまう。

ただ、そこにあった感触は…


「あ、硬い」

「おま、ふざけんなーーーーーーー」

「ふべら!」


素直に口にした俺は殴り飛ばされて、そのままゲートに吸い込まれていた。


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