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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
ヘンタイとラグナロク

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286話

「レメのこと、わかってたんだ」

「はい。わたしは魔法で、それを視ることができますから」

「なるほどね。だから、最初からただしの見た目をしてるレメに近づいてきたってわけなんだ」

「はい。ということですよ、エル」

「いや、あたいにそんなことを言われても、わからないんだよ」

「そうですか?」

「そうだよ。エメ…あんた、ただしと会ってから、性格変わったのか?」

「そんなことはありませんよ。わたしはわたしのままです。確かに外に出てから、楽しいのは楽しいですけど」


エメはそう言って笑う。

それを視て、エルはなんとなく変わらないと思ってしまう。

エメは、あの後にラグナロクから保護されたのだけれど、いつの間にかどこかに消えていた。

エルは、そんなエメを最初は探したりしていたが、すぐにエメが逃げようと思えばどこにでも行けることを考えて探せなくなった。

エルフの里というしがらみがなくなったエメは、どこにでも行ってしまうからだった。

特別な眼を持ち、無尽蔵な魔力を持っている彼女を止められることはできなかった。

それで、このタイミングで、会うことになる。

魔法によって、未来を視ていたからこそできることだというのを、エルはわかっていた。


「それじゃ、あたいはエメにやられたってことなのか」

「やられたって、わたしは何かをしたというわけではありませんよ」

「確かにそうだな。でも、あいつがいないんじゃ、あたいもここから離れるからな」


そう言って、ゲートを作ろうとしたエルの手をレメが掴む。


「待って、レメを連れてって!」

「どうして、あたいが連れていかないといけないんだ?」

「それは、兄さんに会うためです」

「あー、そういうことか…だったら余計に連れていくわけにはいかないな」

「どうしてですか?」

「ピエロはあんたに会いたくないと思ってるからな」

「でも、レメは兄さんに会うために、ここにやってきたのに…」

「だったら、あんたもわかるだろ、そのピエロの考えをな」

「わかってる。わかってるけど、それでも話をしたいの」

「断ったのに?」


その言葉を言われて、レメは言葉に詰まる。

それは、エルに言われた通り、レメは兄さんたちの誘いを断ったからだった。

ただしたちが国を回っていろいろなことをやっている間に、レメも世界のこと、ラグナロクのことを調べた。

そこで、知ったことを、ラグナロクのメンバーである姉のメイに問い詰めたことによって、ラグナロクのメンバーへと誘われることになった。

ただ、レメはその誘いを断った。

だけど、そのことを知っているのは、レメはピエロだけだと思っていた。

だって、話しをしたのが、ピエロだったからだ。

それなのに、エルは知っている。

そのことで、ピエロにとってエルがどれほど気を許している存在なのかということがわかってしまう。

でも、だからこそレメは引き下がれなかった。


「断った。だからこそ、レメは会わないといけないの」

「ふーん、じゃあ会ってどういうことを言うつもりなんだ?」

「もちろん、レメの配下になりなさいよ」

「ぷは!なんだ、そんな面白いことをあんたは言うつもりなのかよ」

「悪い?」

「いいや、それだったらあんたを連れて行ってもいいかもな。あたいもあいつに困った顔をさせてみたいしな」

「だったら、わたしもいいかな?」

「エメもかよ」

「うん、わたしはね。お姉さんの方に用があるからね」


そう言って笑うエメを見て、エルは悪寒が走るのがわかった。

どこか有無を言わせないようなその雰囲気に、エルは思わずうなずく。


「じゃあ、連れてってやるけど、あたいは後ろで見てるだけだからな」

「それで大丈夫よ」

「逆に手を出したらダメだからね、エル」


エメにそう言われて、少し図星を突かれたエルは言葉に詰まりながらも、ゲートを発動する。

このゲートによって、リベルタスの城へと向かう。

最初の予定とは確かに違ったことにはなっているが、しょうがないことだよねとエルは自分に言い聞かせながら、城へと向かった。


「おや、これはこれは、予想外の人物が来ましたねえ」

「兄さん…」


そこにいたのは、ピエロだ。

レメに兄と言われたというのに、ピエロは芝居のように手を広げると首を振る。


「わたくしめにそんなことを言われても、わたくしめには妹はもういませんけどねえ」

「そういうことね。だったら言うけどね。兄さん…レメの下につきなさい」

「く、くくく…なるほど、なるほどねえ…それは、そうきましたか」

「何かおかしい?」

「いいえ、そんな面白いことを言われると思っていませんでしたからねえ」

「そうなの?でも、レメは本気だよ」

「そうですか、そうですか…」

「答えはどうなの?」

「答えですか、今はまだ言えませんねえ。わたくしめも聞きたいことがありますからねえ」


そう言ってから、ピエロはエルに向き直る。


「この状況を説明しろってことか?」

「ええ、もちろんそうですよねえ」

「嫌だ。あたいだって、ラグナロクと一緒にいる理由はあたいの利益のためだって言ってるだろ?」

「それはわたくしめだって同じですよ」

「だったら、あたいがこの状況を楽しんでるだけだってことはわかるだろ?」

「そうですねえ、わかりますねえ」

「話しは終わった?」

「すみませんねえ。答えはいいえですからねえ」

「そう…」

「断ったら、こうなるんですねえ」

「仕方ないでしょ、レメだってしたくはないけどね」

「それなのに、わたくしめに武器を見せるんですねえ」

「こうしないと、レメの言葉を聞いてくれないからね、兄さんは…」

「確かに、そうなのかもしれませんねえ」


そう言葉にして、ピエロも構える。

帽子を手にとって、何かマジックでもするのではと思わせる姿はまさしく道化師。

それに対して、レメは構えだけをとる。


「そんな構えだけで何ができるんですかねえ」

「前までのレメならそうかもね。でも、今のレメは違うから」

「そうなんですねえ」

「じゃあ、勝ったらレメの下についてもらうってことでいいの?」

「仕方ないですねえ。妹の頼みならですねえ」


そして、二人の戦いが始まった。

そのタイミングでエメはエルに声をかける。


「わたしは今のタイミングで、連れて行ってくださいね」

「わかってるよ」


二人は城の奥へと向かっていく。


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