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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
ヘンタイとラグナロク

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280話

「なんで、私じゃないの?」

「え?簡単なことだろ、未来しか視えないミライと、スキルで他のことも少しは可能でさらには特別な眼をもつエメ。どっちに助けてほしいかなんかわかってることだろ?」

「く…そんな…こう見えても国のことを任せてここまで来たのに。未来だと、助けに来たのは私だけだったのに」


そんなことを言うミライにエメは頭を下げる。


「すみません。わたしも来てしまって…」

「くう、この余裕。負けてる!」


ミライは早速というべきか、負け宣言をしていた。

急に登場した二人に俺は驚くというよりも、何か違うことが起きそうに思ってしまう。

ただ、二人とも未来を視ることができるという点では、共通しているのかもしれないが、俺がすぐにエメの方に駆け寄ってしまったために、ミライがどこかいじけているという感じだ。

だって仕方ない。

さっきの言葉の通り、できることが違うからだ。

その中でも、戦闘ができることはないミライと戦闘もできるエメであればエメを選ぶのは必然だった。

そもそもだ…


「ミライはどうやってここまで来たんだ?」

「決まってるでしょ、ヨチスキルで安全を確かめて来たのよ」

「エメは?」

「わたしはその、魔法とこの眼でモンスターをやっつけてきました」

「はい、エメの勝ち!」

「ぐは!」


話しを聞いた俺は、すぐにエメの手を持ち上げる。

そして大ダメージを受けるミライ。

まあ、仕方ないことだ。

エメは照れながらも、ミライに手を差し伸べて言う。


「えっと、わたしも魔法で未来を視ることは確かにできますが、詠唱に物凄く時間がかかってしまうので、ミライさんのように自由に未来を視られるのはすごいことだと思いますよ」

「そう思う?」

「はい」

「エメはいい子だね!」


そう言いながら、俺を押しのけてミライはエメに抱き着く。

二人に笑みがこぼれたタイミングで俺にも無意識に笑顔をこぼれる。

ただ、横からガンガンと足を蹴られなければもっとその笑顔に浸っていただろうと思うと、その人物に俺は少し文句を言ってしまう。


「おい、ヤミやめろって」

「なんじゃ?やめてほしいのじゃったら、そこの二人に何を見ていたのかをしっかりとおぬしの口で言うのじゃ」

「なんだと…」


そんなことは無理だとヤミが一番わかっていることだろうと口にしそうになるがやめる。

余計に火に油を注ぐことがわかっているからだ。

だって仕方ないだろう。

ミライとエメは互いにしっかりとした双丘を携えているのだ。

そんな二人が抱き着くとどうなるのか?

それは、想像をしなくても簡単なことだ。

形を変えた双丘が否が応でも俺の視界に入るのだ。

このときほどカメラがないこの世界をにくいと思ったことはない。

そうだ。

こういうときにカメラスキルで保存できていれば、俺は、俺は…

そう思うのだが、そんなものがないこの世界では、俺の願望は叶うはずがなかった。

そして、二人が抱き着きをやめないことには俺は二人から目を離すことができず余計にヤミに蹴られることにいい加減なんとかしないといけないと思った俺は、二人に声をかけた。


「えっと、いいか?」

「何?私はこのまま帰ろうかなって思うんだけど、エメと二人で」

「それはそのダメです。わたしはただしさんにしてほしいことがあってここまで来たんですから」

「そうなの?」

「はい」

「それなら、ただしはこうやると言うことを聞くわよ」


ミライはそう言いながら、エメから抱き着くのをやめると自分の胸元に指を入れる。

そして指で服を少し下げると谷間と下着がチラッと見える。

俺は吸い寄せられるにそれを見てしまうが、すぐに横に吹き飛んだ。


「ぐは!」


ただ、先ほどのチラ見によってヘンタイスキルを発動していた俺は受け身をしっかりととる。

そんな俺に詰め寄るようにしてヤミが言ってくる。


「何をガン見しておるのじゃ」

「仕方ないだろ、男の性なんだからな」

「だからってわらわのときと全く行動が違うのがイラっとくるのじゃ」

「そんなことを言われても仕方ないだろ、そういうのは時の運だっていうしな」

「時の運で、胸の大きさを語るでないのじゃ」

「確かに時の運じゃないな。その胸が出来上がるのはな…」

「余計にわらわのことをバカにしておるのじゃな。よいじゃろう、わらわだけ飛んでどこかに行くのじゃ」


そしてヤミはそんなことを言いながらも、姿を小さなドラゴンへと変えると飛び立とうとするのを見ながら声をかける。


「そのまま飛び立ってちゃんとどこかに迎えるのか?」

「ゔ、なのじゃ」

「ふはは!この状況だ。俺が少しふざけたところでヤミ!お前は逃げられないんだよ!」


俺は勝ち誇ったようにそう言ったのだけれど、そんなヤミにミライは近づく。


「じゃあ、私が一緒に行こうかな?」

「な、ミライ…裏切るのか?」

「それではわたしは、ただしさんと一緒に行きましょうか?」

「うう…俺の味方はエメだけだよ」

「そう言ってもらえるのは嬉しいんですけど」


ミライはヤミにつき、俺にはエメがつく。

さっきまでの、協力してという感じではなくなり俺は考える。

どういう状況になってるんだこれはと…

ただ、俺の男としての性がすべての元凶だと言ってしまえば、そこまでのことなので仕方ないと割り切るしかないのかもしれないが…

お互いに見合う。

常時未来を視ることができるミライと、魔力がほとんど回復してドラゴンとして空を飛んだところで魔力なんかが全く切れないだろうヤミ。

まあ、普通だと負ける未来しか視えない。


「じゃあ、先に行くのじゃ」

「ええ!ここからは競争だからね」

「ああ!」


俺は返事をする。

そして、ヤミの背中に乗ったミライが飛び立ったのを見たところで体に魔力を通したのだった。

魔力を浴びた体は、元の姿へと戻っていく。


「がは、ごほ…」

「大丈夫ですか?」


思わずむせるレメにエメは普通に駆け寄る。


「へえ、レメのことを見ても驚かないんだ?」


さすがは、かなりの魔力を持った少女と聞いていただけはあった。

今回のこのヘンシンスキルの進化した技も、魔力といつの間にか暗闇に輝いている、その瞳で見破られていたと考えるのが普通だろう。

レメはそう思っていたのだけれど、エメから返ってきた言葉は予想外のものだった。


「はい。ただしさんの動きはもう少し違っていますから…」

「そこで顔を赤らめられると、レメとしては複雑なんだけど」

「えっと、その…すみません」

「まあ、いいわよ」


素直に謝る彼女を見て、ただしはどれだけ女性のことを無意識に惚れさせているのだろうかと疑問になる。

ヘンタイな恰好はしているけれど、やっていることはどこか真面目で、絶対に相手を助ける。

ヘンタイなヒーロー…

真逆な存在に思わず笑いそうになるのをなんとか我慢しながらも、ここからやるべきことを思い出す。

ただしがあのときに言っていたことを、本当はただしがこうなるものをレメがここに来たいがために無理やり入れ替わったのだから…

身構える、そのタイミングで目の前に黒い穴が出現したのだった。


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