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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
ヘンタイとラグナロク

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277話

「それで、どうやって行くのか決まったのじゃな?」

「ああ、決まっているそのまま突撃だ」

「なんでそうなるのじゃ!」

「いや、それがいいって判断したからな。下手に小細工しても無駄だしな」

「おぬしらはそれでよいのか?」

「まあ、ただしだしね」

「はい、ただしなら仕方ありません」

「遠回りしても、目的地が同じならそれでいいんじゃないの?」

「おぬしらは、本当にあやつらに毒されすぎなのじゃ」

「まあ、仕方ないでしょ。みんなはただしのことを信頼してるんだし…」

「くう、レメまでそっちの住人なのじゃな」


ヤミはそう言いながら、泣くような仕草をする。

だからといって、どうすることもできないが…

そもそも、こうなることは前の話し合いで決まったのだから仕方ない。

というのもだ…

リベルタスの現状を考えると、下手に小細工をするよりも正面から中心に入る方が楽だと思ったからだ。

逆に小細工をする方が、目立ってしまって後々面倒なことになることが目に見えているからだ。

これまでのことを考えると余計にそんな気がするというのは、タリスさんたちがいたタイミングで少し話して、その結論になったのだから、こうやって正面切って行くのは仕方ないことで、今更それを変えるというのもおかしな話しだ。

あとは、言っておくと、俺たちが小細工をしても正面切っても結局目立つということに変わりはないというのも、一つの理由だと思う。

俺以外は、特徴は違っても美女ばかりなのだ。

目立たないという方が逆にあり得ないことになりそうだ。

そう思いながらも、俺は走っていく。

といっても、しっかりと後ろを向きながらというのが、俺のスキルを表している。

俺の視界に入るように、アイラとシバルが談笑しているので、中が見えるか見えないかの服のはためきを見ることができるのだ。

それだけで、童貞をこじらせた俺としては、立派なご褒美だ。

ヘンタイは、そこからしっかりとした妄想を膨らませることができるのだからな。

ヘンタイスキルを無駄に使いながらも、俺は気配をうまく読むことで、石や木などを見ないでも、避けていく。


「つくづく普通のスキルのただしを見てみたいわね」

「はい、どれほどの強さになるんでしょうか?」

「本当にね」


そんな俺を見て、アイラとシバルがそう言ってくれるが、俺としてはヘンタイだからこれだけのことができているのではないかと思ってしまう。

元の世界で、あの過去がありながらも、その後は女性とどう接していいのかもわからず、特に下着姿の女性を無意識に避けるようにして、そういうイベントすらも起こさないように徹底していた。

だからこそ、俺は魔法使い一歩手前まで童貞を貫くことができたのだ。

まあ、今となってはヘンタイとして割り切ることができたのだから、この世界に来てよかったのかもしれない。

ただ…

俺はこの先のことについて、神様であるスターに声をかけて助言をもらおうと思ったのだが…

返ってきたのは無言だった。

どういうことなんだと、思いはしたが、まあ無言なのはこれまでもあったことなので、前のように最後に何かを言い残していくというものじゃなかったからあまり心配はしていない。

叶がどうしてかいなくなったことも考えると、スターとそれを匿っていた神様というのが、どこかに身を隠していて、話しをできないというのがいつものパターンだからだ。

だから、時がくれば話しができるタイミングがまたやってくるだろう。

そう納得していた。

それに、今の俺のやらないといけないことは別のことだからな。

ラグナロクと話しをするのか戦うことになるのか…

正直なところで言うと、どうなるのかはわからない。

それも含めて、リベルタスへ向かえばわかると思っている。


「わらわは突撃だけは反対じゃったと言うのに…」


まだ不満を口にするヤミに、俺は言う。


「そんなことを言ってもな、そろそろ見えてくるぞ」


その言葉とともに大きな都市が見えてくるところで、俺は足を止めた。

最初にリベルタスに行ったときとは違う道だったので、見える角度は違っているが、都市が見える場所から一度は確認した方がいいということもあって、少しの山を越えるルートを選択したのだが、そこから見える景色は見る限りでは、俺たちが一度行ったリベルタスと違いはない。


「どう思う?」

「とくに違いは感じないけどね」

「レメがそう言うのなら、そうなんだろうな…」


リベルタスのことについて一番詳しいであろうレメがそう言うのであれば、見る程度で変わったところはないってことでいいのだろう。

ただ、そんなときにレメについて気になったことを聞いてみた。


「そういえばになるんだけどな、聞いてなかったことなんだけどな、レメはリベルタスを出て、何をしてたんだ?」

「それは、その…」


レメは言葉に詰まる。

全員が頭にハテナを浮かべる中で、俺は何をしているのかをわかっていた。

というのもだ、ここに来る前に、タリスさんとベルさんにレメのことを頼まれることになったのだ。

そのときに少し話しをした。


「レメちゃんはね、お兄ちゃんであるあの子を追いかけているのよ」

「ああ、僕たちが嫉妬するくらいには追いかけているね」

「そうね」


二人はそんなことを言う。

その追いかけている兄というのは、ピエロで間違いないだろう。

何度か話しをしたことがある俺からすれば、あんなにも性格が変わった相手のことをとは思ったが、それは言わないことにする。

俺だって人のことは全く言えないしな。

そして、二人は言ってきたのだ。


「だからね、レメをよろしく頼む」

「そうよ。うちらは、もう少し羽を伸ばしましょうか」

「ああ、ママ」


そんなことをだ。

俺は、はいともいいえとも言っていなかったのだが、返答など聞く必要を感じないと感じたのだろうか、それとも返答を聞かないことで、俺に責任を押し付けてきたのだろうか?

真相はわからなかったが、俺が何かを言う前にあの親たちは立ち去って行ったのだ。

だから、俺は言葉に詰まった瞬間に何を考えたのか理解したということだ。

まあ、そのレメのことを俺はわかっているぜという態度がアイラたちの怒りを買ったのはいうまでもなかったが…


「ちょっと、何をわかった感じでうなずいているのよ」

「やべ…」

「ほら、シバルも追いかけるのよ」

「はい」

「ふふ、楽しそうね」

「なんじゃ、楽しそうじゃ」


俺たちは騒がしくもリベルタスの都市へと入るのだった。


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