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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
ヘンタイとラグナロク

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276話

結局あれから、左右から話を永遠とされるということになり、さすがに俺は頭を抱えずにはいられなかった。

久しぶりに王としてではなくて、冒険者になることで自由となって、いろいろ話したいことが多いらしい。

だからと言ってずっと話しすぎだと思う。

そんなときに、どことなく気配を感じて俺は顔をあげた。

顔を上げたタイミングで、近づいて来ていたアイラたちと目が合う。

目が合った瞬間にヤバいという顔をする。

そして後ずさりをするのだがアイラの横にも、懐かしい顔があった。

リベルタスの王と女王の子供でありながらも、唯一ラグナロクのメンバーじゃないレメだ。

そして、タリスさんとベルさんもそんなレメに気が付いて立ち上がる。

レメもタリスさんたちに気づいた瞬間にゲッとした顔になる。


「おお、レメじゃないか!」

「ほんとね、レメちゃんじゃない」


ロックオン対象が俺じゃなくてレメに変わったことによって、俺はほくそ笑む。

レメに向かっていく二人の後ろからゆっくりとフェードアウトするようにして、俺は立ち上がると、後ろに下がろうとしたのだが、服をつかまれる。


「ただしくん?どこに行くの?」

「いえ、少しトイレに…」

「それなら、一緒に行きましょう」

「そ、それは…」


服を掴んだベルさんにそう言われて、なんとも言えない気持ちになる。

トイレに一緒に行くということは、同じトイレに入るってことですかね?

そんな歪んだ思考をしながらも、すぐに思い直す。

さすがにそんなことを考えてしまうのはまずいということに…

ここは…


「いえ、大丈夫みたいです」

「そうなの?」

「はい」

「でも、我慢は体によくないからね」

「えっと、はい」

「それじゃ、うちらも合流しましょうね」

「はい」


俺は逃れられなかったことを悔やみながらも、レメに抱き着こうとして、跳ね返されているタリスさんを見る。


「だから、急にそういうことをしないでよ」

「仕方ないだろ、パパは寂しかったんだ」

「そんなこと知らないわよ!」


二人はすぐにギャアギャアと言いあう。

微笑ましい親子だな…

そう思っていると、服を掴んでいたベルさんも、「混ざりに行こうかな」なんて口にして、二人の元へ行ってしまった。

ようやく少し解放された俺は近くにいたアイラに話かける。


「なんとか合流できたな」

「本当ね。そっちは、大変だったみたいね」

「まあ、少しな」


まさに言い合っている三人を見て、アイラも俺がどんな状態だったのか察したのだろう。

かなり優しい。

といっても、話しかけた目的はこれだけじゃないので、俺はさっさと本題に入る。


「それで、そっちは情報を手に入れたのか?」

「そうね。レメと一緒にギルドの受付の人と話をしたから、少しだけね。ただしのほうは?」

「俺は、まあ…見ての通りだ。この国の元王様と女王様に出会ったわけだからな、国のことについてはなんとなくわかったな」

「そっか…ちなみに肝心なことは?」

「それについてはわからなかったな」

「そうなんだ」


アイラが言う、肝心なことというのは、ラグナロクが何をしようとしているのかということだろう。

俺も、それを聞こうをとしたら、娘の考えていることはわからないって言われたからな。

そう言われてしまったら、さすがにそうなんですかとしか言えなかったので仕方ない。


「で、結局これはどうするのが正解なんだ?」

「私にそれを聞くの?」

「だってな…シバル?いい手はないか?」

「ボクですか?」

「ああ…」

「終わるまで待つしかないと思いますね」

「やっぱりそうだよな…」


俺は目の前で起こっている親子のやり取りに、さすがに疲れながらも成り行きを見ていると、レメが逃げ出すようにして俺に向かってくる。


「ただし、助けて!」

「いや、どうして俺に向かってくるんだよ、こういうときはアイラとかに向かっていくのが普通じゃないのか?」

「そんなの、ただしだって、レメと同じようにパパとママに絡まれた仲でしょ」

「確かに絡まれたけど、そんなので一緒になりたくないんだが!」

「仕方ないでしょ、これまで政治をしてた鬱憤がなくなったんだから、ほかの人と話しをしたくて仕方なくなってるみたいなんだから」

「それをなんとかするのが、娘であるレメの役割じゃないのか?」

「何を言ってるのよ、レメはそういうのは苦手よ」

「いや、俺だって苦手だよ」


さすがに言い返してしまいながらも、俺たちは言い合ってゼイゼイと息をきらせる。

そして目を合わせると、頷きあうと俺とレメは走りだそうとして、ベルさんに捕まったのだった。

くそ、うまくいくと思ったのに…

そう、レメを犠牲にしてでも…

それでも、逃げきれなかった俺は結局六人で、ヤミたちと合流することになった。


「なんじゃ、情報は集まったのかの?」

「いや、ちょっとな」

「何かあったのかの?」

「ちょっとな…」

「ちょっとな、ばかりじゃと、わらわには何が起こったのかわからないのじゃ」

「外を見ればわかるからな」

「なんじゃ?って、なんじゃ!」

「いろいろあってな」


ヤミが驚くのも無理もない。

だって、俺たちが帰ってきたと思ったら人が倍になっていたのだからだ。

俺だってこんなことになるとは全く思っていなかったのだから、言い訳くらいはさせてほしい。

そんなヤミを俺は三人に紹介した。


「えーっと、こちらがあのときにはいなかった仲間ですね」

「ヤミと言うのじゃ」

「え?子供?」

「何を言っておるのじゃ、わらわはこう見えても、おぬしなんかよりずっと年上なんじゃぞ」

「そうなの?」

「そうじゃ」


気に入ったのか、レメはヤミと話をする。

アイラとシバルは戻ってきてから、バーバルにこの国の状況について説明をしている。

そして、俺はというと案の定というべきか、二人に絡まれる。


「なんとなくだが、あのお嬢さんは特殊な子かな?」

「うちもそう思う。ただしくんのお仲間はそういう子が多いものね」

「わかりますか?」

「ふむ、まあ僕には詳しいことを話されても何かをできるってわけじゃないんだけどね」

「それなら、うちにはしっかりどんな子か教えてほしいな。可愛い子の秘密は気になるものね」

「ママはそんなことばかり気にしているから、ダメなんだよ」

「うん?うちにそんな口の利き方してもいいと思っているのかな?」

「いえ、その…」


すぐにタリスさんはしどろもどろになる。

あのタイミングで、そんなことを言ってしまったのだ、仕方ないというべきか自業自得というべきなのかはわからないが、これでまた解放されるだろう。

俺は一通りいじられて解放されたヤミに近づく。


「やっぱり、おぬしの近くにはまともな奴がいないのじゃ」

「そういうことを言うなよな」

「だったら、ここからリベルタスの中心まで行くまではおぬしが荷台を押すのじゃ」

「わかったよ。それじゃ、そろそろ出発に向けて準備するかな」


俺はそう口にすると、みんなを集めることにしたのだった。


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