275話
「どう?」
「わかりませんね」
「そうだよね。というか、こういうときに何をするのが正解なのかわからないよね」
「はい。何かとボクたちは、こんなことをしなくてよかったですからね」
「そうなのよね。まあ、その分いろんな経験をしてきたけど」
「はい」
私とシバルはそう口にしながら、中を見る。
といっても、何をしていいのかは正確にはわからない。
だから、ただしが言っていたことを実行することにする。
ただしが言っていたのは、ギルドに行ってみてはという話だった。
ただしはどこに行くのかと聞くと、酒場へという話をしていた。
理由は、私とシバルでは、目立ちすぎるからということだった。
私たちを心配してくれているということもあって、素直にギルドに向かったのはよかったけれど、できるのはそこまでで、その後に何をすればいいのかがわからない。
ギルドに加入するのであれば、やり方はわかるのだけれど、情報を聞き出す方法はよくわかっていない。
「でも、このままってわけにもいかないわよね」
「はい。まずは、受付の人にそれとなく聞いてみましょうか?」
「そうするしかないわね」
入口の辺りに立っていても仕方ないと思った私たちは、受付に向かって歩き出す。
何かしらはわかるだろうと、私たちは思ったからだった。
ただ、受付には先約の人がいるらしく。
その女性は、受付の人と話をしていた。
「だから、レメはこの国がどうなってるのかを教えてほしいだけなの」
「そう言われましても、こちらとしてもわかることとわからないことがありまして…」
「だったら、わかることだけでいいから教えてほしいんだけど」
「簡単なことでしたら、すぐに教えられますが…」
「それで大丈夫よ」
「では、少し別室へよろしいですか?」
「わかりました」
女性はそこで後ろを向く。
話しているときから予想をしていた私たちは手を振っておいた。
振り返った女性は、そんな私たちを見て、ギョッとした顔をする。
「えっと、アイラとシバル?」
「久しぶりね、レメ」
「お久しぶりです、レメさん」
「な、なんでこんなところにいるのよ!」
「なんでって言われてもねえ」
「はい」
「あの、どうかなさいましたか?」
私たちが会話していると、受付の女性が部屋の用意を終えたのか帰ってきた。
その受付の人に私は言っておく。
「えっと、その話、二人追加でいい?」
「はい、よろしいですが…」
受付の女性はそう言いながらも、レメに視線を送る。
レメは私たちを見てから、諦めたようにため息をつき、頷いた。
そして、三人で別室に案内された私たちは、簡単にこの国のことを聞くことができた。
「何も変わってないんだ」
「はい。国のトップは確かに変更になりましたが、実際のところはそれだけで、他のところと言いますか、国の情勢につきましては変わっていないというのが、今の現状になっています」
「いろいろありがとうね」
「いえ、少しでもお役に立てたなら、よかったです。こちらの部屋はどうされますか?」
「もう少しだけ使用できる?」
「はい、早めにお話が終わりましたので、可能ですよ。また、声をかけさせていただきますね」
「わかりました」
「では、失礼します」
受付の女性はそう言うと、部屋から出ていく。
そのタイミングで、ようやくというべきか、レメは私たちの方を向く。
「それで、結局あなたたちは何をしに来たのよ」
「それはもちろん、ラグナロクの人たちに用があってよね」
「そういうことね…」
「わかってくれた?」
「そりゃね、レメも用があるのはラグナロクだからね」
「それはそうよね」
「絶対にレメは…」
レメはそう言いながらも力強く手を握る。
私はそれを見ながらも、そうよねと思い知る。
ラグナロクのメンバーはレメ以外全員が入っているのだ。
メイさんがリベルタスの国を継いだことでそれもわかったのだろう。
だからこそ、余計に何かを感じるということだろう。
「それで、結局レメは一人で行く気なの?」
「今のところはそう思って行動してたんだけどね」
レメはそう言っているが、瞳は揺れ動いている。
一人でやったところでうまくいくとは思っていないのだろう。
「どうせなら、私たちと一緒に行かない?途中まででもいいからね」
「それは、嬉しい提案なんだけど、いいの?」
「当たり前でしょ、行く場所が同じで、知っている相手なら、行動を共にするのは当たり前じゃない?」
「そうなんだけど、レメのこともラグナロクのメンバーだとは思ったりしないの?」
「え?そうなの?」
「いや、違うんだけど…レメ以外が全員そうだから、気になったり、疑ったりしないのかなって思って…」
「そんなのね、シバル!」
「はい」
「「気にしない(しません)」」
「え?」
「だって…」
そう、私たちの仲間には魔王だったり、魔石が体の中にある変わった魔法使いだったり、そして…
一番の問題であり、いろいろおかしい存在であるヘンタイがいる。
周りの仲間が特徴的すぎることを考えると、そこに敵になるかもしれない人が仲間になったところで今更だった。
だから…
「私たちはどんなことでも乗り越えていけるからね」
「はい、ボクたちは強くなってますよね」
「当たり前よ」
「ふふ、そうみたいね」
「そうそう、だから一緒に行かないとね」
「ええ、そうね。じゃあ、よろしくね」
そうして私たちはギルドを出る。
後はただしと合流する。
時間もたっているから、あのただしだってそれなりの情報を得ているだろうからだ。
だけど、合流したところで私たちは後悔をした。
どうしてか?
だって、合流したただしが、頭を抱えてベンチに座っていたのだからだ。




