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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
ヘンタイとラグナロク

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274話

朝ご飯を食べ終えた俺たちは、準備をして、リベルタスの中心地である都市へ向かっていたのだが…


「えっと、どうしてここにお二人はいるんですか?」

「ここにいたらまずいのか?」

「そうそう、ダメなの?」

「ダメとは思いませんけど、大丈夫なのですか?」

「大丈夫だ。それに、僕と君の仲だろ?」

「どういう仲なのかは、俺にはわかりませんけどね」

「なんだと、僕はあれからいろいろあったんだからな」


そう言いながらも、男はチラリともう一人の女性を見る。

女性はどこかニヤッと笑った。

俺はなるほどなと思いながらも、二人のことをちゃんと見る。

そう、リベルタスの王である男性と同じくリベルタスの女王である二人をだ…

俺の視線に気づいたのか、王は話しかける。


「ただし君。僕たちはもうリベルタスの王ではないんだよ」

「そうそう、うちのこともベルちゃんとでも呼んでくれて大丈夫なのよ」

「それだったら、僕のことはタリス君でお願いしたいかな」

「いや、呼べるわけないだろ!」


早速無茶を言われて、さすがにツッコミを入れる。

ただ、そんな俺の反応を面白がるかのように、タリスたちは続ける。


「ええー、こう見えても、僕はただしくんとは戦友だと思ったんだけどな」

「確かに、そういうこともあったような気がしますね」

「それなのに、どうして今は他人行儀になっちゃったのさ」

「だから、今から忙しくなるのに絡んでくるから、そうなるんですよ」

「そうなの?手伝うよな、母さん」

「うんうん、うちはいつでも大歓迎だよ」


タリスさんとベルさんはそんなことを言う。

ただ、俺はどうしてこうなったのかというのを考えるので必死だった。

それでも、考えてもどうしてこうなったのかはわからない。

情報収集を始めたはずだったのに、こんなことになるとは誰も予想できない。

そう、リベルタスの王都へと入る前に、少しは情報を集めないといけないかなということで、俺たちは王都の前にあったリベルタスの町である、トウフへと来ていた。

そこで、俺は一人で、シバルとアイラは二人で、ヤミとバーバルは荷物を見てもらうという感じで、二手に分かれて情報を集めていた。

どこに行けば情報を得ることができるのか?

考えた結果は簡単なことだった。

酒場に行こうだった。

情報収集をするのであれば、酒場かギルドは鉄板なのだが、今回酒場を選んだ理由は、アイラたちが行かなさそうだったからだ。

誰から見ても綺麗な二人が酒場に入ってしまえば、酔った男に声をかけられるのは必須だ。

そうなってしまえば…

考えたくもないが、アイラがお店を吹き飛ばしてしまうのではないのかと思ってしまう。

まあ、だからといって、ここで酒場に入った俺は選択を誤ったのかもしれないのだが…

酒場に入ってすぐに俺は二人に見つかってしまったのだから…


「だから、着いてこなくてもいいですからね」

「そんな他人行儀なことを言わないでくれよ」

「そうよ。ダメなんだからね。うちらを置いていくのは許されないからね」

「そんなことを言われましても」

「あー、もうだから硬いよ。言葉遣いがね」

「ほんとにね」

「勘弁してくれ…」


見つかって、いろいろあって、すぐに酒場から出てきたというのに、二人は俺が出ていくのを見て、一緒に出てきたのだ。

ここまでされると、完全にストーカーである。

ただ、二人はかなり楽しそうにやっているので、強く怒るのも難しい。

だって、元この国の王と女王だったのだからだ。


「それで、結局ただしくんは、何をしようとしていたのかな?」


歩き出したところで、横に並んだタリスさんにそう聞かれる。

これは、答えないと逃げられないってところだろうな。

俺は諦めて話に付き合うことにした。


「情報収集を少し…」

「おお、それはもしかして、この国のことかな?」

「ええ、まあ…」

「そういうことなら、僕たちに任せたまえ。なあ、母さん」

「うん。こう見えても、この国のことなら少しは知っているからね」


笑顔で言うベルさんに、そりゃそうでしょうねと言いそうになるのをなんとか我慢する。

なんだろうか、この二人は俺のことをからかって楽しいんでいるというのだろうか?

だけど思う、ツッコんだら負けだと…

余計に二人のペースに巻き込まれてしまうのだろうと思った俺は、ここは素直に教えてもらうことにした。


「それじゃ、教えてもらいましょうか?」

「おお、それならまずはどこかに座らないか?」

「そうですね」

「だったら、あっちがいいんじゃないかしら?」


ベルさんがそう言ってベンチの方を指さす。

俺たちはベンチに腰掛けることになったのだが…

今更ながらに注目をかなり浴びていることに気づく。

会ったときから相手のペースに巻き込まれてしまって気づいていなかったが、当たり前のことだ。

だけど、今更違う場所で話しましょうと言うのも、余計に面倒なことになるのがわかっていて、俺はさっさと話しをするべく話題をふる。


「それで、リベルタスの今はどんな感じなんですか?」

「そりゃもちろん、いい感じさ」

「ちょっと、そんな説明じゃ、内政まで知っているうちたちと違ってわからないのよ」

「ああ、そうだったな。でも、ただしくんなら、この町に来ただけでわかるんじゃないのか?」

「そうですね…」


そう、俺はこの国に問題が起こっていないことに気づいていた。

よくある話ではあるが、国のトップが変われば、その国の町や都市が変わるのが普通だ。

だというのに、町に入ってからも活気は変わらずあって、この国自体が、特に変わっていないのだということがわかった。

そうなると、国のトップが変わったところで国の体制事態が変わっていないのだということがわかる。

そういうところは、あのメイさんのことだ、なんとなく理解はする。

ただ、そこで気になるのはだ…


「お二人は、何をしていることになるんですか?」

「うん?僕たちかい?」

「はい。普通は、王様って引退すると、王城の奥でゆっくりするものじゃないんですか?」

「はは、面白いことを言うな」

「いや、普通のことですよ」

「だって、僕たちのことを知っていれば、そんなことをしないことは最初からわかっているだろ?」

「そうよ、ただしくん」


二人はそう言って、俺のことを見る。

確かに、ベルさんはあのときも一緒に戦ったのだから、それは理解できる。

でもだ…


「元王様たちが、冒険者になるって、それはいいことなんですか?」

「当たり前だ!なあ、母さん」

「ええ、うちらは元冒険者だから…元に戻ったって考える方が普通なのよ」

「そうですか…」


冒険者に戻ったと言われても、雰囲気とかが違いすぎて目立ってしまっているので、大丈夫なのかと思ってしまう。

まあ、国がどうなっているのかはわかった。

後はもう一つだけ気になることを聞くしかないな。


「ほら、もう聞くことはないのかい?」


そう言ってくるタリスさんに俺は言う。


「それじゃ、後一つだけ…」

「なんでもいいぞ」

「ラグナロク…メイさんは何をしようとしてるんですか?」

「ふ…それはな…」

「はい」


タリスさんは神妙な面持ちで俺のことを見る。

これは、かなり重要なことを言うってことだろう。

俺は生唾を飲み込んだ。

ただ、返ってきた言葉は俺の予想とは違っていた。


「僕にも詳しいことはわからない」

「え?」

「だから、わからないって言ってるんだよ」

「いや、あんた父親じゃないのか?それでわからないって…」

「だって、メイは女の子だぞ。僕みたいな男にそういう大事な話をすると思うのかい?」

「思うだろ…思わなかったら、そもそもどうして国の代表を変わったんだよ!」

「そりゃ、実の娘に真剣にお願いされたんだから、仕方ないだろ?」

「そんなことを俺に言われてもわからないからな」


国の王様がそんなことでいいのかと思ってしまうようなことを言うタリスの言葉に、俺は頭が痛くなりそうになる。

ただ、大丈夫だ。

ここにはもう一人いる。


「えっと、ベルさんなら知ってるんじゃないんですか?」

「うちですか?」

「はい、どうですか?」

「うふふ、それはね…うちからは何も言えないかな」

「そうなんですか?」

「うんうん、女同士の友情ってやつだね」

「そういうものですか…」

「うん、そうだよ」


ベルさんは笑顔でそう言う。

俺は二人の顔を再度見るが、二人はニコニコと笑うだけでこれ以上は意味がないと思うしかなかった。

頭を抱えそうになりながらも、俺はどうするべきかをただ考えたのだった。


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