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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
ヘンタイと過去

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267話

「メイニア!」


そんな言葉とともに、メイニアに駆け寄るのは、お姉ちゃんだった。

お姉ちゃんの姿を見て、メイニアはどこか安心したように笑うと言う。


「なんだ、あんたも負けたんだ」

「うん…でも…」

「ああ、いい感じになってるじゃん」

「そっちもだね」


二人がどことなく満足気に力なく笑っているのを見て、俺は口にする。


「終わったか…」

「そうね」


俺はアイラとシバルとともに、二人を見ていた。

そんな俺たちに二人は声をかけてくる。


「なあ、殺してくれよ」

「お姉ちゃんも、迷惑かけた責任はとるよ」

「何を言ってるんだ?俺は別に迷惑をかけられた覚えはないぞ」

「何を言って…」

「だったら、お姉ちゃんは?」

「そうだな。名前を教えてくれたなら、別に気にしないよ」

「うわ、そうやって女性に恩を売って何をする気なのよ」

「アイラ、お前な…もう少し言い方ってものがあるだろ?」

「毎回言ってるけど、私は下着をいつまでも被ってる人には優しくしないからね」

「おいおい、そう言うなよな」

「ふ…確かに、正君おかしいよね」

「いや、お姉ちゃんこそ、さっきまでおかしかっただろ?」


俺たちはそんなことを言いながら笑いあう。

いつも通り俺は下着を被ったままだ。

でも、だからこそ気づけた。

俺はすぐに落ちていた石を蹴りつける。

急な行動にアイラたちはただ疑問に思っただけだったが、石が飛んで行った方向には黒い穴が現れる。

そして、そこから出てきた手が石をつかんだ。


「急に石を飛ばすなんて危ないですよ」

「仕方ないだろ、急に現れるんだからな、メイさん」

「ふふ、こんな仮面はただしさんの前では無意味になってしまいましたか?」

「こう見えても、日々強くなっているからな」

「そうですね。でしたら、わたしがここに来た理由もおわかりですよね?」

「勇者の殺害か?」

「ええ、わたしに協力ができそうにない勇者には、残念なのですが…」

「俺が許すと思うのか?」

「ふふ、確かにただしさんがいれば、難しいですね」


彼女はそう言いながら楽しそうに微笑むと仮面を外した。

ここに現れた彼女はラグナロクのリーダーである、メイだ。

メイは着ているメイド服のスカートを持ち上げるとお辞儀をする。


「でしたらお願いをしましょう。わたしが殺めるのを見ていてください」

「嫌だと言ったら?」

「そんなことを言われるのですか?ただしさんにはわたしの考えがわかると思っていらっしゃると思ったのですが…」

「どうだかな」

「そうですか…ですが、もうすぐすべてが終わります。それは、ただしさんも感じていらっしゃるのでしょう?」

「なんとなくな」


俺はチラッとヤミの方を見る。

ヤミは俺と同じように、注意深げにメイのことを見ている。

魔王の問題。

それはもう少しすれば何かが起こるのではと思っているからだ。


「どちらにせよ。こちらには、あれがありますので…取りに来られるのでしょう?」

「ああ…」


メイが言っているのが、ヤミの力が封印されている黒い塊だということはわかっている。

それをすべて集めないといけない。

ただ、メイは微笑んでいる。


「奪いに来てください、リベルタスで待っていますので」


彼女はそう口にすると、再度お辞儀をする。

そして、黒い穴に消えていった。

なんとか戦いが終わったことに安堵しながらも、俺はこれからのことを考えるのだった。



「あれあれ、見たことある子が倒れてる」


そんなことを言いながらもクロは倒れていた叶を肩に担いだ。

この子を連れていくことで、あのライバルと再戦ができるとわかっているからだった。


「面白そうなことが起こると思って、この場にいてよかったな」


男はそう口にしながら、残されたもう一人に向かって手を伸ばす。

魔法を唱えるために魔力を高めようとしたが、魔力は発動しない。


「あー、そういえば、アイテムで押さえつけてるんだっけか…」


どうしてかを気づいた男はどうしようかと迷うが、すぐに答えはでる。

面倒だから今はいいかと…

アイテムを外すとなると、自分の存在がばれてしまうというリスクもあるのだ。

そうなるのは面倒くさい。


「もう少しスキルの知識を身に着けて…ああ、早くやりたいな」


男の顔は気持ち悪く笑みが浮かんでいる。

ゆっくりと男はその場を後にした。

黒く焦げた道を歩いて…



「ねえ、ただしはわたくしのことをどう思ってる?」

「どうって言われてもな」


俺は戦いが終わり用意された部屋で休息をとっていたときに、バーバルが突然入ってきて、そんなことを言われる。

どうと言われても、バーバルに思うことは、エッチなお姉さんという感じだ。

俺の視線が胸にいっていることに気づいたのだろう。

いつもであれば、いたずらっぽく笑うだけのはずだったのだが、今日は違った。

谷間を強調するようにして、服を引っ張った。


「バ、バーバル?」

「わたくしは魅力がないと思う?」

「そんなことはないけどな」

「だったら、いいじゃない?」

「でも、俺は今回何もしてないはずだろ?」


そう、俺は何もしてない。

バーバルを助けたのはシバルで、背中を押したのはヤミだ。

決して俺は何もしてない。

だというのに、バーバルのこの態度をどこか疑問をもってしまう。

ただ、バーバルはそんな俺の姿を見て、今度はいたずらっ子のように笑う。


「ふふふ、確かにただしは今回何にもしてないかもしれないわね」

「そうだろ?」

「でも、ここに来るまでのわたくしたちを育ててくれたのは、ただしだからね」

「それは…」


確かに、今回のシバルの活躍は、レックスでの一件があったからこそだろう。

だからといって、さすがに無理があるのではと思ってしまうが、バーバルは俺のことを抱きしめる。


「おわ…」

「本当は、ずっと前から気になっていたのよ。でも、気にしないようにしてた。ただしが、みんながここまで助けに来てくれることをわかってたから…」


その言葉を聞いて、少し前のことを思い出す。

バーバルが一人でメイニアに連れていかれたことを…

不安だったのだろう。

それでも、俺たちが助けられた。

みんなの力で…

バーバルを俺は優しく抱き返した。


「今度こそ、みんなでな」

「ええ!」


バーバルは満面の笑みでうなずき、俺はさらに抱きしめられた。

結局失神したのは言うまでもなかった。

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