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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
ヘンタイと過去

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262話

多くの操られている敵たちを倒していく。

私たちは、順調に最後の敵であるであろう彼女、メイニアと戦うために進んでいた。

ただ、ここに配置されている人たちの多くはメイニアがスキルで作った人形というわけではなく、たぶんただしを傷つけたであろうお姉ちゃんと呼ばれた彼女のスキルで操られている死んだはずの人たちだけだった。

死んでいるからか、思考は遅く、確かに魔法を使えることと、スキルを使えることは私たちがメイニアたちの元へ向かうための時間を稼ぐ役割を果たしてはいたけれど、それだけだった。

よくも悪くも、強いスキルといえばいいのだろうか、それを持つ多くの人たちは若くして亡くなることはなく。

しっかりと仲間に恵まれた私たちが言えることは、スキルも大事なのかもしれないけれど、それよりも仲間に恵まれて、ここにいるということだった。

だから、仲間として連携が取れている私たちのほうが、即席で生き返っただけの人たちよりも絶対に強いということだけはわかる。


「はあはあ、さすがに急ぎすぎ?」

「いえ、そんなことはありません。なんとなくですけど」

「そうね。シバルが言うんだったらそうよね」

「はい。ほかのみなさんは大丈夫ですか?」

「ぜえ、はあ…大丈夫じゃないからね。アイラもシバルもなんでそんなに元気なの?」

「そうぞ…科学者は体力がないのだぞ」


そして、急いで進んだ結果ではあるけれど、体力がない二人には案の定キツイ現実が待っていた。

仕方ないことなのかもしれないけれど、少しは頑張ってもらうしかない。

でも、ちょっと言えることは、荒い息をつくバーバルの胸元にキラリと光る汗があることくらいだろう。

む、胸があるからって、ちょっと見せているのがなんとなくムカつく。

そんなことを考えながらも、私たちは息を整えると大きな扉を開けた。

ギギギという音とともに扉が開く。

そして、部屋に拍手が響く。


「ここまでこれたことは褒めよう」

「褒められてもうれしくないぞ」

「そう言われてもな」

「メイニア!」

「ジーニアス!」


拍手をしていた女性はメイニア。

手にはレーザーを持っている。

それを確認したジーニアスは、ギリっと歯が鳴る。

そんな悔しそうなジーニアスを見て、メイニアは楽しそうに言う。


「そんなに怖い顔をして、これが欲しいのか?」

「当たり前ぞ。ワイの研究結果を奪い去るようなことばかりをして、おかしいぞ」

「はは。だって、必要なことだもんね」


メイニアは悪びれることもなくそう口にする。

彼女が持っているということは、あのレーザーは完成したと考えることがいいのだろう。

でも、どうやって?

そのことを私たちが見たところでわからない。

それでも、戦うとしてもフリになることはわかっている。

ただしがいればとは思うけれど、そうもいっていられない。

私たちは四人、対して相手は二人。

見えているだけなので、実際にそうなのかと言われればわからないけれど、私たちが見えるところでは二人だった。

だったら、私たちは…

シバルとアイコンタクトをする。

そして、バーバルに声をかけようとしたところだった。


「わたくしが、ご主人様の…いえ、メイニアの相手をします」

「ワイもぞ」

「バーバル、ジーニアス…」


先に声を出したのは二人だった。

確かに二人はメイニアに因縁があることはわかる。

だけど、二人で相手するには相性が悪いと思ってしまっていたので、驚いた。

どうしようかと考えていたとき、私よりもシバルが声をかける。


「バーバル。二人でいけるんですか?」

「シバル。当たり前よ」

「でしたら、ボクとアイラ様であちらを相手しますよ」

「それで構わないわよ」


シバルとバーバルは二人で言い合って、互いに武器を構える。

それを見て思うことは一つだった。


「私が心配する必要はないってことね」


そう、これだけ二人が信頼しあっている。

だったら私は信じることくらいでしか、二人の信頼をいい方向へ向かわせるができないということだ。

私たちは、笑みを浮かべた彼女と向き合った。


「お姉ちゃんと戦ってくれるのは、あなたたち二人なんだ」

「何か悪い?」

「ううん、お姉ちゃんは相手されることないと思ってたから嬉しいな」

「相手くらいするわよ」

「そうなんだ。だったら、お姉ちゃんも少しはとっておきを見せないとね」


彼女はそう言って手招きをする。

すると部屋の後ろからゆっくりと男女が顔を出す。

一人は若い男で、一人はさらに若い女性だった。

二人とも、私は見覚えがない。

ただ、シバルは違っていた。


「お姉ちゃん、お姉ちゃんだよね。どうして…」

「シバル、知ってる人なの?」

「はい。ボクがレックスでお世話になっていた人です」

「だったらあれは…」

「はい。亡くなっているのは、ボクも知っていましたから…」

「だったら、彼女のスキルで…」

「そうですね。こんな形の再開は嫌でしたけど」


どこか残念そうにシバルは若い女性に目を向ける。

ただ、しっかりと盾は握っていた。

シバルの覚悟はもうできている。

そのことを理解した私は、同じように棒を構えた。


「シバルは、女性の相手。私は男の相手をするから」

「はい」


静かにシバルが返事をしたところで、先に男が向かってくる。

私は持っていた棒で、男性のメイスのようなものを防いだ。

当たり前だけれど、私が使っているのは木の棒で、さすがに普通に使ってしまえば、簡単に折られてしまうことはわかっていた。

だからこそ、力加減などを絶妙にコントロールして相手の攻撃をいなす。

まずは私が勝つ。

そう考えた私は、後ろにいなすようにして力を逃がす。

相手の態勢が少し崩れるが、それを利用した蹴りが向かってくる。

ただ、私だってこれまで戦ってきたことがある。

木の棒を地面に突き立てて、その蹴りを防ぐ。

そしてお互いに距離を取る。


「なかなかやるじゃない」

「…」

「だけど、会話ができないと何を考えているのかわからないのが面倒くさいね」


面倒くさい。

そう思うのには理由がある。

私のように木の棒を使う戦い方をしているのもあるけれど、修道女魔法は相手の反応を見て戦うのが普通で、魔法もほとんどのものが守りで使うもので、私が使えるのもホーリージャベリン以外は攻撃に向いていないものが多い。

そして、木の棒を使うことで、守りをさらに強固なものにしているのが、修道女魔法としての在り方だと、教わったけれど、それは修道女魔法を覚えられる女性だけで、セイクリッドにいる男性は違う。

目の前にいる男性のようにメイスと持っている人は盾を持って戦うのが普通だった。

修道女魔法を使う私たちの盾であり、剣でもある存在というのが彼らだった。

だからこそ、お互いに戦い方というのがどこか似ている。

互いに攻撃を受ける方が得意というものだ。


「はあ…何も話をしてくれないのよね」

「…」

「だったら私は好きにやらせてもらうから!」


左手に木の棒を右手は開いて言葉にする。


「我の手に、守るための聖なる力を与えよ、ホーリージャベリン」


光の槍を右手に持つ。

シバルの兄が二刀流を使っていたときから、いつかは私もと思っていたことだった。

やれるかはわからない。

でも、さっきよりは攻撃力はましているはずだから!

地面を蹴る。

相手はメイスを構えている。

私は構わず右手の槍を振るう。

薙ぎ払いのようにしながらも、片手ということもあり、スピードは両手に比べて遅い。

簡単に避けられて、メイスを振るってくる。

それを左手の木の棒で防ごうとするけれど、先ほどと違い、地面につけて突っ張る形じゃなくてただ木の棒を前に向けたせいもあるのだろう。

簡単に防御に使っていた木の棒は弾かれる。

ただ、弾くことによって、少し軌道がずれて避けることができた。


「うまくできないか…」

「…」

「じゃあ、これでどう?」


左手を前にして半身になる。

左手を下に、右手を上に槍のように突く形で止める。

そして、地面を蹴る。


「はああああ!」


先に左手を前に出して突きをする。

さすがに読まれて避けられる。

ただ、そこに向かって右手の突きを繰り出す。

相手もわかっているかのようにメイスで防御する。

両手と片手、普通であれば負けてしまうそれだったけれど、最初からどこか考えていた。

左手に持っていた木の棒を地面に落とす。

そして、両手で槍をつかむ。

だけれど、そこは男女の差なのか、死んだから何か力が働いているのかはわからない。

私は両手でも押されるのがわかる。


「まだまだ!」


だからこそ、私は地面に落とした木の棒を足で軽く蹴る。

ほんの少しことだけれど、それは大きな隙を生む。


「これで終わり!」


私は光の槍を男性に突き立てた。


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