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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
ヘンタイと過去

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261話

「それで、この後はどうするのじゃ?」

「それは…」

「えーと…ミィーアはどうしたらいいんでしょうか?」


不安そうに口にする彼女に、俺はなんとも答えられなかった。

理由はわかっている。

どうしようもないというよりかは、どうしていいかわからないからだった。

ここにジーニアスがいれば、何かいいアイデアを出してくれそうな気がするが、今は俺とヤミしかいない。

ヤミはこういうときには、まともなことかポンコツなことのどちらかしか言わないので、何かアイデアを引き出すような言葉を言ってくれるとは思えない。

となると、自分で答えを引き出すしかないということはわかっていた。

ミィーアの現状を見て、何かわかればと思うが、顔がそこにあって、喋っていることを考えると、どこかロボットのように見えてしまった。

感情があるロボットか…

俺はその言葉を頭に響かせる。

普通であれば、何も思いつかないものだった。

けれど、このマゴスに来て、それはどこか引っかかることだった。

そう、例えば…


「今の状態をロボットじゃなくて、人形だと思うなら…」


自分で口にして、ハッとする。

ロボットじゃなくて、人形とするのなら、この状況を助けられる人を俺は知っているのかもしれない。

ちゃんと意思表示ができて、人と同じものとして扱われて、女は、バーバルのことを人形と呼んでいた。

だったら、ミィーアのことも治せる可能性がある。

俺はすぐに行動に移す。


「どうしたのじゃ?」

「いや、ここからミィーアを連れ出す方法を考えてくれ」

「なんじゃ、急に下半身の方を見るから、おかしくなったのかと思ったのじゃ」

「なんでだよ。そもそも、ないだろ?」

「何を言っておるのじゃ?あるのじゃ」

「は?」

「なんじゃ?」


ヤミの言っていることの意味がわからなかった。

だって、俺が見るにそこには何もなかったからだ。

あるのは、ミィーアを生き残らせるためについているジーニアスが作ったであろう機械だった。

わけがわからない俺に代わってヤミが言う。


「のう、おぬしには見えるじゃろ?」

「えっと…」

「どういうことだ?」

「なんじゃ、おぬしら二人は見えぬのか?」

「は?」


ヤミには何が見えているというのだろうか?

わけがわからない。

だけれど、ヤミは確信を持っている。

だからこそ、俺は一つの仮説を立てることにした。

それは、魔力があれば心臓の代わりをできているのなら、もし、スキルが何か特殊なものであれば、そのスキルで体があるように見えている。

もしくは…


「体を再生できる…」


そんな荒唐無稽なことができるのであれば、もしかすれば俺には見えていなくても、ヤミであれば魔王としてなのか、ほかの要因があるのか見えていてもおかしいことではなかった。

ただ、それがわかったところでどうにもならないということもわかっていた。

理由は簡単なことだった。

ミィーアが、もし体を魔力で復活させられるようなことがあったとしても、やり方がわからないということと、体を魔力で補うとなった場合、どれほどの魔力が必要になるのかわからないというものだった。

どうしていいのかわからない。

かといって、目覚めさせた彼女をここで放っていくわけにはいかなかった。

だったら、やることは決まっている。


「なあヤミ」

「なんじゃ」

「これって、このまま連れていくことって可能なのか?」

「お、おぬし…こんな少女の頭だけをどこにもっていくというのじゃ?」

「いや、普通にみんなのところにだよ」

「な、なんじゃ…それはうむ…」


ヤミは周りをくまなく見る。

これで、いけるかどうかの判断をしてくれるだろう。

それにしても、さっきはなんで責められるようなことを言われなくちゃいけなかったのだろうか?

確かに見た目はヘンタイだとしても、女性には紳士にありたいと俺はいつでも思っているというのにな。

ただ、俺も少しは見ないといけないか…

そう考えた俺は、ヤミと同じように周りを見る。

機械にはいくつかのボタンがあり、それを触ることで何かが起こるということくらいはわかるが、それ以外についてはよくわからない。

ジーニアスがこの場にいれば、いい対処方法があるのかもしれないが、機械についての知識がない俺はどうしていいのかわからない。

それはヤミも同じだったのだろう、一周見て回ると口を開いた。


「うむ…わらわはどうしていいのかわからないのじゃ」

「そうだよな」


そんなことを思っていると、ミィーアは何かに気づいたのか不思議そうな表情をしている。


「何か気になることがあったのか?」

「うーんと、ミィーアは今頭だけしかないんだよね」

「ああ、見えているのはそうだが…」

「なんとなく足がある感覚があるの」

「どういうことだ?」

「えっとね、この体制だから見えてはないんだけど、その箱って言えばいいのかな。その中にミィーアの足が入ってる感覚があるの」

「まじかよ」


聞いて、かなりびっくりする。

それはヤミも同じだったようで、驚いている。

さっきヤミも下半身があるとは言っていたけれど、本当に感覚が残っているというのだろうか?

でも、そんなことがあり得るのか?

俺はわからずに考える。

普通であればあり得ない状況だった。

ただ、思い出すことはある。

トカゲの尻尾が切れたとき、尻尾はまだ動き続けている。

そんな感覚なのだろうか?

でも、そこにあるという感覚があるというのでれば、なくなってすぐの状態と考えるのが普通なのか?

なくなったことがわからないので、正解がわからない。


「なあ、ヤミ」

「なんじゃ?」

「何をするのが正解なんだと思う?」

「そんなことわらわにわかると思うのかの?」

「いや、わからないな」

「じゃあ、どうするのじゃ?」

「なあヤミ…」

「なんじゃ」

「ヤミはブラジャーつけているのか?」


俺は気になることを聞いたが、そんな俺のことをヤミは蔑んだ目で見ている。


「どうかしたのか?」

「いや、そこで普通にしているのが驚きなのじゃが…」

「普通に必要なものを聞いただけだが…」

「だから、おぬしは必要なものが女性の下着だった場合も普通にお願いをするのがおかしいと言っておるのじゃ」

「どうしてだ?俺には必要なものだけどな」

「わかった、それはわかったのじゃ」

「だったら、別に欲しいと言っても当たり前のことだろ?」

「そうなのじゃが…何か違うような…まあよい。それでおぬしはブラジャーを何に使うのじゃ?」

「わかっているだろ?」

「う、うむ…そうじゃったな。じゃあ、それを使うと何が起こるというのじゃ?」

「なんとなく何かが起こる気がするな」

「なんじゃその曖昧な言葉は…」

「仕方ないだろ、俺にもなんとなくしか言えないからな」

「だったら今の状態でもいいんじゃないのかの」

「それだと新しい何かが発現できないだろ?」

「確かにそうかもしれないのじゃが…」

「ということでよろしく頼む」

「仕方ないのじゃ…」


しっかりと頭を下げると、ヤミは呆れたようにしながらも俺に背を向ける。

俺も同じように背を向けた。

そして、衣擦れの音が終わったころにヤミの声がする。


「ほれ、これじゃ」


その言葉とともに、右手に持っているのはブラジャーだ。

ただ、思うことは…


「ヤミ、どうしてお前の下着類は小さいものばかりなんだ?」

「仕方ないじゃろ、わらわの体は小さいのじゃし、別に隠す布が小さいくらいは気にするものじゃないのじゃ」

「そういうものなのか…」


まあ、人の趣味嗜好をとやかく言うことはできない。

俺もたいがいなのだからだ。

つけるか。

目を少しは隠せるように装着する。

今回もしっかりと新しい何かが見えるように…


「ヘンタイ眼…」


目を開けるとき、見えるものはいつもと同じように魔力の流れ。

そして、彼女が考えている少しのこと…

まあ、考えていることは主にジーニアスを助けに行きたいということだ。

そこまではいい。

俺が見るのはもっと違うところ。

これだけのことをしたんだ、いつもよりも小さい下着のせいなのかおかげなのか、いつもよりヘンタイに磨きがかかっていると、ヤミは感じていた。

だからだろう、俺のヘンタイ眼はさらなる高みへと向かう。

見たいのは機械の中。

魔力は確かに流れている、その中だ。

見るんだ。

そう思いながらも、少し視線をヤミの方に向ける。

下着を脱いだせいなのかはわからないが、どこか服の下が透けて見えるように感じる。

気のせいなのか…

いや、これは!

俺はしっかりと目を凝らす。

するとどういうことだろうか、肌が見えてくる。

ただ、どういうことなのかはわからないが、大事なところは見えない。

これは…


「実物を見たことがないせいでわからないというのか?」


童貞ということで、本では確かに知識としては見たことがあるが、それ以外については目で実物を見たのは、お姉ちゃんの下着姿やヤミが誘惑してきた姿くらいで、ちゃんとしたところを見たことがない。

だからなのだろうか、確かに服の下が集中すればするほど見えるが、それだけだ。

気づけば、ヤミは俺のことを微妙な表情で見ている。

だからこそ、俺は慌ててミィーアのことを見る。


「これは!」

「なんじゃ、何かがわかったのかじゃ?」

「ああ、いけるかもな」

「気持ち悪い顔なのじゃ」

「いや、酷いな!」


俺はそう言いながらも、ほくそ笑むのをやめなかった。

たとえそれが、下着を被っている明らかなヘンタイであってもだ。


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