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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
ヘンタイと過去

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259話

「ここにいるのよね」

「その可能性が高いぞ」

「こんなわかりやすい場所って、さすがに正気を疑うけど」

「そうぞな。ただ、それほどこの魔法の国では魔力を高めることが自分の研究にも、それ以外のことでも、評価に繋がることなのぞ」

「だったら、重宝されるってことね」

「そういうことぞ」


私たちがいたのは、魔法の国マゴスの中心だった。

ただ、それくらいではわかりやすすぎる場所とは呼ばなかっただろう。

どうしてわかりやすいかというのは、その場所が浮いているからにほかならかった。

宙に浮く建物。

地面ごと浮いているとはいえ、それは異常な光景だった。

まるで権力を誇示しているかのようなものだった。

問題点は、どうやって建物に行くかということだった。


「ねえ、シバル…」

「なんでしょうか?」

「さすがに難しくない?」

「そうでしょうか?」


最初にシバルが案を出してくれたのだけれど、それは全員が上に乗ればいけるのではというものだった。

どう考えても無理なはずなのに、目をキラキラと輝かせながらシバルが言うので、少しいける可能性もあるのでは?

などと考えてしまう。

シバルは少し成長したと思っていたけれど、どこかポンコツなのはいつものことで安心してしまう。

かなり現実的じゃない提案に、さすがにもう一度考える。


「ふむ、バリアのスキルで足場を使い、上に行くのはどうぞ?」

「さすがに私でも、そんなに連続では使えないからね」

「そうなのかぞ?」

「そうよ。魔力はあっても、数は難しいの」

「そういうことかぞ」


ジーニアスの提案はいいものだったけれど、できるものじゃなかった。

確かに、私もバーバルのように魔法を連続で使うことができれば、ジーニアスが言っていることもできる。

だけれど、私は連続で魔法を使うと、頭が痛くなってしまうため、使えない。

となると、次の案を考えないといけない。


「バーバルは何かいいのある?」

「そうですね。あまり考えていませんでした」

「ヤミがいればね」


ヤミがいれば、ドラゴンになって飛んでいけばと思ってしまう。

見る感じでは、あんまり距離もないので、飛んでいけると言いそうだった。

私たちもジャンプで上に行けたりしない?

さすがに、絶対無理なのではと思うことでも、考えてしまう。

といっても、このままここにいても何も変わらないというのは、私たちはわかっていた。


「ジーニアス、何かいいアイテムを作れたりしないの?」

「そうぞな。ワイが作ってもいいが、それはかなり大きなものになるぞ」

「そうだよね。かなり注目を浴びちゃうと、また面倒くさいことになりそう…」

「そうぞ。だからワイのスキルに頼るのはダメぞ。やるなら、最後の手段になるぞ」

「わかったわよ。でも、そうなるとあの浮かんでいる場所にはどうやっていくのがいいの?」


私たちは考えた。

そんなときに、今更ながらに一つのものが目にとまる。


「ねえ、あれを使えばいいんじゃ」

「さすがです、アイラ様」

「盲点だったぞ…」

「なんで、作ったあんたが覚えてないのよ」

「仕方ないぞ。こういう状況ぞ。天才でも頭が回らないこともあるぞ」

「それはわかるけど」

「あれって、ことはわたくしがなんとかすればいいのよね」

「うん。バーバルは行けそう?」

「ふふ…もちろんです。わたくしが迷惑をかけた分くらいは働きますからね」

「だったら、早速ジーニアス!」

「任されたぞ」


ジーニアスがそう言って、クラフトスキルであるものを作っていく。

そして出来上がったものは、板だった。

うーん?

どういうこと?

私たちが求めていたものと違う見た目に、驚きが隠せない。


「でも、これは使えるものぞ」

「ほんとに?」


私たちが想像していたのは、箒と同じようなもので空を飛べる何か…

だというのに、今回ジーニアスが作り出したものは、見た目は板にしか見えないものだった。

不安がる私たちをよそに、ジーニアスは自信満々に言う。


「大丈夫ぞ、風の魔力を流してみればわかるぞ」


さすがに試さないのも違うと思ったのか、バーバルが試すために板に魔力を注ぐとそれは宙に浮いた。

すごい、あんなに短時間で作れてしまうのもすごいことなのだろうけれど、普通にただの板に箱のようなものがついているだけにしか見えないのに、それで空を飛んでしまうことができてしまうことに驚く。


「やはり、ワイは天才ぞ」


そう言ったジーニアスが板の上に乗り、私たちも同じく乗る。

後は、このままあそこに向かうだけ…

待ってなさいよ。

私たちは、浮遊している板で、建物にたどり着いた。

そして、すぐに周りを囲まれた。

理由はわかっていた。

周りを囲んでいるのは、どこか虚ろな瞳をした人たち…

あの、ただしを苦しめていた女が使っているスキルの下僕のようなものだろう。

数はかなり多い。

だったら…


「これは、なかなかね」

「はい。アイラ様、ここからは」

「突っ切るしかないに決まってるでしょ」

「ええ、わたくし運動は苦手なのに」

「ワイもぞ」


そんな二人の慌てた声を聞きながらも、私たちは目的地に向かって走り始めた。



「来たみたいよ」

「そうなんだ」

「お姉ちゃんみたいに、仲直りをしなくてもいいの?」

「仲直りできたのか?」

「それは、ほら…お姉ちゃんの相手は男の子だから、難しいの」

「だったら、できてないのと一緒じゃない」

「そんなことないんです。お姉ちゃんはこれからなんです」

「それじゃ、こっちも行くしかないでしょ」

「お姉ちゃんは、正君が来るまではのんびり手伝うだけだよ」

「大丈夫。もう、これで完成したから」


そう言葉にする彼女の手に持っているのは、ジーニアスから奪いとったものだった。

変わってしまったものをもとに戻すために、彼女はそれを手に持って二人はゆっくりと決戦の場へ移動した。


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