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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
ヘンタイと過去

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256話

「だから、叶は嫌いなの…」

「…」

「ああ、もう何かを言いなさいよ!」


叶はイライラとしている。

それは、彼女自身が相手の反応を見ながら戦うタイプだからというところが大きい。

だから気分が乗っていない。

何もかもがうまくいっていない。


「叶?」

「アイラ…」

「大丈夫?」

「叶は大丈夫だから!」


必死の表情で言う叶に、私は何も言えなくなる。

叶がおかしいというのは、ここに来る前からなんとなくわかっていたことだった。

どこかがおかしいということには気づきながらも、叶は勇者だから、ここにいる誰よりも強いからと、戦わせてしまっている。

私はそう考えて、加勢するために一歩前に踏み出したときだった。

地面から出た何かに行く手を阻まれる。

すぐにこれがなんなのか、理解する。


「叶!」

「うるさい。叶の邪魔をしないで!」


叶は私のことを言うことを聞かないかのように、頭を振る。

おかしくなっている叶を相手の女性は遠慮などしない。


「火よ、相手を焼き尽くす炎となせ、ファイアー」

「く…」


すぐに炎魔法を唱えて、すぐに叶は横に避ける。

避けるのが速すぎる。

私はそう思いながら見ていたけれど、すぐに叶が避けた理由がわかった。

有り得ない速度で、炎は叶に向かって飛んでいったからだった。

すぐに相手の女性がどんなスキルをもっているのかわかる。

速度系のものなんだろう。

だったら、私の力が必要だと思う。

バリアを張れば、安全に簡単に戦うことができるのだから…

ただ、それを叶は望んでいないということだけはわかる。

私は上げそうになった右手を下げた。

叶をこのときばかりは信じるだけだった。


「叶は叶は…」

「火よ、相手を焼き尽くす炎となせ、ファイアー」


叶は何かを葛藤しているかのように、自分に言い聞かせている。

それでも、女性が先に魔法を使っていたので、炎は叶に当たる。


「叶!」


直撃した叶を心配した私は、叶の名前を呼ぶが、返事はない。

このままじゃまずい。

そう思いながらも、私の行く手を阻む何かがあることで叶が無事だということはわかる。

でも、このままいけば叶がやられてしまうというのも時間の問題だった。

だからこそ、必死に叶に呼びかけるけれど、声が届いているとは思えない。

炎が直撃した叶は、地面に倒れるということはなかったけれど、足はどこかおぼつかない。

なんとかバリアの魔法だけでも叶にかけてあげることができれば…

そう思っていたが、魔法でできた土埃がなくなった後の叶を見たとき、背中がゾクッとする。


「ああ、もうもうもう…叶は叶は…叶が嫌い。だから、叶は醜いからこうするしかないの」


叶は左手の腕を見せる。

そこにあったのは無数の切り傷。

何をしているのか、わからない私はその傷を負った叶を見ていた。

叶の目には涙が浮かんでいる。


「醜い叶を見せたくないのに…」


そう言いながら、叶は左手を傷つける。

なんで自分自身を傷つけるのか、その理由はわからなかった。

だけれど、自分自身を傷つけた叶から何かを感じると思ったときだった。


「華、華、華。汚い叶を全部包み込んで」


その言葉とともに、大量の何かが叶を含めて相手も飲み込んでいく。

何が起こっているの?

叶がやっているのはただ自分を傷つけていただけだというのに、起こったのは相手含めて叶を包む何かだった。

私はただ、何もできることもなくそれを見るしかできなかった。

でも、すぐに拘束していたものが外れる。

叶が包まれた場所に私は慌てて向かう。


「叶!」


私の呼びかけに叶は応じないけれど、そこには叶が倒れていた。

そして、叶と戦っていた彼女も倒れている。


「なんとか勝ったみたいね。でも、さっきのは…起きてから聞くしかないよね」


私は光の槍を倒れていた彼女に突き立てると、叶に肩を貸して立ち上がらせる。

あとはシバルだけ…

叶がこんなことになった以上は不安だったけれど、信じるしかない。

そう考えながらも、私はシバルと合流するべく歩を進めた。


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