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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
ヘンタイと過去

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245話

「く、逃がした」

「叶、さっきのは誰なの?」

「お兄ちゃんを苦しめたやつだよ」

「そうなの?」

「そう…だからお兄ちゃんは、女性に興味を失って…」


叶はそう言いながら、唇をかみしめている。

どんなことがあった相手なのか、私は気になりながらも、なんとか休める場所である、ジーニアスの研究所に戻ってきていた。

ジーニアスたちは、まだ戻ってきていないようで、ここにいるのは私たちだけだった。

叶に、あの女性とのことを聞きたいが、私たちが聞いていいことなのかわからなくて、全員が口を閉ざしていた。

ただ、そんなときに声が聞こえる。


【何?辛気臭くない?】

「誰?」

【ただしをここに召喚した神様よ】

「どこから声が?」

【ただしに、持ってもらっていた石からよ】


どこからともなく女性の声がして、その石がポトリと地面に落ちる。

私はこれを見たことがあるのを思いだしながらも、石から聞こえる女性の言葉を待った。


【やっぱり、辛気臭いわね】


その言葉に最初反応したのは、叶だった。


「あんたが、お兄ちゃんをこんな世界に召喚した…」

【でも、召喚しなかったら死んでいたのよ】

「それは…」

【だったらわかるでしょ、そもそもただしの見た目が生きているときと違っていることに】


神様と名乗った女性にそう言われて叶は黙る。

ということは本当のことだということだ。


「でも、だったらどうして叶は、ただしをお兄ちゃんだとわかったの?」

【アイラって言ったっけ?】

「ええ、そうよ」

【それは、そこの勇者が変わっているからでしょうね】

「それだけの理由なの?」

【簡単にいえばだけどね。もし理由を知りたいのなら、そこの勇者に聞いてみなさい】

「どういう意味よ」


神様がそう言って、私は叶を見る。

叶は私と目が合うと、目を逸らした。

どういうこと?

何かを隠しているということなの?

ただ、今の雰囲気では答えてくれそうもないことをわかっていた私は、先に神様に言う。


「辛気臭いっていうのなら、私たちにただしのことを教えてよ」

【いいわよって、あたしが言うと思った?】

「だったら、いちいち辛気臭いって言わないでよ」

【そうなの?】

「そうよ」

【じゃあ、どうしたいのよ】

「え?」

【ただしの過去を知れば、変わるの?】


その言葉に私はハッとした。

過去を知れば何かが変わる。

本当にそうなのか?

そう言われて気づく、私もおかしい。

過去は自分のものだ。

過去を変えるのは自分自身だし、それによって今どうするのかを決めるのも自分だ。

セイクリッドでの一件で私はそれをわかったはずだったのに、わかっていなかった。

ただしはヘンタイで、明るくふざけてすべてのことを解決してくれる存在だと心のどこかで思っていた。

でも、そうじゃない。

私たちはそれを忘れていた。

それに…


「好きな人が困っているなら助ける。当たり前のことよね」

【へえ、いい顔になったじゃん】

「そう?」

【まあね。少しはいい顔になったみたいね】

「そうね」

【わかったなら、あたしからは以上よ。過去のことは助けて、本人から聞きなさい】


その言葉で、石からは何も聞こえなくなる。

神様に言われた言葉が、私にはその通りだと感じた。

だったらやることは一つだった。


「叶、手伝ってくれるのよね」

「何を言ってるの?叶をアイラが手伝うの間違いでしょ?」

「アイラ様、師匠!」


私たち三人は足に力を込めた。

そのタイミングで、ヤミが言う。


「行くがよいのじゃ、わらわはこやつを見ておるからな」

「ヤミ、いいの?」

「仕方ないことじゃ、わらわは別にこやつをどうにかしたやつに興味がないからの」

「そう?」

「アイラ、速くいくよ」

「わかってるわよ、叶」


私たちは研究所から出ていく。

いろいろあってただしと今は一緒に戦えないけど、だから私たちが今度はやる番だ。

バーバルを助けるのだって、ただしだけじゃない。

私たちが助けられるように…

そのためにはまず、ジーニアスと合流しないといけない。

すぐに私たちは合流場所に向かった。


「それで、君らだけで来たのか?」

「仕方ないでしょ、ただしだっていろいろあるのよ」

「確かにぞ、助手も乗り物酔いをするというポンコツなところがあるからぞ」

「そんなに褒めないでください、ジーニアス様」


どう考えても褒めていない言葉なはずなのに、嬉しそうにするアシストに、私たちは苦笑いをするけれど、いつものことなのか気にしていないジーニアスは、紙を取り出す。


「これはなに?」

「メモぞ」

「メモ?」

「そうぞ。聞いた内容を簡単に記録したものぞ。ワイのような研究者には必要なものぞ」

「そうなんだ」


記録用紙ってことなのかな?

だったら、もっと大きなものに書けば多く書けるのに…

そんなことを考えながら、紙の中身を読んだ。

よ、読めない。

そこには殴り書きしたのか、私には読むことができない文字だった。


「なんぞ」

「えっと、読めるのかなって…」

「なんぞ、ワイの文字が読みにくいってことぞ?」

「ちょっと、ジーニアス様に失礼ですよ」

「よいぞ。ワイもたまにわからなくなることがあるからぞ」

「それは、大丈夫なの?」

「大丈夫ぞ、重要なことはしっかりと覚えているからぞ」

「そうなんだ…それで、私たちは今から何をやればいいの?」

「ふむ、そうぞな。ワイの集めた情報をしっかりと扱うのであれば、いい手があるぞ」


そうして、私たちはジーニアスから話を受けることになる。

ただ、話を聞いて、少し後悔をしたのは言うまでもなかった。


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