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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
ヘンタイと過去

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243/382

242話

「うーん?人違い?」

「…」

「うーん、聞こえていないのかな?」

「あ、いえ」

「なんだ、聞こえてるみたいだね。よかった」

「な、なんの用ですか?」

「うん、ちょっとお姉ちゃんの知っている人に似てたんだよね」

「そうですか」


俺は口の中が一瞬で乾くのを感じた。

それほどまでに、緊張していた。

理由はわかっていた。

目の前にいる女性のせいだった。

自分のことをお姉ちゃんと呼ぶ彼女のことを俺は知っていた。


「ううん?人違いなのかな」

「何がですか?」

「いいのいいの、お姉ちゃんが知っている子なら、すぐにわかるんだから」


その言葉とともに目を覗き込まれる。

俺は目を逸らせずにそれを見ていた。

思い出すのは、思い出したくもない記憶だけだ。



小学生で、少しのエロスに目覚めていた俺は、そのまま中学生にあがり、中学で引っ越しをした彼女とは会うこともなくなったけれど、道場に通っていたこともあって体を鍛えることだけは続けていた。

だから、それなりに体は絞れていたせいか、男女ともに仲がいい人は多くいた。

そんなときに仲良くなったのが、近所に引っ越してきた、お姉ちゃんだった。

小学生のときは道場に通っていた時間を筋トレなどに費やしたりしていたこともあり、走ったりする中で出会うことが多くなったのがお姉ちゃんだった。

出会うと挨拶をする程度の仲にはなっていた。

服装から近くに通う高校生だということもわかった俺は、年上であり、見た目も可愛かったお姉ちゃんのことを少しも疑っていなかった。


「お姉ちゃんはね。ちょっとやりたいことがあって、違う学校に来たんだよ」

「そうなんだ」


俺が公園で少し休憩していたときに、話かけてきたお姉ちゃんは、そんなことを言っていた。

何かをしている人なんだ。

純粋に俺はそう思い、そのあとも少し話をしたりしていた。

ただ、このときから少しずつ少しずつ、何か違和感を感じていたのかもしれない。

そんなことが数回あったとき、その日は雨が降っていた。

雨でも日課を欠かさなくなっていた俺は、その日もいつも通る公園の前を通過していたときだった。

ベンチにお姉ちゃんが座っていた。

こんな雨なのに?

心配になった俺は駆けよって声をかけていた。


「お姉ちゃん、どうしたの?」

「あ、正君。ちょっといろいろあってね」

「それは、わかったんだけど、ここにいると濡れるんじゃ」

「雨降ってるもんね」

「そうだよ。風邪をひくかもしれないよ」

「心配してくれるんだ、ありがとう」

「そんなの当たり前だよ」

「ありがとう。でも、心配してくれてる正君も濡れちゃってるよ」

「確かにそうだね」

「心配かけちゃったし、どうせだったらお姉ちゃんの家に来てほしいな」

「え、でも…悪いですよ」

「迷惑かけちゃったんだから、当たり前だよ。心配させちゃった正君も風邪ひいちゃうと、今度はお姉ちゃんが心配しちゃうからね」

「た、確かにそうですね」


お姉ちゃんの言うことに納得した俺は、お姉ちゃんに連れられて住んでいる家に向かった。

外見も、家に入っても普通の家という感じで違和感も感じることはなかった。

それよりも、小学生以来の女の子の家ということで、それだけで緊張していたせいで、あまり深く考えていなかった。


「拭くものと暖かい飲み物を用意するわね」

「はい、ありがとうございます」


リビングに通された俺は、最初にバスタオルを渡されて、それで体を拭く。

服の上から着ていたカッパは玄関に脱いできていたので、俺が濡れていたのはほとんど頭だけだったこともあって、頭からバスタオルを被ったままでお姉ちゃんが部屋に入っていくのを見ていた。

両親は共働きなのか、いないということは、二人きりなのか?

妙にそわそわとしてしまうのを感じながらも、俺はここからどうするべきかを考える。

誘われているのか?

女性経験というものがなかった俺は、こういうときにどうしたらいいのかわからない。

なんとなく、何もできないで緊張していた俺は時間がたつのを待つ。

物音がして、リビングにお姉ちゃんが戻ってくるのを感じる。

俺は余計に背筋が伸びるのを感じながらも、お姉ちゃんのほうを向く。


「着替えてきたんですね」

「さすがに、濡れちゃったから」

「そうですよね」

「ふふ、緊張しているんだね」

「えっと、そうですね」

「素直でよろしい」


お姉ちゃんは楽しそうに笑う。

そして、俺はそれを見て安心していた。

少し話をしていたときに、お姉ちゃんは席を立つ。


「そういえば、飲み物を用意して飲まないとね」

「でも、もう時間もたっていますし、大丈夫ですよ」

「そんなことを言わないで、どうせなら、飲み物を飲み終わったら帰るでいいでしょ?」

「そこまで言われたら、そうさせてもらいますね」

「ええ」


俺は言葉に甘えて、飲み物をもらうことになった。

お姉ちゃんからもらった飲み物は、コーヒーだった。

コーヒーか…

中学生としての俺とすればかなり苦手な飲み物だった。

飲みなれていないもの、俺は何も気づかずにそれを飲む。


「う…」

「ふふ、苦いのは苦手だった?」

「あの、いえ、そん…」

「どうかしたの?」

「その…」


おかしい、コーヒーを飲むと眠気が少なくなると聞いたはずだったのに、すごく眠たくなってきた。

俺は、気づけば眠っていた。


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