240話
「で、どうしてこういう状況になってるんだ?」
「仕方ないぞ、研究に必要なものを自分で手に入れたくなるというのは当たり前のことなのぞ」
「それはわかるけどな、危険な場所に一緒についてくるっていうのはさすがに、どうかと思うんだけどな」
「こう見えても、ワイはそれなりに強いぞ」
「なんとなくわかるけどな」
そう言葉にしているのは、ジーニアスだ。
俺たちは、地下にある研究所を後にして、地上に出てきていた。
マゴスの中央都市ではなく、一つ離れた場所にある都市。
そこでまずは様子を窺うことになったのだが、そこでは案の定というべきか、ジーニアスとアシストがついてきていた。
こういうところに一緒に来たがるのは、研究者としての性らしい。
まあ、近くにいたほうがものが見つかったときに、最終的に作りやすいというか、都合がいいのだろう。
俺はそう思って納得した。
それに、足手まといになるということが全くなかったから余計に口で適当に言ってるだけで済んでいるというところもあった。
というのもだ。
「ジーニアス様。ここから先一キロも敵意はありません」
「ご苦労ぞ」
「いえ…助手として当たり前のことですから!」
毎回のようにドヤ顔を披露するアシストは、スキルでかなり役に立っていた。
デンパスキルというものを使って人の位置を把握できるらしい。
かなり便利なものだと思ってしまう。
俺が使うと、確実によくないスキルだけに羨ましい。
そして、周りを把握できるということは、かなり役に立っているということだ。
「便利なスキルだな」
「当たり前ぞ。ワイの研究にはたくさん危険なものも必要となってきておったからぞ、それを手に入れるために助かっておるのだぞ」
「そうか」
アシストは褒められている間にも、ドヤ顔をさらに際立たせていた。
さすがに引くと言ってしまえば、怒られるのだろうか?
関係のないことを考えながらも、ようやくゆっくりできることに俺含めて、みんなは心を躍らせていた。
「違う服とか見てみたいわね」
「はい」
「わらわはおいしいものが良いのじゃ」
「叶はお兄ちゃんが行きたいところに行きたい」
「よし、それなら行くか」
なんでこういうことになったのかというのは、この後に行く、マゴスの首都に行く前にいろいろと情報を集めないといけないことになったからだった。
といっても、情報を集めると言いながらもやることは買い物などだ。
「それで、結局この面子なんだな」
「仕方ないでしょ、私たちはここのことわからないんだし」
「確かにそうだけどな」
「何かあったときに、人数が多い方がいいですよ」
「そうじゃぞ。わらわもご飯食べたいのじゃ」
「いや、ヤミ…お前は意味が違うだろ」
「そんなことはないのじゃ、わらわが一番まともなのじゃ」
「ただの食いしん坊なだけだろ?」
「そういうことをレディに言うのは間違っておるのじゃ」
「レディって年齢じゃないだろ?」
「うう、そういうことを言うのは酷いのじゃ」
「ヤミ、よしよし」
「アイラはやはり優しいのじゃ、胸がちと痛いがの…」
「よしよし」
「イタ、痛いのじゃ」
完全にいらないことを言ったな。
せっかく庇ってもらえるはずだったヤミは、アイラに頭を撫でられる勢いが、さっきの倍以上になっている。
まあ、胸がないという禁句を言ってしまったのだ、仕方ない。
俺はヤミの方を見ないようにしながら、町を見てみる。
マゴスでは、当たり前のことだけど、ローブを着ている。
魔法使い用のローブというのは、バーバルも着ていた長いものだ。
違うところは、色が違うところだろう。
俺たちが着ているのは、多くの人が着ている水色だ。
このローブの色というのは、最初にあったギルドと同じように、ランクを表しているものだと聞いていた。
だから、目立つことのないように一番多くある色にしている。
これで多少は目立つことはない。
帽子については、つけているのかはその人次第ということもあるだろう。
だから、町を探索していたとしても、そこまで目立つことはないと思う。
多少はになるが…
理由なんてものは簡単だ。
さすがに、はしゃぎすぎだ。
一応は、水色のローブというのは、魔法学生も同じものを着ているため、おのぼりさんということになるが、さすがにそれも度がすぎることもある。
怪訝な顔をされているだけなので、警戒されているという感じではないというところはよかったところなのかもしれないが…
「結局、どこから向かうんだ?」
「決まっているでしょ、まずはご飯よ」
「おお、さすがは気が合うのじゃ」
「わかった、それでいいか」
俺たちは、最初にご飯を食べるためにお店を見て回ることにした。
魔法使いが食べるご飯というのも気になるので、そこは俺も食べてみたいということもあった。
ということで、最初に入ることにしたのは…
「おお、これはおいしいのじゃ」
「いけるわね」
「はい。それにしても、ただしは、なかなか話術が達者ですね」
「さすがはお兄ちゃん。仕事もできてたもんね。これくらいは当たり前だよね」
「まあ、さすがにまずい料理を食べるわけにはいかないしな」
俺たちは、紹介されたご飯屋に入って食べていた。
このご飯屋に入る前にも、何人かの人に話しかけて、ここを教えてもらった。
やり方としては…
結局何かを買うのが一番いい。
最初は簡単なアクセサリーを買って、そこから服やご飯などのオススメを聞いたりして、それを広げていって、多くのオススメをされている場所に入ってご飯を食べているのが、今の俺たちだった。
ここでは、魔法飯という言葉が使われていた。
それがマゴスで流行っているご飯らしい。
どんなご飯かというと、魔法の粉を振りかけるらしい。
「中毒性があるものじゃないよな…」
「でも、ニオイは中華ですよ。お兄ちゃん」
「そうなんだよな」
魔法の粉と聞いて思うのは麻薬的なものだが…
アイラたちが普通に食べているのを見ると、大丈夫なのだろう。
最悪アイラに治してもらえればいいかと考えた俺は、食べ物を口に含む。
「こ、これは…」
「お兄ちゃん」
「チャーハンだな」
そう、美味しいチャーハンだ。
魔法の粉というのは、中華の元ってやつなのだろうか…
いろいろなものを混ぜた。
そう、昔食べたことがどこかあるようなものだ。
だからこそ、驚いた。
でも、どこかで俺はなんとなくこの国は、クロ以外の勇者がいるのではないのかということを思った。
こんなものが流行っているなんてことは、あきらかに召喚されてそれなりの時間がたっているということだ
味が似ているということは、誰かが開発したということが考えられるからだ。
まあ、そんな予感が当たるってことはないよな。
俺は自分にそう言い聞かせながらもチャーハンらしきものを食べ進めたのだった。




