239話
「それで、俺たちは何をしたらいいんだ?」
「ワイの研究で、あいつの研究を潰したいんだぞ」
「その研究ってのは…」
「あれぞ、狂気のマッドサイエンティスト。メイニアですぞ」
「メイニア?」
名前を聞いても誰なのかピンとこない。
疑問に思っていると、ジーニアスは言う。
「人形にすることで、魔力を無理やり上げる女ぞ」
「人形?」
「そうだぞ。生きている人を使い、感情をコントロールすることで魔力を底上げを行うのがそやつの研究結果からできた人形ぞ」
「ただし…」
「ああ、なんとなく誰かわかったな」
「なんぞ、君らは出会ったことがあるぞ?」
「まあな…」
エルフを誘拐するために、里に攻めてきたのを撃退した。
なんてこと言っていいことなのだろうか?
俺が躊躇しているところで、ヤミが言う。
「なんじゃ、そいつの手下っぽいやつなら、おぬしらが撃退しておったのじゃないのか?」
「それは、本当ぞ?」
「一応な」
「それはすごいことぞ。やはり話が合うやつは特別なんぞな」
「買いかぶりすぎだと、さすがに思うけどな」
「そんなことはないぞ。これで、ワイの研究をちゃんと頼むことができるぞ」
「研究って、なんなんだ?」
「これぞ」
俺はてっきり、ミィーアと呼ばれている目のまえにいる少女のことをなんとかすることだと思っていた。
でも、違うらしい。
見せられたものは、ただのレーザー銃に見える。
これがなんなのだろうか?
確かに、急に近代的を通り越して、未来の武器が現れたから驚きはしているが…
「さすがに見るだけではわからないぞな」
「当たり前だろ、それでわかれば、わざわざ見せなくてもいいんじゃないのか?」
「その通りぞ」
「じゃあ、もったいぶらないで教えてくれ」
「そうぞな。見せるのが速いぞな。アシスト、あれを用意するぞ」
「わかりました」
そして、すぐにそれが用意される。
目の前にあるのは、クッキーだ。
…
どう反応していいのかわからないでいる俺は、黙ってそれを見る。
周りのみんなも同じようで、さすがにどう反応していいのかわからないようだ。
その空気を察したのか、さすがのジーニアスも咳払いをする。
「ごほん…まあ、見てもらうのが一番いいぞ。アシスト頼むぞ」
「はい。では、照射」
ジーニアスはアシストにそういうと、クッキーにレーザー銃を向けて引き金を絞る。
黄色のビームのようなものが出たと思うと、クッキーは光に包まれる。
魔法の光なのだろうか、それがクッキーを包み、光が収まったと同時にそこにあったのは、小麦粉やバターで…
「材料なのか…」
俺が思わず口にしていると、ジーニアスはうまくいったからか、満足気にうんうんとうなずいている。
クッキーが材料に戻ったということは…
「これは、元に戻せる銃なのか?」
「さすがはワイが認めた男ぞ、ある程度何かすぐにわかるとはぞ」
「見たらなんとなくはな」
かなりすごいものだということはわかる。
でも、これがあるのなら、俺は一つ思うことがあった。
それを確かめるために、言う。
「これは、もしかしなくても人には使えないものなのか?」
「さすがですぞ。それをわかるとはね」
「わかるだろ…」
俺はほんの少し視線を逸らす。
それだけで、何を言いたいのかがわかったのだろう。
ジーニアスは笑う。
「天才のためには、犠牲はつきもの。それは、ワイもわかっていることだぞ」
「そういうものなのか?」
「当たり前ぞ」
そう口にするジーニアスは少し寂しそうだった。
でも、そうなるとこれを使って何をするというのだろうか?
「でも、人に使えないってなるとこれは何に使うんだ?」
「簡単なことぞ、不本意ではあるが、メイニアがもっているアーティファクトと組み合わせることで、これは完成させられるのぞ」
「ということは、俺たちはそれを手に入れたらいいのか?」
「そうぞ。一つのこと言って、ほとんどのことを理解してくれるとはさすがぞ」
「そんなことで褒められてもな」
「何を言っておるのだぞ。重要なことぞ」
「そうなのかもしれないけどな。結局は何を手に入れればいいんだ?」
「魔力を無効化できるアーティファクトぞ」
「まじかよ」
それを聞いて、俺はクロがあっちにいることを確信したのだった。




