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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
ヘンタイと過去

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238話

「地下にあるとは思ったけど、これはさすがに予想外すぎるな」

「なんじゃ、おぬしでもわからなかったことなんじゃな」

「当たり前だろ、ここは魔法の国だろ、さすがにこんなものがあるとは俺も思わないんだよ」

「お兄ちゃんの言う通りだよ。叶もこの世界でも初めてのものじゃないの?」

「どういう原理なのかわからないわね」

「ゆ、揺れますね」

「シバル、これはこういうもんだからな」

「そうなんですか、なかなか怖い乗り物なんですね」

「鉄の塊が動いてるからな、そう思っても仕方ないな」

「そうだぞ、しっかりと捕まっておるのがいいぞ」

「う、うぷ…」

「おい、アシスト…しっかりとするのだぞ」

「は、はうぷ…」


何が起こっているのかというと、今は電車のようなトロッコに乗っている。

これは何か?

研究所に向かうために必要なものらしい。

結局、俺の考えていたことと少し違うかったらしい。

地下にあると思っていた研究所だったけれど、また半分あたりの半分外れだった。

研究所は確かに地下にあることはあるのだが、この家の下にはないらしい。

というのもだ、研究材料を探すために、マゴスの各地に同じような木の家があり、そこから中央に向かって地下に列車のようなものを通しているのだ。

研究所は中央の地下にあり、今はそこに向かって進んでいる。

この世界に列車というものがあるのは驚きだが、かなり乗り心地が悪いというのも驚きだ。

土魔法で列車を動かしているらしく、原理は魔法を使えないので、詳しいことはわからないのだが、土を動かして列車を動かしているというもので、土を動かしているからか、かなり列車事態が揺れるのだ。

これにはさすがのみんなも驚いているが、俺と叶はそもそも乗り物に乗ってきたので、ある程度の揺れは許容範囲で、ちょっと揺れすぎとは思うがなんとかなっているし、シバルたちもその点に関してはかなり余裕そうだ。

確かに考えてみれば、馬車よりかは揺れていないような気もする。


「酔うなら無理をするなと言ったぞ」

「で、ですうぷ…」


一番心配なのは、アシストだろう。

完全に乗り物酔いをしている。

見るからに無理をしているのだが、ジーニアスについていきたいという一心で、頑張って乗っているのだろう。

その頑張りには敬意を表したいところだが、俺たちよりも年上だと思われる女性が、頑張って吐き気を我慢している様は、ちょっと何も言えなくなるのは俺だけじゃないはずだ。


「ただし、あれって大丈夫なの?」

「俺に聞くな。ただ、何かあれば逃げる準備をするしかないな」

「お兄ちゃん、袋とかってあるんだっけ?」

「それがあったら、さすがに差し出すからな」

「そうだよね」

「ああ」


さすがのアイラたちも、列車に乗って移動した途端に顔色が青くなっているのを見ると、さすがに心配だった。

薬でもあったらいいのだが、そんな都合のいいものがあるはずもない。


「アイラの魔法でなんとかならないのか?」

「私の魔法は、けがを治すとかだったら、使えるけど。普通だと、さすがに使えないわよ」

「まじかよ」

「だから、何かあったら対処してあげなさいよ」

「どうして俺が…」


そんなことを考えながらも、なんとかアシストは吐くこともなく、目的地に着くことができた。

俺たちは、グロッキーになっているアシストを避けて、案内される方へと進んでいく。


「ここが、ワイの研究所だぞ」

「まじかよ」

「すごいわね」


驚きの声を上げる俺とアイラと同じように、声を出さなくても全員が驚いているのがわかる。

アイラたちは見たことがないものに驚いているのだろう。

ただ、俺と叶は違う驚きだった。

それは、どこか見たことがあるものだったからだった。

ここから見えるものだったら、俺がわかるものであればポットや、電子レンジのようなものがある。


「お兄ちゃん、急に異世界って感じじゃなくなったよ」

「叶もそう思うか?」

「だって、お兄ちゃん。あれは電子レンジにしか見えないよ」

「だよな」


さすがに見えるものが、急に元の世界にあったものと同じに見えてしまったら、そう思うのは仕方ない。

ただ、使い方が違うのかもしれないけどな。

俺と叶は互いにうなずく。

あの見えるものに関しては今後聞くことにすればいいだろう。

俺と叶がそう思っているとは思わず、ジーニアスは扉を開ける。

そして、一目散に部屋の中にある大きな扉の前に行く。


「言い忘れていたけど、君らに手伝ってほしい研究っていうのは、こっちにあるぞ」

「この部屋か?」

「そうだぞ」


その扉は、俺たちでも見たことがほとんどないような厳重なものだった。

ハンドル式というものなのだろうか、扉にハンドルのようなドアノブがついていて、密閉をしているといえばいいのか、なんといえばいいのかはわからないけれど、かなり重要なものだということくらいはわかった。


「まあ、入って確認するのがよいぞ」


ジーニアスがそう言って先に中に入る。

俺たちも、少し警戒しながら扉の中に入った。

そこにあったのは、端正な顔立ちながらも体から下は見た目でわかるロボットの少女だった。

どういうことなんだ?

困惑している俺に対して、ジーニアスは言う。


「ワイの力になってくれ」

「どういうことだ?」

「ワイを助けてほしいんだぞ…」


先ほどまでと全く違い、力なく言うジーニアスに困惑しながらも尋ねると、体調が戻ったアシストが話をしてくれた。


「ここにいるお方は、ジーニアス様の幼馴染である、ミィーア様です」

「でも、顔しか…」

「はい、ミィーア様は魔力暴走によって、魔力回路である心臓が弾けてしまったのです」

「だって、そんなこと…」

「はい。普通であれば、魔力の根本である心臓よりも先に手などの魔力を込めた部分が無くなるのが一般的ですが、ミィーア様は限界を超えられてしまい…」

「だからって、こんなことって」


アイラ達がミィーアの方を見る。

俺と叶は魔力がない。

だからこそ、それがどんなものなのかはわからないけれど、相当なことが起こった結果だということはわかる。

そこで思い出したのが、レックスでの最後の出来事だった。


「(おい、スター)」

【なによ】

「(考えてること、なんとなくわかるだろ?)」

【わかってるわよ。だったら、あの魔法使いの子が危ないってことはわかるでしょ】

「(やっぱりかよ)」


俺の嫌な予感はどうやら当たったようだ。

でも、魔力暴走っていうのが起これば、目のまえの女性のようになるのか?

俺がヘンタイ眼で視た魔力暴走は、レックスであったモンスターのような異形に変えられた人のことだ。

もしかしなくても、ここにいるミィーアと呼ばれる少女や、同じような魔力暴走すれば、普通であれば魔力の負担が大きすぎて体の一部が欠損するということなのだろう。

でもだ、だったら俺が魔力暴走なのかと感じた、モンスターになるあれはなんだったのだろうか?

魔力が多ければ強い。

それは人もモンスターも同じだということがなんとなくわかる。

ということは、もしかしなくてもバーバルは同じように、さらに魔力をあげるための何かを施されるというのが、この後に起こりそうなことだ。

そうなったバーバルはモンスターになるのか、さらなる魔力を手に入れるのか…

嫌な予感は強くなりながら思う、早くバーバルを助けないといけない。

俺はそう思いながら手を握りしめたが、すぐに動くことはできなかった。

このまま行っても助けられるのかがわからなかったからだ。


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