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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
ヘンタイと過去

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235話

「何事もなく、ここまでこれたな」

「いや、あったでしょ」

「アイラ、お兄ちゃんが言ったんだから、何もなかったの」

「どういう理屈なのよ。それに叶…あんたは、少し前まであんなに疲れてたはずでしょ」

「ふふん、叶はこう見えても、お兄ちゃんの匂いをしっかりと堪能したら回復するのも早いんだからね」

「そうなの、よかったわね」

「そうです。だから、今のうちにお兄ちゃんの匂いを補充します」

「ちょっと!」


叶はそう言いながら俺に抱き着く。

それに対してアイラが怒る。

どこかで見た流れだな。

そんなことを考えながらも、俺たちはマゴスに向かうための馬車に揺られている。

ヤミも俺たちと同じように荷馬車に乗っていたが、早々にアイラと叶の応酬を見て、やれやれといわんばかりの顔をして運転しているシバルの隣に座っていた。

あのあと、結局はエルフの里を救ったからということで、一晩は泊めてもらい。

ラグナロクのメンバーと、捕らえた女性たち、エメはあの後みんなでどこかに帰っていった。

基本的には、エンドに任せておけば悪いことにはしないだろうと思ってしまう。

エンドが憎んでいるというべきか、目の敵にしているのは勇者だということがわかっているからだろう。

まあ、今は考えるのは違うことだけどな。

俺は昨日のことを考える。

次に会うであろう、俺の過去にいた存在についてだ。

でも、本当にマゴスで出会うのか、道中で出会うのか…

それがわからないからこそ、どこか心あらずという風になっているのは仕方ない。


「ただし、そろそろ着きそうですよ」

「まじか?」

「まじじゃ」


威嚇しあう二人を無視して前にいた二人の声を聞いて、俺も荷台から顔を出して前を見る。

そこでは大きな柱のようなものが何本も立っているのが見えた。


「あれはなんだ?」

「なんじゃろうな」

「一番知ってるようなヤミが全くわからないってどうなんだよ」

「わかってるとは思うのじゃが、わらわは年寄りポンコツじゃからな」

「それを自身をもって言えるのはさすがはヤミってところだな」

「ない胸をはるのじゃから、当たり前じゃろ」


そう言ってない胸をしっかりとはるのを見ると、残念でしかない。

まあ、俺もヤミには期待していなかったので、ここは一番信用できるであろう隣のシバルに目配せをする。


「えっと、ボクも詳しいことをあまり知らないのですが、あれは魔力結界というものです」

「魔力結界?」

「はい、セイクリッドでは魔力を探知するものだったと思うのですが、このマゴスでは魔力をそもそも通さないのです」

「え?ということは入れないのか?」

「それは、ボクも詳しくはわからないのですが、何かが必要だということだけは聞いたことがあります」

「まじかよ、それが必要ってことなのか」

「そうなりますね」

「ちなみにどこで手に入れられるかとかあるのか?」

「えーっと、それについてボクは全くわかりませんね」

「まじか」


こういうことなら、マゴスへの行き方というのを聞いておくべきだったな。

そんなことを今更考えても仕方ないと思いながらも、俺たちは一度マゴスの結界に近づくことにした。

なるほど、なるほど…

触ってみてすぐにわかることだったが、普通にはじかれるというべきか、入ることはできない。


「柱を壊せればって感じはするが…」

「そんなことをすれば、マゴス全部を敵に回すことになりますよ」

「そうなんだよな」


セイクリッドでは、特に何も考えていなかったし、ミライがいたという点も大きい。

セイクリッドのことがわかっているし、さらには未来が視えることでかなりの危険というべきか、それを回避できていたので、うまくいったことだった。

でも、今回はそういうことがなく、さらにはそもそも壊せるのかも怪しいので、余計にどうしようかと悩むところだ。


「やっぱり一番いいのは、侵入する方法を考えるのがいいよな」

「ただしはそう思うのですか?」

「まあな、下手に破壊するのもどうかと思うし、そもそもそんな簡単にできるものじゃないからな」

「確かにそうですね」

「ただし、何を言ってるのよ。セイクリッドでは暴れまわっていたでしょ?」

「いや、そのときは隣にミライがいたからできたことだからな」

「それはそうなのかもしれないけど…その拳でできるのかなって」

「急に考えが脳筋すぎるんだよ。どうして普通に入るって発想にならないんだよ」

「そんなの、私に聞かないでよ」


そっぽを向くアイラに、まじかと口にしそうになる。

あの戦いの後から、さっきの馬車での荷台でのことといい、かなりわがままな感じが出ている。

それがいいことなのかはわからないが、前よりもさらに自分を出しているという感じはなんとなく受けているし、シバルがどことなく嬉しそうなのを見ると、いいことなんだろうと思いたい。

ただ、俺への当たりが強くなったのはかなり痛いところだ。

前よりも好きという気持ちを向けてくれているのはいいのだけど、そのベクトルが強いのが気になるところだ。


「とりあえず、近くの町に行くのが一番いいんじゃないのか?」

「そうね。お腹もすいたしね」

「情報を集めないといけませんね」

「叶はお兄ちゃんの言うことなら、なんでもいいよ」

「よし、町にレッツゴーなのじゃ」


俺たちはそのまま結界沿いに進み、町を目指した。


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