234話
「それで?聞かせてくれるんだよな」
俺は休憩に泊まっている部屋の中でスターに話しかけていた。
少しの間の後に声が聞こえる。
【仕方ないわね】
「仕方ないって、俺には当然の権利だろ」
【確かにそうなんだけど、もう少しは秘密にしたかったのに】
「いやいや、秘密にって言われてもな」
【仕方ないでしょ。それに、忘れてたほうも悪いと思うけど】
「それはすまない」
だってな…
そのあとにいろいろあったからな、そのせいで女性のことが苦手になっていたんだから仕方ない。
ただ、そのことは記憶を見ていたスターもわかっていたようで、ため息をつく。
【わかっていたわよ。記憶を覗いたときからね】
「そうなのか?」
【だから、この世界に召喚する前に、あんまり何かを言いたくなかったのよ】
「なるほどな。だから、あきらかに強引にこの世界に行かされたのか?」
【そういうこと。あたしだって、少しはただしに話しておきたいことがあったんだけど、記憶のことがわかっていたから、下手に声をかけられなかったの】
「まあ、そうだよな」
俺が女性を苦手になった理由というべきか、童貞を卒業できなかった理由というべきか…
それについては、俺が一番わかっていた。
ただ、俺はそのあとに続くスターの言葉に心臓が跳ね上がる。
【気を付けて、あの子も他の勇者として、この世界に召喚されたはずだから】
「まじかよ」
【だから、気を付けるしかないわよ】
「どうして俺ばかり…」
【それは、簡単なことでしょ、ヘンタイだからよ】
「いや、そこに関しては違うだろ」
【どうだが、昔からあたしの下着とかを見て興奮していたくせに…】
「それは男の生理現象だろ?」
【でも、それでお父さんしか使えなかったはずの気を使えるようになったんだから、さすがよね】
「まあ、それに関しては俺もよくわからないんだけどな」
【大丈夫、あたしもよ】
「まじかよ」
【当たり前じゃない。さすがのあたしも嘘は言わないわよ】
「だったら、どうして俺はあのときから修行に付き合わされていたんだよ」
【そんなことは簡単よ。お父さんがただしに何かを感じたからじゃないの?】
「確かにそうだな」
【ええ…】
「ちなみに、あの人は?」
【言わなくてもわかるでしょ?】
「そうか…」
その言葉で理解する。
死んだということだろう。
でも、そうなると…
「もしかして、入れ替わりでスターが神になったっていうのか?」
【そういうこと】
「まじかよ」
これでわかった。
確かに神様がいる場所にいる女性が、全員どこかの勇者に連れていかれたとなると、スターがほかの神から狙われるという理由も理解できる。
ただ、そこで理解できないのが、ほかに召喚された勇者たちだ。
叶以外が、全員俺の敵としか思えない存在だから…
「結局、俺は何をしたらいいんだよ」
【そんなの、簡単な話よ。魔王を倒して、あたしのことを殺してくれたらいいの】
「どういうことだよ」
【…】
「いや、無視するなよ」
急に無視したスターに俺は怒りを覚えながらも、今の言葉を考える。
本当にスターが言っていることが本当だというのなら…
ヤミを倒して、スターを殺せと願えばいいのか?
わけがわからない。
それに、嫌な記憶も思い出す。
俺が女性を苦手になった理由。
その張本人が、この世界に召喚されているだと?
俺は会うことになるってことだな。
あの女性に…
「結局わからないことだらけじゃねえかよ」
俺はそう言葉にしながらも天井を見上げる。
結局、この世界に連れてこられたのは、スターのため…
そう思いたいのに、召喚される勇者は俺がどこか知っているやつばかりだからだ。
俺をなんとかしたいのか、それともスターをどうにかしたいのか…
神様は結局何がしたいのかわからない。
俺はただ、疲れをとるために強引に眠りについたのだった。




