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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
ヘンタイと異世界のこと

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233話

「アイラ!俺も傷を先に治してくれ」

「大丈夫よ、一発殴れば全部治してあげるから」

「一発でも致命傷な気がするんだけど」

「そんなことを言わずにさっさと一発受ければ治すって言ってるでしょ?」

「それが嫌なんだって言ってるだろ?」


黒い穴から出てきたのは、アイラ達であちらも同じように俺たちと戦った別の人をつれていたことを確認して、戦いに勝ったことはわかったのだが…

そのあとに、急に追いかけられる俺という状況に何を言っていいのかわからない。

せっかく治してもらえると思っていたのに、一発殴らないとダメとかどういう理屈なのかがわからない。


「なあ、どういうことなんだよ」

「いいから殴られなさいよ」

「さすがに理由がわからないのに殴られてたまるかよ」

「しょうがないわね。殴ってほしくないなら、その被ってるものを私に渡しなさい」


その言葉とともに、アイラは立ち止まり手を伸ばす。

俺も立ち止まりはしたが、交戦する。


「なんでだよ」

「ただしが被らなくていいものでしょ?」

「そ、そんなことを言われるとは…」


戸惑っている俺に、アイラは得意気に笑っている。

くそ、どうすればいいんだ。

俺はこの場をうまく切り抜けるためにどうするのかを考えていると、エメがすごすごと口を開く。


「あの、でしたら返すのはわたしに…」

「だが断る」

「え、でも…」

「そうよ、まずは私に返しなさい」

「でも、それはわたしので…」

「「うるさい」」

「はい」


どうすればいいんだ。

これまでの、ちょっとだけ引いた感じの、遠慮が少しはしていたアイラと違うぞ。

何が起こったんだ?

俺が疑問に思っていると、声が聞こえる。


【成長したってことでしょうね】


なるほどな。

その言葉で納得する。

気絶した叶がシバルに抱き抱えられて帰ってきたところから、なんとなくわかっていたことだけどな。

ここは仕方ないということか…


「これはあげてもいい」

「ようやくわかったのね」

「だがな、アイラの下着を俺にくぶへえ」

「だから、そういうことを言うんじゃないのよ!ヘンタイ!」


そして俺は殴られた。

言う瞬間に仕方ないとは思っていたけれど、ケッペキスキルが発動しているのかいいパンチだ。

俺はそんなことを考えながらも、地面を転がった。


「酷いめにあったな」

「ただしが悪いんでしょ」

「それを言われると何も言うことはないな」

「まあ、一応完治してるから、痛くないでしょ?」

「確かに体に痛みはないけどな、いろいろそれだけじゃない気がするんだが」

「まあ、いいじゃない。うまくいったんだしね」

「そうなのかもしれないけどな」


俺たちは捕らえた四人を見た。

ラグナロクのメンバーはメンバーで少し離れて話をしているので、ここにいるのは俺たちだけだ。


「で、どういう状況だったんだこれは…」

「は、オレらのことか?」

「そうだな。目的はある程度聞いたけど、これでよかったのか?」

「まあな、オレたちのご主人様のやることを、オレたちが達成できなかっただけだからな」

「そういうものかよ」

「そうだ」

「ちなみにだけど、お前たちのご主人様はバーバルに何をする気なんだ?」

「それはもちろん決まっている。再教育だな」

「なるほどな」

「オレたち失敗作とは違うんだ、再教育さえすれば完璧な存在だからな」

「そんな気はするな」


魔法使いとして、最初からどこか突出した存在だったバーバル。

再教育というのが、どういうのかがわからない以上は、今のところ何か言えるわけじゃないが…

あいつには絶対に会いに行かないといけないということだけはわかる。

そんな俺たちのことをわかっているのだろう、先ほどから口の悪い、ドンと呼ばれている女性は言う。


「は!オレたちはただの失敗作だけどな。バーバルは違う。完成されたご主人様の成功作。だからな、せいぜいやられないことだな」

「心配ありがとな」

「心配じゃねえよ。オレたちとは違う、魔力もすべてが完璧なバーバルにお前たちは敵わないからな」

「魔力な…俺にはないからわからないけどな、魔力だけで強さが決まるってわけじゃないからな」

「ちっ…そういうことを平気で言う、お前みたいなヘンタイが嫌いだな」

「そうかよ」


俺はぶっきらぼうに返事をして、ここを離れようとしたところでアイラに頭を叩かれる。


「なんだよ」

「ただし、さっきからどこか格好つけてる?」

「いや、そんなことは全くないぞ」

「いや、こやつはつけておるのじゃ」

「おま、ヤミ…」

「なんじゃ?シバルもそう思っておるのじゃろ?」

「ええっと、ただしすみません」

「まじかよ。叶は、まだ寝てるとはいえ、俺の味方がいないだと」

「いつもの行いのせいでしょ」

「そうだがな」

「だったら、格好つける前に、この子たちをどうするのか、考えてよね」

「それは、考えている」

「本当に?」

「ああ…」


俺は考えていた。

こういうときに頼れる存在のことを…


「おーい、エンドさん?」

「はい、呼ばれましたか?」

「ちょっと、ただしどうしてあいつを呼ぶのよ」

「仕方ないだろ、俺たちはこいつらをすぐに連れていくとかできないんだからな」

「そうだけど」


アイラは不満そうだが、ここは仕方ない。

だって、俺たちには転移系の何かを持っている人がパーティーにいないのだ。

転移系ができるのはエルだけなので、ラグナロクに任せるのが一番いいだろう。

エンドは俺の顔を見て、わざとらしくうなずく。


「わかりました。彼女たちはそうしますね」

「いや、何も言ってないでしょ。何よ、その私にはわかってるって感じ」

「いえ、でも実際にわかっていますから」

「そうなの?」

「いや、俺に詰められてもな」

「ふふふ、大丈夫です。わたしもわかっていたことですから、こうなることは最初からね」

「それなら安心できるな」

「だから、通じ合ってるのうざいのよ」


アイラにそんな罵倒されながらも、襲ってきたラクたちの今後は決まった。

そしてこの後は…


「それじゃ、休憩したらいくか」

「はい」

「そうじゃな」

「いいけど、ただしはもう一発殴らせて」


俺たちはマゴスへ向かう前の休息をとることにしたのだった。


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