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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
ヘンタイと異世界のこと

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226話

「お前のところのやつは頭がおかしいのか!」

「そういうことを私に言わないでよね」

「はい、ボクたちにはわからない何かが見えているのが、ただしですから」

「うんうん、お兄ちゃんのやることはなんでも正しいからね」

「どういう理屈なんだよ」

「わらわじゃって、わかるはずないじゃろ」

「何をやっているんだ、こいつらは…」


そう、私たちはエルによって、どこかわからない場所に連れてこられていた。

そして、やっていることはちょっとした喧嘩だった。

気持ちはどこかわかるとしても、ただしとはそういう存在なんだから、私たちが何かを言ったところで、どうしようもできないことを考えてほしい。

確かに、かなり理不尽なことをされたと思ったけど、それも含めてただしなのだから、そんな無茶苦茶なことすらもどこか当たり前になっているのが、私たちの冒険だったのだから…

だから、ここに巻き込まれて連れてこられたエルフの数人が、こいつら大丈夫なのかと思うのも無理はなかった。


「ギャギャ!」


大型のゴブリンは、そんな扱いに無視をされていると感じたのだろう、大声とともにその大きな足で踏みつけようとするが、その足は持ち上げた状態で止まる。


「さっきは最初だったから、ちょっと油断したけど、これくらいはね」

「なんじゃ、さっきもそうしておればよかったのにの」

「えー、正直お兄ちゃんが見てないところなんかで頑張りたくないんだもん、別によしよしもされないんだし」

「なんじゃ、おぬしはいつもあやつのことで動いておるのじゃな」

「当たり前じゃん、あんなにカッコいいお兄ちゃんなんだよ。そのために動くのは当たり前でしょ」


叶がそうテンション高く言うのを聞きながらも、私は少し想像してしまう。

確かに、ただしはカッコいい。

颯爽と現れて、私たちを助けてくれる。

ただ、服装が残念というところを覗いてになるのだけれど…

それを感じたのは、私だけではなく、隣のシバルと顔を合わせて苦笑する。


「ギャギャ」

「おい、お前ら!」


完全に無視をされた大型ゴブリンは、それに怒ったのだろう、そんな声とともに、振り上げていた足をおろし、右手を振り上げる。

その攻撃に驚きを隠せないエルフの人は私たちにそう声をかけるが、心配は誰一人としてしてなかった。


「我の前に絶対に通さない聖なる壁を作りたまえ、ホーリバリア」


私は魔法を唱える。

上に展開されたバリアは、大型ゴブリンの拳をそらす。

普通に展開すれば破られてしまうこともあるけれど、これであれば多少のことはなんとかなるということを知っている。


「さすがです、アイラ様」

「これくらいはできないとね」


私は少し得意気にそう口にしたが、それに一人突っかかってくる。


「ふーん、正面から防げないんだ」

「防げないんじゃないの、防がないだけだよ」

「本当に?」

「当たり前でしょ!だって、無駄に体力を使うなんてことをするのは、それこそダメなことでしょ?」

「でも、そんなことしてたら、いざとなったときに防げないんじゃないの?」

「脳筋な考えだけだとダメでしょ?」

「口ではうまく言えるよね」

「ただしから、教わったことなのに?」

「え!お兄ちゃんに?」

「そうよ!」

「おかしい、叶にはアドバイスなんかほとんどしてくれなかったのに!」

「そんなこと、私に言われても…」


むきーとばかりに、嫉妬で怒る叶を見て、どこか優越感にひたる。

そんな私たちを見て、ヤミがやれやれと口にする。


「こやつらは…さっさと終わらせるべきなのじゃ。ドラゴンネイル!」


その言葉とともに、ヤミがドラゴンの爪によって大型ゴブリンを削り取る。


「ギャアアアアア」


大絶叫とともに、大型ゴブリンは膝をつく。

私は右手を上に掲げた。


「叶!」

「もう、わかってる」

「我の手に、守るための聖なる力を与えよ。ホリージャベリン」

「咲き誇れ、華」


私のホーリジャベリンが膝をついた大型ゴブリンの頭に飛んでいき、叶は何かを口にしたかと思うと、大型ゴブリンの下から大量の何かが、大型ゴブリンに傷を与えていくのを見る。

技ってことなの?

そして、その二つによって大型ゴブリンは倒れたのだった。

終わったことに安堵しながらも、以外に弱かったことに、どこか驚いた。

それはどうしてか?

だって、こんなことなら私たちをここに連れてくる理由がなかったはずだったからだ。

そう思ったときだった。


「え?」

「叶!」

「ちっ、これだけ油断させても、致命傷じゃないのかよ」

「そんな悲しいこと言わないでくださいよ」

「また泣いてるのか?面倒くせえやつ…」

「その言葉が、人を傷つけることを考えてくださいよ」

「はああああ!」


気づいたときには、叶が剣によって斬りつけられていた。

シバルがそっちに向かっていく。

叶は斬りつけられて、倒れそうになりながらも、距離をとる。


「アイラ、ごめん」

「大丈夫よ、心配しなくても回復させるから…我の周りを聖なる光にて癒しを与え給え、ホーリーヒール」


私の魔法によって、叶に回復を施す。

傷口は一瞬回復して、すぐに元に戻る。

どういうこと?

わけがわからなくなっている私に、斬りつけた女が言う。


「うんうん、やっぱりこの武器で正解だったな」

「どういうことなの?私の魔法で回復しないなんて」

「そんなの、簡単なことだろ!この強化されたこっちの方が魔力が高いからだよ」

「なんで…」

「そういう武器ってことなんだ」

「叶!」


叶は少し血をにじませながらも立ち上がる。

その姿に女は舌打ちをしながら言う。


「ちっ、素直に寝てればいいのによ」

「こういうときに、叶の力が必要だからね」

「立ち上がったよー、ドンちゃん」

「うるさいぞ、ウレ」

「だって、だって…」


どういうこと?

二人のテンションといい、おかしい点が多すぎる人の登場により、戸惑いが隠せない。

それに、魔力が高いから、叶に私の回復魔法が効かないっていうのも納得できない。


「どういうことなのよ」

「なんだ?ここまで言われて、察せないとは、本当に大丈夫か」

「なんですって」

「アイラ様、ダメです」

「そうじゃぞ」


怒りに任せて前に出ようとしたところで、シバルとヤミが私の前に立つ。

それによって少し落ち着くことができた。

でも、状況は変わらない。


「だったら、あたいの出番だね」


そう思っていたとき、エルが二人の下にゲートを作りだす。


「おい」

「もう、怖がらせないでよ」

「なんだと」


ただ、そのゲートはうじうじとしている方の女性によって破壊される。

何がどういう状況なのかはわからない。

でも、よくない状況だということだけはわかった。

ただしなら、どうする?

私は、頭の中でそれを考えた。


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