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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
ヘンタイと異世界のこと

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222/382

221話

「ちょっと、最初の予言の話よりも行動が速くない?そう思うでしょ?」

「何を言ってるのか、わからねえんだが」

「いいのよ、わからなくても」

「そうなのか…」

「そうよ。あと、後ろの奴らは信用できるの?」

「一応我の精鋭だからな」

「そのわりには、笛の音に操られてたみたいだけど」

「それは、我より魔力が多いものの音色であれば体の言うことをきかせてしまう笛がいけないんだよ」

「そういうのを言い訳っていうのよ」

「た、確かにそうだな」


私の横には少し前に戦ったことがあるオーガキングがいるが、どこか申し訳なさそうだ。

理由は簡単だった。

先ほどの笛の音によって操られていたからだ。

このエルフの里を襲うというふうに…

だから、私の槍で貫いて倒さない程度にダメージを与えて、笛によるしがらみを解いた形だ。

普通の弱いモンスターであれば、貫かれるだけで倒してしまうくらいには強烈なものらしいので、これで倒れないということは、一定以上の強さであることには変わりなかった。

だから、使えると思った私は一応一度会ったことがある、このオーガに槍を突き立てた。

私が強くなったからか、正気を失ったからかはわからないけれど、オーガキングの単調な攻撃は弱く、私ですら簡単にさばけるほどだった。


「それで?あなたたちは、これからどうするの?」

「ほかの奴らのところにいって、まあ…倒すしかねえよな」

「そう」

「仕方ない。我らは魔王様の命令を聞くために生まれてきたようなものなのに、それ以外にいいようにやられるなんてことは、最悪の気分だ」

「そう思うなら、元凶をやっつければいい話じゃないの?」

「無理だ。我らはまた笛の音で操られてしまうだけだからな」

「そうなんだ」

「それが、この世界の理だからな」

「え?」


どういうことなのと、聞こうとしたところで、声がする。


「アイラ様」


どうやら、シバルと合流できたみたいだ。

そのことに気づいたオーガキングは足を止める。


「じゃあな、我らとはここでお別れだ」

「え?ちょっと待ちなさいよ!さっきの気になったことを教えなさい」


先ほどの言葉が気になった私がそういうが、オーガキングは豪快に笑うという。


「ガハハハッ、そういうことはな。あの男に聞いたらいい」

「どういうこと?」

「すぐにあの男なら、この世界の理に気づくことができる。あの男が異質だということをしっかりといえばな」

「そーなの?」

「ああ」


その言葉を言って、オーガキングは去っていく。

シバルたちはオーガキングを睨むようにして一瞥すると、合流する。


「アイラ様、先ほどの方たちは?」

「リベルタスで出会ったあのオーガキングたちね」

「そうなんですね。あの方たちは、予言には含まれてませんでしたね」

「そうね。だから、なんとなく助けたのよね」

「そうですか」

「うん、それで?シバルの方はどうだったの?」

「はい、ボクたちが見に行った場所は黒い炎に焼かれて、そこをモンスターたちが進行してきていました」

「黒い炎って、やっぱり…」

「はい。あの男で間違いはないと思いますが、姿は見ませんでした」

「そっか…そこは予言通りね」

「はい」

「なんじゃ、話し合いは終わったのか?」

「ヤミ、あなたも、もう少しは会話に加わりなさいよ」

「だっての…その会話に入ったところで、なんとなく、あやつがすべてを破壊しそうじゃからな」


ヤミがそう言いながら、やれやれと首を振る。

確かに、それはそうなのかもしれないけど、さすがのただしでも、そこまでは考えなしに動かないだろうと思ってしまう。

予言を聞けば、そんな勝手なことをしようとは、私たちは思わなかった。

エルフの里にいる人たちが視ている予言はどんなものなのかはわからないけれど、私たちが聞いたエメの予言はかなり酷いものだった。

だって、エルフの里がなくなるというものだったから…

私たちが戦うことによって、確かに最初のうちはなんとかなるらしいのだが、それもここに攻めてくる相手が本気になるまでの話しということだった。

それが、バーバルを連れて行ったあの女だということは、なんとなく理解していた。

バーバルを連れていかれることを死守するために、私たちがあそこで戦っていれば、確かにバーバルを取り戻すことができたのかもしれない。

そこまでは予言では、まだはっきりとしないと聞いた。

だけど、私たちが戦うことで、さらにモンスターの進行が増え、そのモンスターたちがエルフの里を破壊する。

そのことは予言で視えていたとエメは言っていた。


「確かに、私も本当に信じたわけじゃないけどさ…」


あれだけ必死にお願いをされてしまえば、断るというのも違うと思っちゃったのだから仕方ない。

困った相手のお願いを聞くというのも、冒険者として必要なこと。

そう、私があこがれた物語でも、そういうシーンはあったのだから…

だから、私がやりたいだけというのが、正直なところなんだからね。


「そういえば、叶はどこに行ったの?」

「えっと、師匠はあちらに…」


シバルがそう言って指さす方向では、叶がモンスターをなぎ倒していた。

これ、大丈夫なの?

私がそう思って固まっていると、ヤミはそれを見て笑う。


「なんじゃ、やっぱりあやつの妹じゃな。好き勝手やりおるな!どれ、わらわも一つ、混ぜてもらうとするのかの!」

「ちょっ、ちょっとヤミ!」


私の制止の言葉を聞く前にヤミは駆けだす。

本当に、どうしてこうなるのよ。

私はシバルの顔を見ると、お互いにうなずく。

こうなってしまったら仕方ない。

なるようになれと思った私はシバルと二人に向かって駆け出した。


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