表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
ヘンタイと異世界のこと

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

214/382

213話

「アイラ様」

「シバル…」

「うむ、監視されておるのじゃ」

「嫌な気分ね」


私たちは、食事を終えると固まって移動していた。

というのも、よそ者ということもあって、私たちは自由に行動できるというものではなかったからだ。

一応、食事会も終わった私たちは、町の観光ということで案内をされてはいるが、それでも私たちの気分が乗らないのは言うまでもない。


「こちらがこの里の中心になります」

「はい」


そこにあったのは噴水。

ただ、かなり神秘なもので、普通であれば石があって、水路などから引いてきた水が流れるものだというのに、ここにあるのは水色の石。

そこから綺麗に水があふれ、虹ができている。

周りには男女がいることから、そういう場所だということもなんとなくわかる。

ヘンタイだけど、ただしとこういうところで二人きりになるというのもいいと思ってしまう。

次に見せられたのは、エルフの里で作られているいろいろなもの…


「服は白ばかりなんですね?」

「はい。エルフは清廉潔白と言われていますから、白がやはり似合うのです」

「そうですか」


そういうものなんだと疑問に思いながらも、私たちは見て回るのだが…

さすがに、ここまで不自由だと鬱憤もたまるわけで、案の定一人がいらいらと口にする。


「ああ、本当に…お兄ちゃんとこういうことをしたいのに、どうしてこういうときに邪魔ばかりはいるのかな?おかしいでしょ、だって叶はようやくお兄ちゃんに出会えたんだよ。だったらおかしいよね」

「おい、アイラ!おぬし、なんとかするのじゃ」

「え、私?」

「当たり前なのじゃ!こういうときにあやつに代わって抑えることができるのはおぬしくらいしかおらんじゃろ」


叶の独り言を聞いていたヤミにそういわれるが、私だってここまで我慢している。

気持ちとしては、どっちかというと叶と同じだった。

もうそろそろ、ただしに強引に会いに行っても大丈夫じゃないの?

そんな思いが行動に現れそうになったときに、それは起こった。


「やっぱりイラついているみたいね。でも、ここで暴れるのはあたいたちとしても、まだダメだからね。あたいらについてきてもらうよ」


そんな言葉がどことなくから聞こえたと思ったら、私たちは何かにずぼっと飲み込まれた。

すぐにお尻に衝撃がくる。


「ちょっと、エル。お願いはしましたけど、さすがに急に連れてくるというのは、まずいんじゃないの?」

「別にあたいだって急に連れてくるのはやなんだけど、ゲートを広げて会話を聞いていたら物騒なことを言い出すからさ、仕方ないだろ」

「そうなのかもしれないけど、うちらにも少しは準備というものが必要ですからね」

「そうは言ってもやってもらわないといけないんでしょ?」

「そうですが、本当にできるのですか?」

「できるのか、あたいはわからないけど、あたいらのボスがそう言ってるんだからできるんじゃないの?」

「はあ、勝手にラグナロクなんて組織に加入したと思ったら、これですか…」

「これでも、ちゃんとピンチのときには駆けつけてやってるだろ?」

「そうですが…」


私たち四人が何かに巻き込まれて、行った先では女性二人が何かを言い合っていた。

どうやら何かをしてほしくて、この場所に連れてこられたということで間違いはない。

問題は、その相手がラグナロクのメンバーでもあり、私は少ししか知らない相手の、ダークエルフの女性だということだ。

状況が理解できずにいると、女性二人は私たちの方を見る。


「すみません、急にこんなところに連れてきてしまって」

「別にいいんだって、あたいが連れてこなかったら、今頃捕まっていただけだしね」

「エルは少し黙ってて」


すぐにいらないことを言ったとされるエルと呼ばれたダークエルフの女性にそういうと、隣にいた女性は私たちに頭を下げる。


「すみません、この里を救ってもらえませんか?」


本当に、理解できない状況に、私たちはただ固まるのだった。

だって、さすがに急な出来事すぎる。

何も言えないでいると、さすがは年長者というべきなのだろう、ヤミが最初に言う。


「なんじゃ、事情が全くわからないのに、救ってくれと言っても、わらわたちには理解ができないのじゃ」

「そうですよね…それについては、説明をさせてください」


その言葉とともに、女性は顔を上げて私たちの方を向く。

そこで、私はあることに気が付いた。


「その目、どうしたの?」

「これは、至らない自分が招いた結果というものです」


私は驚いた。

それは、両目が糸のようなもので縫われていたからだった。

さすがの異様な光景に、私たちは息を吞む。

ただ、そこでも一人だけは変わらない人もいた。


「ねえ、そういうのはいいから、お兄ちゃんのもとへ連れて行ってよ」


異様な状況だというのに、叶だけはただしに会いたいということだけを口にする。

それに対して、女性は笑う。


「確かにそうですね。無理に連れてきてしまって申し訳ありません」

「謝る前に早くー」


急にわがままというべきか、我慢の限界から兄であるただしに会いたい欲が強く出てしまった叶に、さすがの私たちも苦笑いしかできなくなる。

そして、そんな叶を見て、ダークエルフの女性は私たちに声をかけてくる。


「なんだ、あんたらのところにはまたヤバいやつが仲間になったのか?」

「やばいわけじゃないのよ、少し兄であるただしのことが好きすぎるだけだから」

「うげ…やっぱりあいつの関係者じゃない」

「それについてはごめんなさい」

「いや、あたいたちも何も確認することなくここに連れてきてしまったから、謝ることではないんだけど、さすがにすぐには帰せないってこともわかってほしいんだけど。それに、帰るのなら、さっきの場所になるんだけど、大丈夫なの?」

「そうですね。私は嫌ですが…今の叶には、その言葉が届いているのかもわかりませんからね」


そう、叶は目が見えていないと思われる女性に詰め寄っていて、私たちの話しを全く聞いていない。

さすがに駄々をこね始めたことによって、その女性もおろおろとし始めるという事態になってしまっている。

そろそろかわいそうだよね。

私は止めに入ることにした。


「叶?」

「アイラ、今叶は忙しいの後にしてくれる?」

「あの、あの…」


さすがに勢いが強すぎて目のまえの女性が戸惑って何も言えていないというのに、気づいていない。

ただし、妹のことくらい、しっかりと教育しなさいよね。

今回ばっかりはなんとかするけど…

私は持っていたただしの服を取り出した。


「これはお兄ちゃんの匂い!」


それに対して、さすがは叶というところだろう。

ただしの匂いがするとなれば、すぐに反応するというのが、叶だ。

ただしに何かあれば、そういうものが有効なのかもな。

なんてことをチラッと話していたのを覚えていてよかったと、このときは思った。

決して、私が好きでもっていたというわけじゃないことを言っておく。

ようやくというべきか、話し合いができる状態になった私たちは、ここに連れてこられた意味を聞くことにしたのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ