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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
ヘンタイと異世界のこと

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209話

俺たちはマゴスへ向かうために、馬車に揺られていた。

レックスではいろいろなことが起こったが、仲間も増えて少しは今後の戦いが楽になることだろう。

問題点といえば…


「お兄ちゃんの隣は叶がいるからね」

「そ、そうか…」


兄大好きである、叶が俺の隣を占有していることだろうか?

それをやれやれという目で見ているヤミと、うらやましそうに見ているアイラに、何か言ってくれよとお願いしたいくらいだ。

ちなみに、シバルとバーバルは二人で馬車の戦闘で運転をしてくれている。

うう、仲が良くなった二人の方と一緒にいたい。

こんな殺伐とした場所にいたくない。

俺はそんなことを考えるが、そんなことを考えたところで、何かが変わるというわけではないので、この状況をなんとかするべく、年長者に声をかけた。


「なあ、ヤミ…」

「なんじゃ」

「結局、ヤミの記憶ってのはどうなってるんだ?」

「なんじゃ、わらわの中が気になるのか?」

「言い方、言い方を考えてくれよ」


ヤミがいらないことを言ったせいで、叶が掴む腕がきりきりと痛みがあったのは言うまでもなく、それを見てヤミは楽しそうだ。

いらないことだけを年齢を重ねてもっているとは、こういうのが嫌なんだよ。

いや、こんなところで負けたらダメだ。


「それで、さっきの話しだけど、どうなんだ?」

「そうじゃな。はっきり言って、よくわからないというのが本当のところなのじゃ」

「どういうことなんだ?」

「竜として、空を飛んでいたという記憶はあるのじゃがな…」

「ああ、それについては俺たちも見てたしな、アイラも見ただろ?」

「飛んでるのは、確かに見たわね」

「あのときには、意識があったのか?」

「確かに飛んでおったのじゃが、すぐに魔力切れを起こしておるのでな、ちゃんと空を飛んだのは最近になってからじゃな」

「そういうことか…」

「ちなみに、俺たちと会う前の記憶っていうのは?」

「そうじゃな…うーん、忘れてしまったのじゃ」

「え?悪さをしたから、魔力を封印されたんじゃなかったのか?」

「そうじゃとは、わらわも最初は思っておったのじゃが、どうやらそうじゃない気もしておるのじゃ」

「どういうことだ?」

「わらわも、わからないのじゃが、どうやら、あの魔力の塊を体内に取り込むことで、何か大切なことも思い出そうとしておると思うのじゃ」

「そうか…」


俺はあいまいに返事をしながらも考えこんだ。

どういうことなんだ?

今更ながらに、ヤミが魔王であっているということは、本人含めて、神たちもそう言っているので間違いはないとは思うが、記憶があいまいだというのが、わからない。

普通であれば、魔王といえば、俺たちのような人を憎むか、この世界を政略するために行動をするものだ。

でも、魔王であるはずのヤミは、やっていることは俺たちと仲良くしていて、ご飯がとりあえず好きで、というこの異世界を滅ぼすというのには程遠い存在に感じる。

だからこそ、思うところは、魔王であるヤミはこの異世界を滅ぼす理由がないというところなのだろう。

今のところ、そういう人を憎むという感情がない以上、余計にそう思う。

少しあるのは、力を封印された面倒くささみたいなものだろう。

でも、話を聞いている限りでは、それだけじゃない気がする。

黒い塊を集めた結果、その心境が変化していくのかが、心配なところということか…


「ま、俺はヤミに襲われなかったら、それでいいかな」

「何を言っておるのじゃ、わらわが襲うわけなかろう」

「いいんだよ、こういうのは言ったもん勝ちみたいなものだしな」

「お兄ちゃん、それってまるでフラグみたいだよ」

「いや、フラグとか言わないでもらっていいですかね。俺だってフラグなんて立てたくないけどな」

「なんじゃ、フラグとは!わらわは襲わないって言っておるじゃろ」

「でも、わからないじゃない。ヤミだって、ただしをどうするのか、今はね」

「なんじゃ、アイラもそういうことを言うとは、失礼なのじゃ」

「えー、だって、どうなるのかなんて、そのときにならないとわからないでしょ?」

「それはそうなのかもしれないのじゃけど、わらわは別にそんなことをする気はないのじゃ」


そんなことを言っているヤミだが…

今更ながらに、出会った当初には、俺は襲われたんだということを思いだす。

そうそう、ベッドの上で下着姿のヤミが必死に自分のことを説明していたことを思いだし…


「痛い、痛いよ」

「お兄ちゃん?」

「どうしたんだ叶?」

「今、ちょっと変なことを考えなかった?例えば、叶以外の女性の裸とか…」

「そ、そんなことはないぞ」


俺はそう口にはするが、驚きを隠せない。

さすがに気づかれるのが、速すぎる。

俺だって、少しはほかの女性の裸くらい想像したっていいじゃないか。

一応ヤミについては、下着までは見れたんだから、そこまでくらいはな!


「ぐは…」

「お兄ちゃん?」

「何も考えません」


さすがに、俺も自分の体の一部が無くなるのではという勢いで、握られてしまえば、何も言えなくなる。

くそ、これも全部、ヤミが悪いというのに!

そう思ってヤミの方を見ると、ヤミは俺と目が合うとやれやれと首を振る。


「兄妹、仲がいいことはいいことじゃが、あまりくっつくのも考えものじゃな」

「どういう意味だよ」

「決まっておろう。おぬしに、好意をよせておるものが多くおるのじゃからな、それでどうなのかわかるじゃろ?」

「それは…痛い痛い…」

「ちょっと、お兄ちゃん?」

「いや、仕方ないだろ?好意を寄せられるのは!」

「確かに、叶のお兄ちゃんは魅力的だからね。好意を寄せられるのは、叶だってわかるの、それでも嫌だっていうことくらいは、お兄ちゃんなら妹の気持ちわかってくれるでしょ?」

「ま、多少な」

「だったら、その好意を持っている相手って誰なのかな?叶に教えてくれるよね」

「いや、俺は鈍いからな。わからないな」


そう言葉にして、俺はヤミをにらむ。

ヤミも、そんな俺を見て余計にニヤニヤとしている。

完全に、やっていることがちょっとした悪さばかりだ。

俺のことをいじめて何が楽しいというのだろうか…

ただ、ある意味ではよかった。

俺は、昔のことがあったせいで、女性からの好意には鈍感ってことになっている。

まあ、それは妹である叶も、知っているのでことなので、今のことで納得しただろう。

問題は、ここに俺に好意を寄せている人が一人いることくらいだろう。

そう、俺は確かに鈍感だ。

それでも、好きという言葉と、キスをされたという過去から、少しは俺に好意的にみられていることは、わかっている。

だから、ここで思うことは一つだ。

アイラに、あまりいらないことを言わないでくれというところだろう。

ただ、そんな俺の願いもむなしく。

アイラは、馬車の中で立ち上がると、俺の横に向かって歩いてくる。


「アイラ?」


その行動に、さすがの叶も疑問のようだ。

ただ、アイラは何も言うことはなく、俺の隣にくると叶と同じように、逆の手を握る。


「ちょっと、アイラ?どういうこと?」

「叶。私がただしのことを好きなんだから、いいでしょ」

「へえ…お兄ちゃん?」

「く、どうして俺にそんな目を向けるんだ」

「じゃあ、説明してよね」

「く…」


こうして、俺はここまでの冒険について、簡単に説明されることを余儀なくされるのだった。

あ、ちなみに…

ヤミは、すぐにマゴスへ向かう前に、アイラたちに自分が魔王だということについて、カミングアウトしていた。

まあ、今後魔力を戻すことを考えても、早めに知っておくということに、悪いことはないだろうという判断だった。

そんなことで、俺たちは騒がしくしながらも、マゴスへ向かうための途中の町へと、進んでいったのだった。


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