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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
ヘンタイと異世界のこと

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208話

「アイラ様…」

「何を一人でたそがれてるのよ」

「それは…」


シバルは考えていた。

これからどうすればいいのかということを…

レックスはこれから兄であるツインがまとめていくことになれば、妹である自分がそれの補佐をしないといけないのではないのかということ。

それに…

兄が王になるのであれば、その王が今後躍進するための、政略結婚をするために必要じゃないのかということ。

そんなシバルの考えを見抜いたかのように、アイラは言う。


「そんなに悩んだって一緒じゃないの?」

「それは…」

「別にシバルがどうしたいのかが一番重要だと思うけど」

「ボクがですか…」

「そうよ。私のことをアイラ様って言うくらいなんだから、私の言うことを聞きなさいよ。思うままにやりなさいっていうね」

「でも、それでもこの国は、レックスにはボクが…」

「大丈夫でしょ」

「え?」

「だって、その理論になるなら私だってセイクリッドにいないとおかしいでしょ?」

「それは、そうですが…でも、セイクリッドにはミライ様がいますし…」

「だったら、この国にはシバルの兄であるツインがいるでしょ?」

「確かにそうなのですが、だったらどうすればいいのでしょうか?」

「それを決めるのはシバル、あなただって言ったでしょ?」

「でも、ボクは何をしたいのかも、これまで得に考えたことがなかったんですよ」

「じゃあ、それを考えるのが、これからシバルに必要なことになるってことね」


その言葉とともに、アイラは少しその場を離れた。

その入れ替わりというわけではなかったが、バーバルがシバルの方に近づく。


「バーバル」

「何を悩んでいるの?」

「いえ、その…」

「悩んでいるなら、走ってきなさいよ」

「え?」


シバルは、突然のバーバルの言葉に驚く。

だって、悩みを聞いてもらえたと思ったら、急に走ってこいと言われたのだ。

これにはほかの人が見ても、急にどうしたのかと心配になるだろう。

でも、バーバルはさらにいう。


「シバル。悩むってことは考えこんでしまうってことなのよ」

「それはそうですが…」

「騎士が、そんな迷っている暇があるの?」

「ない、ですね…」

「だったら、悩む前に行動するのが、シバルらしいんじゃないのかしら」

「そうですね」


その言葉をシバルは聞いて、少し気合を入れる。

確かに、騎士として悩んでいるのは自分らしくないと感じたのだろう。


「それじゃ、わたくしと走りましょうか!」

「バ、バーバルも走るの?」

「だってわたくしが提案したんですもの。それくらいはね」

「えっと、でも二人だとちょっと目立ちすぎると思うのですが…」

「でもね、言いだしたわたくしがそれをしないというのも、バチが当たりますからね」

「そういうものなんですね」

「ええ、何か可笑しかったかしら?」

「いえ、そんなことは、行きましょうか!」

「ええ」


そして、二人は走りだす。

その光景を少し見ながら、アイラは二人の揺れる胸に舌打ちしたのだった。

そんなことを二人は知らないけれど、結束は高まったのかのかもしれない。

結局アイラは、そんな二人が走り終わるのを見ると、三人で合流したのだった。



「結局、特に話はできなかったな」

「別によいと思うのじゃ、結局はやることは決まっておるからの」

「ほんとうにね。お兄ちゃんの言うことに間違いはないからね」

「そうじゃな」


少し叶の言葉に、さすがのヤミも疲れているようだ。

得に決まらなかった話からの、さらには俺のことをひたすらに持ち上げるこの状況に、どうしていいのかわからない感じだろう。

ちなみに、俺もわからない。


「終わったの?」

「ああ、アイラか」

「アイラかじゃないでしょ?こっちだってただしたちの話しが終わるまで時間をつぶしてたんだからね」

「それはすまなかった。そっちの話しは終わったのか?」

「まあ、そうね。簡単にはね…」

「そうか、ちなみになんだが、バーバルはどうしてそんなにばててるんだ?」

「えっと、それは…」

「ふふふ、少し有言実行をしていただけです」

「そうか…」


どういうことなのかはわからないが、そういうことらしい。

まあ、仲がいいのはいいことなので、俺が何かを言えたことではない。

それに、やっぱり女性たちが話しているのを邪魔するという勇気もないからな。

こういうのは、楽しそうにしているのを見ているのが一番いいと、どこかの話しで聞いた気がするしな。


「それで、これからどこに行くとかは決まったの?」

「ああ、それはな。やることは決まってるな。まずは次の国へ向かう感じになるな」

「それって、わたくしの国のことですか?」

「ああ、次はマゴスに向かう感じになるな」

「そうですか、それでしたら、わたくしが頑張るしかないですね」

「何かあるのか?」

「それはマゴスに行きながら説明をしましょうか」

「それがいいな」


このままここにいても、ヤミの黒い塊も手に入れることができないしな。

そう考えると、やはり向かう場所は決まっている。

マゴスへ向かうというのが、一番いいだろう。

リベルタスについては、後で行っても、あのときの活躍があるので、なんとなく受け入れてもらえそうだというのがあるしな。

ただ、クロがどこに向かったかというのが気になるところだ。

魔力を無効化するのか、自分の魔力を押さえこむのかはわからないが、そのアーティファクトを持っていることを考えると、やはり魔力に関係しそうな、マゴスに向かっているというのが、セオリーと考えるのがいいだろう。

あとは、冒険をしながら、いろいろなことを聞くというのが、一番いいだろう。

神様にな。


【何?何か言いたいことがあるの?】

「(いや、今のところはないな。聞きたいことはあるかもだけどな)」

【そう…でも、そろそろこの世界についてしっかりと共有しておかないといけなくなるだろうし、行く途中で話をするっていうのは、いいと思うけど】

「(ま、そのためにも、しっかりと俺の質問に答えてくれよ)」

【できる限りね】


スターとそんなことを話ながらも、俺たちはまず馬車を取りに向かう。

というのも、マゴスに向かうのに、ある程度力を取り戻したヤミによって竜化を行って飛んでいけば簡単だろう。

俺もわかっている。

でも、そんなことをしてしまえば目立ってしまう。

ゲームなんかでいえば、そんなものが飛んでこようとも、街中に入る前にさえ、竜化を解いてしまえば見つかるリスクも少なくなるが、今回でいえば、そんなことをしてしまえば、見つかるのは当然と言えるだろう。

そもそも、竜がそんなに飛んでいれば問題になるしな。

楽は楽なんだけどな。

それに空を飛ぶというのも、いいのかもしれない。

でもだ。

ああいうのはかなりチート能力を持っている人がやれることだからな。

よくある、俺なにかしましたかってレベルの強さがあれば、それも可能なのかもしれないが、俺にはそれはない。

ヘンタイになること以外に、俺の強さは何もないのだからな。

一応、馬車を操ることができるということは、この異世界でできるようになったからいいのだけれど、どうせなら、異世界に前の世界にあったような車とかを使って進みたいよな。

まあ、どうせガソリンなんかの燃料がなくて、すぐにガラクタになりそうだが…

そして、俺たちはレックスを出ることになった。



「これで、よかったのですか?」

「ええ、ただしさんがやってくれることはわかっていましたから…」

「そうですか」

「まあ、おめえの言いたいことはわかる。ワシもあやつの強さは驚いたからな」

「そうですね。あの強さを少しは理解できましたよ」

「それでも、私たちには必要なものですからね、あの戦力は…」

「違いないな」


そんな言葉を言うのは、ザンだ。

ラグナロクの拠点へと帰ってきたザンは、すぐにただしたちの話しと、諜報として、入りこんでいた男と、党首であるエンドとの話をしていた。

多数の体をもつ、諜報として、各国に入りこんでいる男から、ただしという男のことはいくらか聞いていたけれど、間近でヘンタイスキルというものを見て、それがなかなか驚くものだということがわかった。

まさにスキルありきでの強さ、でも、スキルを使って強いというのは、この世界でのラグナロクが考える強さだ。

エンドが言っていた、魔力を使うことでしか戦えない世界というのを、壊す存在ということなのだろう。


「当たり前のようにある、魔力がなくなったときに必要な存在という理由がわかりますな」

「ええ、あの男は魔力がないですからね。そこから、私たちとは違う存在にはなりますね。勇者とも…」

「みたいだな。まあ、ワシらとしてもあいつの動向を見ながらも、ワシらがしないといけないことをするってことでええんだな?」

「ええ、私たちの目標である、魔王の討伐と、そして…」


その言葉は、ラグナロクの目標であり、この組織を作った目的でもあった。

口にしないことには目標は達成できないのだから…


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