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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
ヘンタイと異世界のこと

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205話

いろいろあったなと考え深げに思いながらも、俺は現実逃避をなんとかしたかった。

それはなんでか?

命の危機を感じているからだ。

理由はいたって簡単だった。


「なあ、叶…これはどういう状況なんだ?」

「それは叶が聞きたいかな?」

「どうして、お兄ちゃんの周りにこんな女性ばかりが集まっているのかな?」

「いや、この世界にきてからの冒険の成り行きだからな」

「だったら、これからは、叶が一緒に冒険をするってことでいい?」

「そうは言われてもな…」


俺は何も言えない。

だって、今現在俺を取り合ったというべきか、叶が喧嘩をただ吹っ掛けたというべきなのかが正しいのかはわからないけれど、あの戦いが終わって、ようやく一息がつけると思っていたのに、違う戦いが始まってしまったのだ。

参加しなかったのは、バーバルとヤミくらいで、いつの間に来ていたのかミライも参加して四人での戦い。

疲れているということもあって、一度でも膝をついてしまえば負けという戦いで、叶は見えない攻撃で全員の膝をつかせるという強さを見せた。

そして、俺はこうやって叶に詰め寄られているという状況だった。

確かに、ちゃんとした神様だということがようやくわかったスターから、それなりにいろいろなことを聞いたので、新しい冒険に出かけるのはわかっているが、それが叶と二人きりというのは正直不安がかなりあった。

それは、叶が極度のブラコンであるということに関係しているのだが…

今はあまり、それを考えている時間はない。


「ダメなの?」


怖い笑顔というのは、こういうもののことを言うのだろうという顔で俺のことを見る叶に、俺は何を言えばいいのかわからない。

そんな俺たちに対して、最初に言葉を発したのは、ヤミだ。


「なんじゃ、兄妹喧嘩かの?」

「違うわよ、ロリババアさん」

「なんなのじゃ、わらわが気をきかせて聞いておるというのに、その言い方はまさにそやつと同じ口調なのじゃ」

「へー、やっぱり叶はお兄ちゃんと気が合うんだね。だから、二人だけでこれからはこの世界を終わらせるよ」


自信満々に言う叶に、俺はどうしたものかと再度考える。

ヤミが最初に声をかけてくれたというのも、俺と先ほどまで話していた内容だった、まずは魔王として黒い塊を集めるということをしないといけないからだ。

それに関しては、俺がいないことには実現不可能だろう。

いや、もしかすれば一つだけ手があるのかもしれない。

魔力を無効化できるアーティファクトなんてものがあればだけれど…

でも、今この場にないのだからそれを探してから、また冒険をするという面倒くささを考えると、魔力がないという特殊な俺たちとさっさと集めるのがいいというのが、簡単なことだろう。

叶の言ってることは、俺もうれしい。

だけれど、俺もここまで、この世界でいろいろな経験ができたのは、みんながいたからで、今後もその意志は変わっていない。

仕方ない。

俺をかばうようにして立っている、叶の両肩に手を置く。


「お、お兄ちゃん?」


当たり前だけれど、叶は焦っている。

そんな叶の目をしっかりと見て、俺は言う。


「確かに、叶。俺は叶と冒険するのもいいのかもしれない…だけど、それと同じくらいに、ここにいるみんなと冒険をしてきたんだ」

「でも…」

「それに、この世界のことを俺たちは完全に知っているというわけじゃないからな。叶だってそうだろ?」

「確かに、そうだけど…」

「だから、二人だけで冒険して、迷子になってご飯に困ることになったりでもしたらな…」

「それは、それは…困るね」

「そうだろ?だから、一緒に行くっていうのでどうだ?そうすれば、叶が心配するようなことも起きないだろ?」

「そうだね!わかった、そうするね」


俺はなんとか叶の説得に成功することができた。

叶としても俺が困るということだけは避けたいのだろう。

これで、なんとかこれからも冒険はできそうなのはよかったのだけれど…


「話は纏まったのよね?」

「ああって、待ってたな」

「仕方ないでしょ、私たちじゃ話を聞いてくれないんだから、ただしが話をするしかないと思うんだけど」

「そうなんだけどな」


俺はアイラのその言葉に納得しながらも、それだったらわざわざ叶と戦う必要はなかったんじゃないのかと思ってしまう。

ただ、それは違うらしい。


「これでも、好きな人と一緒に冒険したいって考えるのは普通でしょ?」


アイラが俺にだけ聞こえる声でそう言った。

叶が少し離れたタイミングとはいえ、そういうことを素直に言われると、童貞な俺はどういう表情をしていいのかわからなくなる。

まあ、叶に気づかれている可能性はあったのかもしれないが…

そんな、いろいろあった後のことを考えながらも、俺たちはようやくというべきか、本来の相手に顔をむけた。

そこにいるのは、女性用の下着を被った二人の男がいたのだった。


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