魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた

ヘンタイと剣術大会

２０３話

「はあ、いろいろありすぎて、情報過多ではあったけど、なんとか終わったな」

「本当なのじゃ、さっさと終わらせてほしいのじゃ」

「よし、それならあとのモンスターの相手は任せたぞ」

「なんなのじゃ、それならおぬしは何をするというのじゃ」

「俺はヤミが倒すのを見ておくよ」

「なんなのじゃ、助けるとかのやさしさはおぬしにはないのか？」

「え、魔王だから強いだろ？」

「くう、なんなのじゃその態度は！」

「だってな…魔王ってことが俺には信じられないしな。だから証明してもらおうかと思ってな」

「むきーーーー、わかったのじゃ…だったらドラゴンネイル！」

その言葉とともに、ヤミはいつものように手をドラゴンに変えようとするが、それはうまくいかない。

「ここにきて魔力切れなのじゃ」

「まじかよ！」

「さすがに嘘はつかないのじゃ」

「仕方ないな」

俺は有象無象となった作り出されたモンスターたちを倒す。

作り出した本人が気絶したからかはわからないが、モンスターの動きは鈍くなり、余計に倒しやすくなった。

まあ、ここにいるのは残り数十体程度なので、俺は素早くそれを倒しつくす。

「これで終わりだな」

「うう、結局わらわはあまり活躍できなかったのじゃ」

「いい囮役にはなったぞ」

「そういうことじゃないのじゃ、こうかっこよく勇者を倒すのも、わらわのような魔王の務めじゃろ？」

「いや、知らないって…俺もヤミが魔王だということもさっき知ったばっかりだからな」

「確かにそうじゃな、わらわは話さなかったのじゃからな」

「どうしてなんだ？」

「簡単なことじゃな。わらわの力を封印されてしまったからじゃな」

「あー…それはなんとなくわかったな」

封印されているというのは、あの黒い塊のことなのだろう。

でも、その黒い塊については、俺がなんとかできたからよかったものの、普通であれば魔力を持った人が使えるものじゃなかったはずだが…

そのことはヤミもわかっていたのだろう、少し罰の悪そうな顔を浮かべる。

「あの封印には驚いたのじゃ」

「だよな。あんなのがあったら、そもそもどうやってヤミは力を取り戻すつもりだったんだ？」

「そんなの、わらわが知りたいのじゃ」

【だったら、あたしが説明してあげるわよ】

「おお…急に声かけられると、さすがにびっくりするな」

「？何としゃべっておるのじゃ？」

「俺を転生させた神様ってやつだな」

「ふむ…ということは、ただしも勇者ということになるのかの？」

「いや、それも含めて神にちょっと聞くか…いいか？」

【ダメって今更言っても、仕方ないことくらいはわかってるわよ、手を開けなさい】

俺は言われた通りに手を広げると、そこには、いつか見慣れた石のようなものが握られていた。

これは、確か通信ができる石みたいなやつだったな。

見たことがある俺とは違い、ヤミはそれを物珍しそうに見る。

「なんなのじゃ、これは？」

「話ができる石よ」

「おお、石から声が聞こえるのじゃ」

「そういうものなの」

「そうなのかの？」

「ああ、そういうアーティファクトってやつらしいぞ」

「なるほどの、わらわが知らないものってだけなのじゃな」

「ええ、そういうことだから、まずはお互いに自己紹介でもしましょうか？」

「そうじゃな、ここで一度整理するというのは必要なことじゃな」

そんなことを二人は話す。

それについて俺は、俺も必要なのかと疑問になる。

まあ、流れで必要ならするか…

そんなことを思っていると、ヤミから話す。

「年功序列といえばよいのじゃが、わらわが最初に自己紹介をするかの…わらわは、今は魔力を封印されてしまった魔王といった存在じゃの」

「なるほどな…それで？どうして黙っていたんだ？」

「そんなものは決まっておるじゃろ、わらわがなんの魔力をもっていない状態で戦ってしまうと、簡単に負けるのじゃからな。さすがに痛いことは嫌じゃからな」

「そういうものなのか？」

「そういうものじゃ」

「でも、魔王ってことなら、いずれは勇者と戦わないといけないんじゃないのか？」

「まあの、そうなったら、うまく逃げることができたらいいのじゃがな」

「いや、さすがに無理じゃないのか？勇者はヤミのことを狙っているみたいだしな」

「なんでなのじゃ、わらわが何かしたのかの？」

「したから、狙われているんじゃないのか？」

「わからないのじゃ…」

「まじかよ。そのあたりはどうなんだ？」

「あたしに聞いたの？」

「当たり前だろ、この状況でそれがわかるのは、スターだけだろ？」

「そうね。それについて説明をしておかないといけないわよね。どうして魔王を倒すのかと、それに勇者はどうして召喚されるのかについてもね」

「ああ、よろしく頼む」

「まずはそうね、勇者を召喚する理由についてね。それは魔王を倒すためというので、間違いないわね」

「それはわかるんだが、どうして魔王を倒す順番を競い合わせるんだ？そういうのは、協力して倒すのが楽でいいと思うんだが？」

そう、これは疑問だった。

普通であれば、勇者は一人いれば十分だし、複数の勇者を召喚するのであればその勇者たちを協力させて戦わせるというのが一般的だと思っていたからだ。

それなのに、勇者を競い合わせるというのには理由があるのだろう。

「確かに勇者みんなで魔王を倒すというのは普通だと思うわね。でも、それが最初の勇者召喚のときにできなかったのよ」

「どういうことだ？」

「この世界というわけじゃないんだけど、魔王を倒すことを勇者みんなで行ったのよ…でも、問題が発生したの」

「問題っていうのは？」

「簡単なことね。一人の勇者が魔王を一人で倒してしまったってことよ」

「え？別に強いからいいんじゃないのか？」

「確かに強いことはいいことなんだけど、一人で全部をやってしまったことが問題なのよ…」

「そうなのか？」

「ええ…確かにただしの言う通り強いことはよかったし、魔王を倒してくれて平和になったのはよかったのよ。それでも、だめなところがあったの」

「それはなんだ？」

「魔王を倒した後に叶えてもらう願い事が、かなりひどいものだったの」

「それはなんだ？」

「神界…あたしたちが暮らしている場所のことなんだけど、そこの女性たちを連れていったのよ」

「意味がわからないんだが…」

「だから、勇者のときにいろいろあったせいで、恋愛をできなかったからって、神界にいた女性たちを連れていく願いをもったの…」

「かなりめちゃくちゃな願いだな。それを叶えたのか？」

「仕方ないでしょ、あたしたちも勇者として、無理やり召喚して戦わせたんだから…」

「まじかよ…」

確かに、そんなことがあれば、勇者の願いを叶えるというのも、仕方ないことなのかもしれない。

ただ、それで神様の女性になるのか？

それを理由はわからないが連れていくというのも、勇者として、選んだことに間違いがなかったのかと疑問になるくらいだ。

そこで、気になることがあった。

「その、勇者というのはどうやって魔王を倒したんだ？」

「スキルがね。優秀でね」

「スキルはなんだったんだ？」

「えっと…」

なぜか、スターは言いにくそうにする。

どうしてなのか、理由はわからないが…

そう思っていると、会話を聞いているだけだったヤミが言う。

「もしかして、おぬしと同じように、変なスキルじゃなかったのではないのかの？」

「そうなのか？」

「そ、そうなのよね。言いにくいんだけど、ニオイスキルというものなのよ」

「ニオイスキル？」

いかにもヤバそうな名前のスキルに、俺は戸惑う。

「勝手な想像で悪いんだが、好きな匂いを体から出せるってことでいいのか？」

「なんじゃ、そのいかにもわけのわからないスキルは、なんなのじゃ」

「まあ、魔王が驚くのも無理ないわね。あたしもあのスキルがあんなにも強いとはおもわなかったわよ」

「そうだよな」

「ええ、最初はいい匂いで女性を虜にするとかをやってたんだけどね。結局それでは、モンスターたちを倒せなくてね。だから臭いにおいを出したの…あとは簡単にいえば、仲間がその匂いのせいでいなくなって、女性も近くにいなくなってしまったのよね」

「なるほどな」

それは嫌われそうだな。

臭いにおいを出さないと戦えないけど、出せばだしたで嫌われる。

完全にあっちがうまくいけばこっちはうまくいかないというのを話として聞いているようだ。

あれだな、この後の結果はわかりきっているだろうけれど、聞いておくか…

「ちなみに、そのあとはどうなったんだ？」

「そうね、そのまま一人で戦うことになった男は、不満がたまっていたのよね。だから、勇者として魔王を倒した後に女性たちをもらうことにしたってことね」

「まあ、男なら仕方ないことなのかもな…」

確かに、せっかく勇者としていろいろなことを経験できるはずだったのに、やったことは臭いにおいを振りまいて敵を倒しただけ…

最終的には、周りには誰もいなくなったってことか…

それを聞いてヤミが言う。

「なんじゃ、おぬしよりもひどりスキルがあったのじゃな」

「待て待て、俺のスキルも同じようなものだろ？」

「何を言っておるのじゃ、周りにあれだけかわいいものたちをはべらせておいて、そういうことをいうのではないのじゃ。かわいいという点ではわらわもおるのじゃしの」

「く…確かに見た目はそうなのかもしれないけど、それだけで判断をしていいものじゃないだろ」

「確かにそうなのじゃが…」

「まあ、そういうことで、あたしたちの場所には男しかいないのよ」

「それはわかったんだが、それならスターはどうなんだ？」

「あたし？」

「ああ、だって、女性がいないはずなんだろ？」

「そうね。あたしに関しては、そのときにその場にいなかったから、大丈夫だったという感じね」

「そういうものなのか？」

「ええ…」

「それで、結局勇者同士が争っている理由っていうのはなんなんだ？」

「簡単なことをあたしのことよ…」

「うん？」

俺は聞き間違ったのかと思ったが、スターが再度いう。

「だから、あたしのことなのよ…」

「どういうことだ？」

「あたしだって、神界に戻ったところで、あんなことになってるとは思わなかったのよ。あたし以外の女性がいなくて、それであいつらはあたしのことを自分のものにするために、勇者に魔王を倒させているってこと…」

「ということは、魔王を一番最初に倒したやつが、スターをものにできるとか、そういう理由なのか？」

「そういうことになるわね」

「なんだそのくだらない理由は…」

「あたしに言わないでよ…」

「わらわも魔王として、びっくりするような内容じゃな」

「だよな…」

神様が急に俺たちのようなわがまますぎる理由で勇者を召喚して戦わせていることを知ってしまった。

というか、いろいろ大丈夫なのかと考えてしまう。

そんなやつらが神様をやっていて…

それは、同じ神であるスターも思っていたことなのだろう。

ため息が聞こえた。

「あたしも、おかしいとは思うけど…あほの神様たちは言うことを聞いてくれなくてね…」

「そうなのか…ちなみに、そうなると俺がこの世界に来た理由というのは？」

「もちろん、魔王を倒すためだったんだけど…」

「あー、うん…」

「なんじゃ？」

俺はヤミを見る。

ヤミはというと、少し身構えているが、うーん…

今からヤミが魔王なので倒してくださいと言われても、嫌だという。

だって仲良くなったしな…

あとは、そう…

ニーハイをもっと履かせたいからな。

そんな俺の顔を見て、ヤミは何かを感じたのだろう。

「なんじゃ、少しよくないことを思われている気がするのじゃ」

「気のせいじゃないのか？」

俺はそう口にしながらも、この後のことについて考える。

いろいろ知ったからこそ、なんだかこの異世界について、いろいろ考えないといけないと…

そしてため息をつくのだった。