202話
「それで、どうするのじゃ?」
「適当に攻撃する。それしかない」
「なんなのじゃ、その適当な感じは!」
「仕方ないだろ、俺だって戦い方を知っているほうじゃないんだ、その場しのぎってやつだからな」
「なんじゃ、ぶっつけ本番ばかりじゃと、女子に嫌われてしまうのじゃぞ」
「おま、そういうことを言うのは、童貞の俺にはダメだろ」
「そんなことは、わらわは知らないのじゃ」
「そうかよ」
俺たちは軽口を言いあう。
ただ、どうやって攻撃をするのかを決まっていないので、どちらも口にするだけで攻撃は全くしない。
そんな俺たちに嫌気がさしたのだろう、宗次神は再度両手をあわせる。
「こないのなら、僕のほうから攻撃をしますね」
その言葉とともにだす武器は、機関銃。
連射とかせこいと思うんだけどな。
そんな俺の考えとは違い、それを見たことがないヤミは見た目がそんなにも大きくないそれを、特に脅威とは思っていないようだ。
「あれは、攻撃をするものでいいのかの?」
「当たり前だ!俺はさっさと逃げるからな」
「な、わらわを置いていくというのか?」
「そう思うなら、攻撃してくれ!」
「ああ、もうわらわにはわからないことばかりなのじゃ…ええい、ドラゴンネイル」
悪態をつきながらも、ヤミはドラゴンネイルを放つ。
それによって、ドラゴンの爪が宗次神へ向かって飛んでいく。
いい攻撃だ!
魔力でできたそれは、機関銃程度の弾ではとまらない。
それを宗次神もわかっているのだろう、すぐに機関銃を投げ捨てるのが見える。
俺は宗次神が何かをだそうとしたタイミングで前に走りだした。
「はは、さすがは魔王の攻撃。ですが、僕が選んだ勇者は完璧なのですから!」
その言葉とともに、宗次神が出したものは大きな金属の盾…
いや、壁だろう。
それは、俺には好都合でもあり、面倒くさいものだった。
理由は簡単だった。
いい点は、俺のことが見えないから、近距離に近づいてしまい、俺の攻撃が命中すれば勝ち。
逆に悪い点は、相手の攻撃が見えないからこそ、何をしてくるのかがわからない。
だから、もし俺の予想よりも相手の攻撃が上回っていれば、簡単に俺がやられてしまうことだ。
でも、そこで俺には強い味方がいることをあいつは忘れている。
「(なあ、あの壁の後ろはどうなってるんだ?)」
【え?あたしに聞くの?そんなことしていいの?】
「(いや、いいだろ。むしろ聞かないなんていう選択肢のほうがないだろ)」
【そこはあれじゃないの?俺は知らない道を進む。その方が興奮するからとでもいえばいいでしょ?】
「(確かに、童貞の俺には知らない世界ばかりだな…って、そのことはいいんだよ。こういうときにしっかり助言を聞くくらいいいだろ?俺の特権なんだからな)」
【確かにそうね】
「(だろ?それでどうなってるんだ?)」
【簡単ね、後ろから周りこむことを考えて、さっきの機関銃を構えているわね】
「(そうだよな。ってことはあれをやるしかないな)」
【なに?またヘンタイなことでも思いついたの?】
「(かなりひどい言い草だな。本当に、このスキルは誰のせいだとおもってるんだ?)」
【そんなの、あたしにはわからないから】
「(まあ、確かにな…)」
俺は自称神の言葉で、やることが決まった。
下手に後ろに回るよりも正面から攻撃する方がいいということだ。
まあ、あるあるといえば、その通りだな。
しっかりと拳を握りしめる。
ドンという音とともに、ヤミの放ったドラゴンネイルが金属の壁に防がれる。
分厚いものを作ったといっても、しっかりとあたった部分には傷痕のように痕跡が残るので、さすがだとしかいえない。
その攻撃に、俺はそこに攻撃をする。
それがやりたかったことだからだ。
「カイセイ流、一の拳、トルネードスター」
しっかりと気をのせた攻撃は、金属の壁に防がれる。
それは俺もわかっている。
でも、俺の予想通り、相手の予想外のことが起こる。
それは、かなり重い金属の壁が少し動くというものだった。
いけるな。
俺は動いた金属の壁に再度攻撃を加えるべく拳を固める。
そう、これはそれとなく思い出した技だ。
※
「ねえ、ただしは今の修行ってどう思う?」
「うーん、なんとなく気はわかったけど、それで終わりな感じかな?」
「そうだよね。それを繰り返すってことは、まだ難しいよね」
「まあな、技を出すタイミングで気を纏わせるってことはなんとなくわかるんだけどな」
「それなら、後は想像力だね」
「というと?」
「ねえ、あたしの服の下ってどうなってると思う?」
「そりゃ、もちろん下着だろ?」
「本当に?」
目の前にいる彼女は、そう言うと、肩を少し露出する。
そこには、俺がいつも見るはずだったブラ紐がない。
どういうことなんだ?
いや、考えるんだ。
もしかしなくても、ブラをしていないということなのか?
俺はついつい考える。
それによって、気は全身を駆け巡る。
この感覚は…
俺がそれに気が付くと、少女は言う。
「どう?いろんな想像できた?」
「いや、どうかな?」
「ふふ、そんなに気を纏わせていればわかるよ」
そういわれて、すぐに俺は慌ててそれを押さえようとするが、そう簡単なものじゃない。
一度その想像をしまえば、頭の片隅に考えてしまうのが、ませてしまった男の性というものだろう。
俺の体からあふれ出る、生命エネルギーである気はとどまることをしらない。
それを見て、彼女は嬉しそうに言ったのを思いだす。
「あたしの裸、想像できた?」
「…」
何も答えることはできなかったが、俺の頭の中は完全に彼女のことでいっぱいだったことは言うまでもなかった。
※
これぞ、思い出したということだ。
そう、ヤミの今の恰好ですらも、俺はあることを思いだす。
絶対領域。
それは、見えそうで見えないからこそ成立するものだ。
あの中はどうなっているのだろうか?
そう考えるだけで、俺のヘンタイとしてのスキルは強さを増す。
そのことを忘れていた。
俺は拳を握る。
「行くぞ、カイセイ流、六の拳、スターラッシュ」
一発、二発、三発…
「うらうらうらうららあああああああああ…」
何発も拳を金属の壁にたたきつける。
しっかりと拳を固めたその攻撃は相手にもしっかりと聞こえる。
「なにが!まじかよ」
「おら!」
「くそ!」
俺の攻撃によって、金属の壁は地面から離れ、宗次神のほうへ倒れだす。
慌てた宗次神が、壁の後ろで何かをするのがわかる。
でも、俺はヘンタイスキルがあがっていることを自覚する。
今なら、あれができるはずだ!
俺は、ポケットからブラジャーを取り出すと、目に取りつけた。
ヘンタイ眼!
「は!やはり、見える!」
俺のヘンタイ眼は、さらなる強化されていた。
服の下を想像するということができるようになった俺には、金属の壁くらいは、その後ろすらも見えないはずのものを見ることができる。
それが新生ヘンタイ眼というものだ!
そこでは、どうしていいのかわからなくなった宗次神が次に何をすればいいのかを考えるために、いくつかの金属の棒で、倒れそうな壁を支えている。
一応壁の後ろにいれば安全だと思っているのだろう。
それに関して、俺は甘いということを教えてやる。
そう、壁は倒れつつある。
それを支えるのは、確かに金属の棒で、しっかりとしたものをソウゾウスキルで作っているからこそ、なかなか倒れることはないだろう。
そのままの状態であればの話しにはなるがな!
俺はしっかりと拳を握りしめると、地面を殴った。
先ほどからの傍から見れば、完全におかしな人の行動に、ヤミも声を荒げる。
「なんじゃ、さっきからおぬしはわけのわからないことばかり、何をしておる!」
「ふ、俺にはすべて見えている。それだけだ!」
それに対して、俺は自信満々に答えるが、ヤミは余計にチンプンカンプンなのだろう。
「もう、わけのわからないことばかりを言わないでほしいのじゃ」
「まあ、すぐにわかることだ!」
金属の壁を金属の棒で支える。
確かに、何も起こらなければ、普通にできることだろう。
俺が、このまま金属の壁にしても、簡単には倒れることはないから、その間に打開策をうつことはできる。
でも、だからこそ、それができないようにする。
それが、俺にできる全力の攻撃で地面を殴ること…
それによって何が起こるかって?
少し地面が揺れる程度だ。
でも、金属の棒でしか支えられなかったものであれば、その少しの揺れで崩れ始めるということだ。
「さっきから、何が起こってる!」
驚いている宗次神には悪いが、俺にはその姿すらも見えている。
だから、次にどうするのかもな。
倒れ始めた金属の壁に守られるというのは難しいということに気づいたのだろう。
宗次神は、壁から横に出て、俺に攻撃をしようとしてくる。
それを壁越しから見えていた俺は、あるものを手にもっていた。
「うおおおおおおおおおおおお」
予定が狂い、機関銃を乱射するためにでてきた宗次神だったが、一発目が俺の顔をかすめただけで、すぐに弾が出ていないことに気が付く。
「なんだと…」
「ふ、からめてってやつだ」
俺がやったことは、持っていたニーハイを操り、撃鉄に入れ込んだのだ。
それによって撃鉄は動かなくなり、一発しか発射されることがなかったということだ。
使えないことに気づいた宗次神は、すぐに新しいものを作ろうと武器を捨てて、手を合わせようとしたときだった。
俺はしっかりとニーソを操ると、その手を押さえることに成功する。
「く!離せ」
「離せと言われて、離すやつはいないと思うけどな」
「くそ!」
両手を合わせたままニーハイに拘束された宗次神はなんとか外そうとするが、俺は言う。
「俺のニーハイに捕まったんだからな」
「意味が分からない攻撃ばかりで、どうして僕が負ける…」
「まあ、俺のことをその程度だと思っていたからだろ?」
「ちっ…」
「じゃあな!」
俺は拳を握りしめる。
そして、宗次神にその拳を叩き込むべく思いきり引っ張る。
それによって、相手は地面を離れる。
これで終わり!
俺はそのまま拳を叩き込むはずだったが、そのタイミングで宗次神の手から剣が出る。
「くくくく、僕がそう簡単にやられるわけない!」
【ただし!】
手を合わせたままでも剣が出せることに対して、驚いたスターが俺の名前を呼ぶが、予想済みだった。
剣は俺がいたであろう場所を通過した。
「なんだと?」
「ふ…カイセイ流、三の拳、ライトニングスター」
高速で移動することによって、攻撃を完全に避けただけだった。
そして、後ろに回りこんだ俺は、その拳をつきたてた。
「ぐは…」
そして、俺たちの闘いも終わった。




