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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
ヘンタイと剣術大会

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191話


「ま、ここまでは計算通りって感じだよな」

「ふへへへ、やっぱりただしは強い。余裕だった?」

「余裕ではないな」


すっかり俺は今日の一試合目を勝つ。

仮面をつけた、剣も使わないが強い男として俺は、なぜかそれなりの知名度を獲得していた。

こういうときに思う。

見た目が変な奴、もしくはカッコいいやつ、あとは綺麗か可愛い人が人気になるものなんだなと…

そんな中でも、俺はあきらかに最低の人気ではあるだろうが…

まあ、今はそんなことを考えている場合ではなかった。


「えーっと、これはどういう状況なんだ?」

「ふへへへ、なんだろうね。うちにもわからないかな」

「そうだよな」


ネクラにも何が起こっているのかがわからないみたいだ。

俺にもよくわからないな。

こうなった原因がわかるであろう人物に俺は声をかける。


「シバル。これは、どういう状況なんだ?」

「はい、ボクが面倒くさかったので、こうしました」

「そ、そうか」


なんとも大胆な。

今までのシバルとはどこか変わったのかな?

俺はそう思った。

そんな俺たちの前には二人の男。

ジンバとツインだ。

なんで二人と戦うことになっているのか?

それは、シバルからの提案があったからだ。

俺とシバルはすでに一試合を勝ち、ジンバとツインも同じように危なげなく勝利している。

次の対戦では、俺とジンバが、シバルがツインと戦う予定だった。

でも、そんなときにシバルが言い出したことがあった。

それは、聖騎士の連携を見たいということだった。

これに対しては、俺たちよりも、ここにいる観客のほうが盛り上がりをみせた。

剣術大会を観戦していた、この国の人たちがそれでいいじゃないかと声をあげたのだ。

それによって、気づけば俺とシバル対ジンバとツインが戦う状況になってしまったのだ。

いや、俺の意見はと思ったが、こういうこともあり得るのは仕方ないことだ。

なんでか?

この世界にきて、俺の意見が聞いてもらえたことなんか、あまりないからだ。

思えば、ヘンタイスキルを使って、いろいろなことをしてきたように思う。

そんな、対戦と関係ないことを考える。

ただ、どっちにしても、どうせ戦うことには違いないな。

だったら、早いか遅いかの違いだけだろう。

俺とシバルは剣を抜く。

ジンバも槍を構え、あの馬に乗っている。

そして、ツインも二刀を構えている。

審判である、男の声がどことなく聞こえて、ボルテージはまっくすだ。


「がははは、とうとう戦うことになったな」

「ま、最初からここまでは来る予定だったからな」

「は、我に一度は完敗しておるくせに、余裕よな」

「こっちも、ここまで暇を持て余してただけじゃないからな」

「ほう…」


だって、ジンバに勝たないといけないということもあってか、ネクラとかなりの修行をしてきたからな。

聖騎士ということもあって、かなりの強さだったネクラとやる日々はあまり思い出したくない。

まあ、そのおかげで、剣を少しは思い出したけどな。

俺が剣を構えているのを、ジンバは今更ながら気づいたように言う。


「そういえば、剣を抜いておるのだな」

「それがどうした?」

「てっきり、いつものように拳で戦うものだと我は思っていたからな」

「まあ、これまでの闘いには、別に剣は必要がなかったってだけだな」

「ほほう、それは…我と戦うには剣が必要になったということだな」

「ま、そんな感じだな」


実際のところは、少し違った感じはあったが、俺は剣を握りなおした。

その横でシバルも兄であるツインに話かけている。


「兄…」

「…」

「今から、ボクが兄を倒しますから」

「…」


兄である、ツインからの返事はない。

ただ、それをわかっているかのように、シバルは気にしないで剣を握りなおした。

そして、戦いが始まった。


「行くぞ!」


ジンバのその声とともに、ジンバとツインが駆け出す。

挨拶代わりに、槍の突きがくる。

当たり前に見えている。

俺は、その槍をかわす。


「ほう」

「ま、これくらいはな」

「だったら、これでどうだ」


次は横払いだ。

俺はそれもかわす。


「ふむ、やるではないか!」

「そっちこそ、剣技を使わなくていいのか?」

「は!言ってくれるな。我が剣技を使えば、一撃しかもたなかったくせにな!」

「なら、試してみればいい!」

「後悔するなよ」

「後悔?そんなのな、この大会に出ている時点でしてるからな」


俺はそう言葉にして、剣を握りなおす。

目には、しっかりとジンバが剣技を使うために、魔力が流れるのが見える。

すぐに馬は距離をとる。

それだけで、勢いがますことがわかっているのだろう。

くるな!


「聖騎士槍術改、人馬一体一の型、重一閃」


まさしくゴオっと音が出るような、突撃だ。

前の俺であれば、この攻撃に対して、同じように突撃して、拳で対処しようとしていた。

今は、少し剣を思い出したからな…

俺は、その攻撃に対して、剣先をあてる。

そして、交錯…


「何が起こったのか、わからん。なんだ今のは?」

「ただの剣だ。小細工たっぷりのな」

「は!この前とは違うってことか!」

「そういうことだな」

「だったら、これはどうだ?聖騎士槍術改、人馬一体二の型、重薙ぎ払い」


今度は、勢いをつけた薙ぎ払い。

俺は剣をだらりとしたに下げた状態で、そして上に斬り上げる。

ただ、槍を俺の剣に滑らせるようにして…

きゅいんという音とともに、槍はまたも俺に当たることはなく、弾かれる。


「受け流しというやつか」

「へえ、よく知ってるな」

「まあな。我の攻撃を簡単に受け流せるとは思わなかったが、やるではないか」

「そうか?」

「ああ!あのネクラ様が気に入ったかただから、どれほどの強さになってるのかと思ったが、やるではないか」

「そりゃどうも…」


だって、あんなにも剣をやりあったんだ。

だから、これくらいにはなってもらわないと、俺自身が困る。



「ふへへへ、やっぱり剣での手合わせは楽しいね」

「いや、俺は全然楽しくないんだが」

「じゃあ、これが必要?」

「どうなんだろうな」


そういって、見せられたものは女性ものの下着だ。

確かにだ。

確かに、それをかぶることで、強くはなれるし、たいていのことはこなせることはなる。

でも、それだけでいいのかと言われたら…

うーん、だめだろう。

なんでかって?

俺だって、かっこよく仲間を助けたいからな。

普通、異世界ものって、それなりに強さが途中から覚醒して、とかじゃないのか?

俺がやっていることといえば、女性ものの下着をかぶって、拳を振るっているだけだ。

やっていることは、ヘンタイ。

そして、その強さもヘンタイ…

じゃないんだよ。

自分で言っていて恥ずかしくなるな。

だからといって、俺に何ができる?

そういえば、あの黒い炎を使うやつとの現実世界での戦いの後、妹が護身術を習いだしたよな。

それも、総合護身術とか胡散臭い内容のものをな…

確か、それを教えていたのは、女性の先生だった。

だから、俺も別に気にはしていなかったが、それからというもの、兄である俺よりも強くなるといってたっけ…

兄よりも強くなるためにも、まずは兄である俺に勝たないといけないという理由から、よく手合わせをやらされた記憶しかない。

なんとなくでしか、思い出していなかった、その剣の腕ってやつをここで思い出してみるのもありなのか?

そう思った俺は、集中することにした。

どこかで瞑想をすれば、集中できる。

そんなことを聞いた気がするが、目を閉じた途端に、ネクラが体をあててくるのがわかる。


「ふへへへ、何をしてるの?」

「ちょっと、瞑想をな…」

「ふーん、目を閉じることで集中できるってこと?」

「普通はそうなんだけどな」

「ふへへへ、胸でもあてちゃおう」

「集中できるわけないんだよな…」

「ふへへへ、あきらめるの早いね」

「仕方ないだろ!そんなものを押し付けられたな」

「そっか、ふへへへ」


胸を押し当てられて、平然としていられる童貞がいるのなら、逆に教えてほしいくらいだ。

あと、俺にはヘンタイスキルがある。

そんなことをすれば、何も考えなくても、スキルが発動するからな。

目を閉じて、神経を集中するなんてことはできない。

いや、逆か?

俺は、そこに思いついた。

そう、ヘンタイであるが故のことだ。

確かに、俺はヘンタイスキルがあるせいなのか、こういうときに集中できない。

ただ、それは周りに集中できないというだけで、今こうして押し当てられている胸にのみ集中すればどうだ?

そこで、俺はすぐに胸に集中する。

下着をつけていないせいなのか、おかげなのか、しっかりと胸の感触を感じることができる。

まさしく、俺の腕に当たっているだけなのに、感触がわかる。

なるほどな、そういうことか…


「ネクラ」

「ふへへへ、なに?」

「もう一度、手合わせいいか?」

「もちろん」


こうして、俺はあることに気づき、そしてそれを試す。

結果は…



感覚を取り戻すためとはいえ、一度目は吹き飛び、二度目は横腹にくらい、三度目は…

思い出したくなくなってきたな。

異世界ですら、修行みたいなことをするとは思っていなかったが、それでなんとか剣術にはなった。

相手の武器に対して、俺の剣をどのように当てれば、すべてをかわすことができるということがな!

実際には完璧ではなかった。

でもな…

男に、それもおっさんにだけはやられたくないという強い思いから、俺のこの剣は完成した。

実際…

女性と戦うことになれば、その揺れる髪、表情なんかで、集中できなくて、普通に失敗しそうだな。

そんな俺の考えを知らず、ジンバは槍を構えて嬉しそうだ。


「これなら、本気を出しても、つぶれないな!」

「は!俺もまだまだ本気じゃないからな」

「は、ぬかせえ」


その言葉とともに、ジンバは突撃してくる。

俺は、剣を握りなおした。


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