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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
ヘンタイと剣術大会

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187話

何も考えないまま、ただ走る。

ただ、それでも行く先は気づけばある場所だった。


「ここって…」


そこはボクと兄が大好きだった人がいたところ…

導かれるように来てしまった。

ボクはそのままあの人がいた部屋へと向かった。

入ると、そこは当時のままで…

というわけではない。

何もないただの一室にはなってしまっていた。

あれから、この部屋には誰も住んでいないのか、床には埃がたまっていた。


「やっぱり、何もないよね」


ここに来れば少しはボクが見つけたかったはずの何かが見つかるのではと考えていたけれど、そんな都合のいい話はなかった。

わかっていたことだったけれど、それでもボクは何かがあるのかと期待していた。

それがすべて他人行儀だということを理解せず…

そんなときだった、足音が近寄ってくる。

か、隠れないと。

ボクは慌てて隠れる場所を探すが、部屋には何もないせいで隠れる場所がない。

扉がうち開きなので、なんとか扉が開けばその後ろに隠れられる?

迷っている時間がなったボクは、そこに隠れた。

そして、扉が開く前に声が聞こえる。


「ふへへへ、どうしてここに来たの?」

「ちょっと気になったからな」

「そうなのですか」


ただしが来た?

それも、剣術大会に出ていた、あの女性と一緒に…

どうしてここがわかったのかと、聞きたいことはたくさんあったが、隠れてしまっているというのもあって、ボクはそのまま息をひそめた。

そして、扉が開く。


「ここがそうなのか」

「そうですね」

「こう見ると、何もない部屋だな」

「見た目は、そうですね」


ただしには話したことがある、だから知っているというのはわかっていた。

でも、どうして横の女性がこのことを知っているのだろうか?

ボクはわからないままも、二人の会話を聞いた。


「ここで起きたことが故意だったなんてな」

「ええ、うちも聞いたときには驚きましたから…」

「そうなんだな」

「うちも、さすがに人道的でないことに対してはね」

「そのわりには、俺には相当な勢いで攻撃してきてたけどな」

「ふへへへ、それは、ただしの強さが、うちと対等に戦えるってことがわかってましたからね」

「そういうものなのか?」

「そうじゃないと、うちも攻撃を繰り返したりはしませんよ、ふへへへ」

「そうか…」


ただしはそう言葉にすると、扉を閉めようとしたところで、何かに気づく。


「なあ、これって」

「これは…」

「なるほどな、これで理由がわかったかもな」


そう言葉にすると、ただしは扉を閉める。

よかった、ばれなかった。

ボクは、そう考えながらも、足音が遠ざかるのを聞いた。

少しして、足音が遠ざかるのを聞いて、ただしが気になった場所をボクも見てみることにした。

それは扉をあけて、わかった。

部屋の中は確かに、なにも発見できなかった。

でも、扉には変わったところがあった。

一部が白かった。

まるで、紙でも埋め込まれているようなあとだった。

ボクは、それを爪を使って取り出すと、予想通り、それは紙だった。

それも、小さな手紙だった。


「これって、お姉ちゃん…」


そう、字を読んですぐにそれをだれが書いたのかがわかる。

姉として慕っていた彼女のものだった。


[はろはろー、お姉ちゃんは今日はここまで来ました。これもひとえに、毎日会いに来てくれている二人のおかげだね。日々頑張ってくれている、二人を見ていると、お姉ちゃんも頑張らないとっていう想いがあふれてくるもんね。二人に外で会って話をする、それに向けて、お姉ちゃんは今日も頑張るからね]


そんな、いつも明るいお姉ちゃんが書いたものだとわかる内容だった。

お姉ちゃんは、頑張ってたんだね。

でも、頑張ってたお姉ちゃんを頑張れなくしてしまったのは、ボクたちのせいだよね。

そう考えていた。

だから、もう一つの紙が落ちたときに、ボクは何も言えなくなった。

それは、ボクと兄、そしてお姉ちゃんの三人が書かれた絵だった。


「これって…」


大切な場所に保管してあると、お姉ちゃんが言っていた場所…

そして、絵の後ろに書いてあった言葉に、ボクはようやく強さの意味を知ったのかもしれなかった。



「ふへへへ、優しいね」

「あ、別に普通だろ?」

「でも、これで決心した?」

「ああ、もうあいつをボコボコにする、俺はそれしかないな」

「それで、あの子のことはどうするの?」

「それに関しては、シバルがなんとかするだろ」

「ふへへへ、期待しているのね」

「まあな」


俺たちは、外に出ると、シバルがいるであろう部屋を見つめた。

この場所に来たのは、横にいるネクラからあることを聞いたからだったが、そこでシバルと出会うとは思わなかった。

あれで隠れているつもりなのかはわからなかったが、俺はそのままにしておいた。

俺が声をかけるよりも、何よりも自分で考える方が、自分のためになるということをわかっていたからだ。

まあ、それでもおせっかいなのかもしれないが…


「よし、やるか」

「ふへへへ、本当はみんなのもとへ戻りたいんじゃないの?」

「まあな、ただな。あの話を聞いて、そんなことも言ってられないだろ?」

「さすがは、うちが好きになっただけはある男だね」

「へいへい」


俺は適当にそう返事をすると、ネクラとともに歩きだす。

ここからは俺たちがしっかりやらないとな…

そのためにも、おっさんにはやられてもらわないとな。

俺は、拳を握りしめた。


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