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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
ヘンタイと剣術大会

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185話

「いや、キツイんだよ。ネクラの代わりに出るのなら、シード権とかないのか?」

「ふへへへ、剣術大会のこと、少しは知っていてくれたんだね」

「まあ、いろいろあってな」

「ふへへへ、そっか…でも強さを見せるためには仕方ないことだと、うちは思うんだよね」

「そうかもしれないけどな…」


それでも、普通だと少しは楽をしたいというのが正直なところだった。

だというのに、ここまでちゃんと戦って勝ってきた。

理由は簡単だった。


「く…ネクラはかなり人気なのか?」

「ふへへへ、どう?嫉妬した?」

「いや、そもそも知り合ったの最近だよな。それで嫉妬するとかないからな」

「ふへへへ、そうだけど。それでも嫉妬は時間じゃないんだよ?」

「言いたいことはわかるが、俺は別にネクラのことが好きというわけじゃないぞ」

「ふへへへ、そんなかわいそうなことを言わないでほしいよ」


そう言いながら、ネクラは抱き着いてくる。

本当に、嫌な注目の浴び方だ。

なんとなく、剣術大会の前に行われたパーティーなるものに出席したときからわかっていたことではあったが、ネクラはかなり人気なようだ。

騎士の国だというのだから、可愛い女性が好きだ!

というわけじゃなく、強さこそがすべてというこの国では、強いと憧れの的になるらしい。

この話も、あのパーティーが終わった後に聞かされた内容だった。

そして、強くて、さらには綺麗なネクラはかなり人気だそうだ。

確かに、シバルも最初にあったときから、ほかの騎士に人気だったよな。

といっても、ネクラはこの国で聖騎士と呼ばれるくらいなので、かなり強さでは上らしいので、通常では声もかけるのを躊躇するような存在なのに対して、今は知らない男が隣にいる。

それだけで俺がこのさすような視線を向けられる理由になってしまっていた。


「めんどくさいな、この状況…」

「ふへへへ、うちはうれしいよ」

「でも、あれだけ遠巻きに見るなら、声をかけてくればいいのにな」

「そんなことをすれば、うちにやられるだけなのをわかってるんじゃない?」

「いや、当たって砕けろ精神だろ」

「ふへへへ、じゃあ、ただしもそうしてみて」

「遠慮しておく」

「ふへへへ、そんなつれないことを言わないでよ」


そういわれるが、俺は遠慮しておきたいとしか思わない。

というのもだ。

このレックスでは、下っ端、見習い、初級、中級、上級、騎士、聖騎士という階級になっている。

本当は上級までは剣士と呼び、それ以上を騎士。

そして騎士の中でもずば抜けて強い存在を聖騎士となっているのだが…

どうやら、レックス以外で騎士と名乗っている人たちは、上級以下が多いらしい。

なんでか?

戦ったときの強さが、かなり弱いからだった。

まあ、あれだけ国の中で強さだけを求められる環境だったら逃げたくなるというのも理解できる。

だからって、騎士と名乗れる強さではないものの、そうしないとギルドに登録したり、ほかの国で戦ったりなんてこともできないらしい。

職歴詐欺…

社畜であった身としては、かなり嫌な言葉だ。

話がかなり脱線したけれど、結局なところ、聖騎士はかなり上の一部だけしかなれない人なのだから、強さもそれ相応だということだ。

そんなネクラと戦いたくないというのは、当たり前のことだ。

それに、まだ剣術大会も終わっていないしな。


「でも、剣術大会が始まるまで、いろいろ面倒だったな」

「ふへへへ、二人で楽しかったでしょ」

「確かに、ほかのやつに出会わないのはよかったけどな」

「まあね、うちは強いから…ふへへへ、一人で行動するのが普通だからね」

「そういうものか…」


というのも、剣術大会が始まる前までは、ネクラとモンスター狩りに出かけていた。

やるねえ、なんてことを言われたりもしたが、俺は正直なところ、このままでいいのかと考えると、レックスはこのままではかなり難しい国になると思っている。

どうしてなのか?

それは、本当の戦いを知っている人が少ないからだ。

さすがに、人と人との殺し合いをしろというわけでは全くないのだけれど、モンスターとの戦闘は、普通であれば寸止めで終わる状況でも、継続して命を狙われる。

そんな状況を知らない人が多すぎる。

まあ、俺もこの世界に来るまでは、パソコンの画面を見て、電車に揺られて、なんていう、戦いには無縁の場所にいたのだから、偉そうなことは全く言えないが…

でも、このままでいいとは思わない。

何が起こるのかわからないのだから…

それに…


「そういえば、あいつらは何をしてるんだ?」

「あいつらって?」

「シバルの兄だよ」

「ああ、ツイン君ね」

「そのツイン君だ」

「うちも姿をあまり見てないからわからないよ、ふへへへ」

「そうなのか」

「大会には出てるようだけどね」

「そうみたいだな」


そこでは、対戦相手に対して危なげなく勝利しているツインの存在があった。

ただ、どことなく前までの雰囲気と違う気がする。

ヘンタイ眼で視るべきか?

いや、結局はヘンタイ眼で視たところで、相手がどんな状態なのかがわからないとどうしようもないよな。

戦ってみないとわからないってことか…

それに、ほかのやつらが全くいないというのも嫌な予感がしている。


「ふへへへ、考えこんでるの?」

「やることがいろいろあるからな」

「だったら、あの視線にもちゃんと答えてあげないとね」

「後でな」

「ふへへへ、そっか…」


そう、俺は気づいていた。

だけど、今のところはスルーをするしかない。

なんでかって?

怒られるにきまっているからだ。

わざわざ怒られにいくなんてことを俺はしたくないんだよ。

そんなことを考えながら、俺は逃げるようにして後ろに引っ込んだのだった。


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