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魔法使いになれなかった俺はヘンタイスキルを手に入れた  作者: 美海秋
ヘンタイと剣術大会

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182話

「シバル、一人で…ただしは?」

「ただしは、その…」

「一人で戦ってるのよね、どこにいるの?」


そう言われて、連れていかれましたとはボクは言えなかった。

でも、何か言わないと…

それでも、言葉にはできない。


「なんじゃ、あやつはおらぬのか」


すると、ヤミがすっと現れる。

馬車がないということを考えると、ここまで来たのはヤミに乗ってきたというのはわかった。


「それにしても、わらわから飛び降りて、無傷とはおぬしはなかなか面白いのじゃ」

「それはどうも…でも、叶はそんなことよりも、お兄ちゃんに会いたいんだけど」

「なんじゃ、そやつはここにおるのか?勇者であるおぬしと同じ場所ということなんじゃな?」

「うん、叶と同じ場所なんだ。でも、おかしいんだよね。お兄ちゃんはあっちの世界で亡くなって、そのお兄ちゃんを生き返らせるために勇者となったのに、おかしいな。それなのに、こっちの世界で、お兄ちゃんの匂いを嗅ぐことになるなんてね」

「なんじゃ?そんな匂いだけでわかるのかじゃ?」

「ふふーん、当たり前だよ。叶はお兄ちゃんが好きだからね。少しのことでもわからないといけないんだ」


そういう勇者の子の顔は、どこか狂気に満ちている気がしたが、今はそんなことよりもやらないといけないことがあった。


「アイラ様」

「どうしたの?どこで戦っているの?」

「それなんですが、捕まってしまいました」

「え?」

「ごめんなさい、ボクは何もできなくて!」


そう言って、ボクは頭を下げた。

ただ、その言葉に反応したのはアイラではなかった。


「なんじゃ、あやつは捕まったのじゃな」

「はい…ボクのせいで…」

「ふむ、だったらさっさと助けに行けばよい話じゃと思うのじゃが、違うのかの?」

「ですが、どこにいるのかがわからなくて…」


ボクがそういうと、ヤミはむしろ笑う。


「なんじゃ、そんなこと、わらわがいれば破壊できるのじゃから、問題ないじゃろ?」

「それは…」


確かに、ヤミがドラゴンの状態になれるのであれば、それも可能なのかもしれない。

でも、それは魔力が足りないから難しいという話を、ただしから聞いていたはずだった。

それなのに、今のヤミは、やってしまいそうな自信に満ちていた。


「わらわもな、また力が戻ったのじゃからな。ここから戦いを楽しむとしようかの」

「え!」


その言葉に、ボクは驚いた。

だって、力が戻るなんてことをほとんど聞いたこともないし、それの意味がわからなかったからだ。

それを聞いて、何も言えなくなっているボクとは違い、アイラ様は言う。


「シバル。実は、セイクリッドにあったのよ」

「何がですが?」

「ヤミの力を封印しているっていう、ものがね」

「それをどうしたんですか?」

「えっと、あの子がね」


そういって、指さした先にいるのは、叶だった。

どういうことなのだろうかと思っていたら、ヤミは嬉しそうに言う。


「ほんとにの、あやつと同じように、こやつの魔力がないおかげじゃな」

「それは?」

「なんじゃ、前に少し話をしたと思うのじゃが、わらわの力は封印されておっての、その封印を解くために必要なものを探しておったのじゃが、どうやらセントラルに一つあったようでな、それを使うことで、さらに魔力が戻ったのじゃから、ここまでドラゴンの姿で飛んでこられたのじゃ」

「でも、そんなものがあるっていう話は…」

「そうじゃな、聞いておらなかったのかもしれぬな。でもじゃな、あったものは仕方ないのじゃ。そのおかげでここにこれたのじゃからな」

「そうですが…」


よくはわからなかったが、そういうことなのだろう。

これもただしが知っていることなのだろう。

結局ボクは、ただしがいないと何もできないポンコツということで間違いないのだろう。

マイナスなことばかり考えているボクは、ただ目線を下に下げようとしたときだった。

その視界に、木の棒が入ってくる。


「え?」


戸惑いながらも、顔を上げると、そこには叶が笑顔でボクのことを見つめていた。


「ねえ、どうして顔を下げるの?それに、シバルさんだっけ、あなたは捕まえられた人を救うということはしないの?」

「それは、ボクにはできないことですから…」

「だったら、強くなってみる?」

「え?」


ボクはその言葉に驚いた。

だって、ボクから見て彼女は強く。

先ほどの戦闘ですら、ボクには何が起こっているのかがあまりわからなかったくらいだったかだ。

そんな人に教えてもらって、ボクは何か得るものがあるのだろうか?

わからなくなっていたときだった。

背中を前に押される。


「え?」


ボクは慌てて後ろを見ると、そこにいたのはバーバルだった。


「ほらほら、うじうじしない。それをしていいのは、あの時のわたくしで十分ですから」

「!」


それは、あの森のことを言っているのだろう。

確かにそうだった。

バーバルの場合は、もう仲間は助かる状態じゃなかった。

でも、ただしは、ボクたちが頑張れば十分に助けられる状況だった。

だったら、ボクならやることは決まっている。


「お願いします」

「うんうん、叶に任せて」


彼女はそういって笑うと、木の棒を持って前に立つ。

まずは、ただしみたいに、考えることからスタートするしかない。

ボクは、そうして修行を開始した。


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